1) 定員100名の重症心身障害児施設において, 昭和60年から平成9年までの12年間にA型肝炎, B型肝炎, C型肝炎, ヒト単純ヘルペスウイルス (1型) (HSV-1) の4種類のウイルス性肝炎を経験した.
2) A型肝炎の初発例は看護士で, 勤務病棟で他の看護婦と入所者が各1例ずつ発症した.B型肝炎は入所時検査で発見されたが, 10年以上肝炎は発症せず, 血中HBs抗原, HBe抗原, DNAポリメラーゼ陽性が持続していた.平成8年3月に肝炎が発症し, 平成9年3月HBe抗体陽性化し, 4月に, GOTの軽度増加を残し, GPTは正常化した.C型肝炎は, 入所直後C型肝炎ウイルスRNA陽性 (3型) であることが判明した.HSV-1による肝炎は, 肺炎を疑って加療中突然死亡し, 死後剖検によりHSV-1による激症肝炎であることが判明した.
3) 院内感染予防対策により, A型肝炎は他の職員1名と入所者1名の発症に留まり, B型, C型肝炎は, 1997年4月現在, 入所者職員ともに, 臨床的にも, 年1回の血清抗体価からも院内感染は見られていない.
4) B型, C型肝炎は, 重症心身障害児施設の特殊性から一般に行われている院内感染予防対策を長期間更に厳しく実施せざるを得ず, 院内感染は防止されたが, 患者の心理的, 物理的隔離が本人の人権, QOLの保護との関連で苦慮する場面が多く, 今後に課題を残した.安全, 有効, 廉価なワクチン開発の重要性を強調した.
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