感染症学雑誌
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71 巻, 12 号
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  • 岡崎 充宏, 小野川 傑, 荒木 光二, 江上 照夫, 古谷 信滋, 遠藤 宣子, 内村 英正
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1181-1186
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1994年10月から1996年12月までに本院内科および外科病棟に入院中の患者の各種臨床材料からの多剤耐性緑膿菌の分離頻度は, 11.9%(471株中56株) であった.この内, 本菌が高頻度に分離された内科A病棟における多剤耐性菌18株のO血清型とピオシアニン, ピオベルジン, ヘモリシン, エラスターゼ, およびカゼイナーゼ産生性を多剤感受性株と比較した結果, 多剤耐性株のO血清型は, C型が16株 (88.9%) を占め, 2株 (11.1%) が型別不能であった.そして, 全ての菌株がピオベルジンのみを産生し, その他の菌体外物質の産生性を示さなかった.それに対して, 多剤感受性株の0血清型はB型が5/13株 (38.4%), G型が4/13株 (30.8%), C型が2/13株 (15.4%), E型および型別不能がそれぞれ1/13株 (7.7%) と多様であり, これらの全ての菌株は, ヘモリシンおよびピオベルジンの産生性を, 8/13株 (61.5%) はピオシアニンの産生性を, 9/13株 (69.2%) はエラスターゼおよびカゼイナーゼの産生性を示した.
    以上の結果から, 本病棟において分離されたC型を示す多剤耐性緑膿菌は, 同一菌株の可能性があり, 本菌による院内流行が推定された.
  • 鈴木 潤, 松淵 里美, 吉原 英児, 小林 貞男, 岡村 勝重, 奥田 俊郎, 岡崎 充宏, 古谷 信滋, 内村 英正, 徳永 尊彦, 島 ...
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1187-1192
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新たに分離された劇症型A群レンサ球菌感染症患者分離株 (劇症株) の菌体外産生物質は, これまでに報告した劇症株と比較するとストレプトリジン0 (SLO), およびproteinaseの産生量が高値を示した.SLOは等電点 (pl) 分析によるとacidictypeSLOであり, 分子量もこれまでの報告と同様に64,000を示した.また, proteinaseはplが8.7および8.9, 分子量は21,000が示され, 既報の劇症株と差が認められなかった.新たな劇症株では, 産生したSLOおよびproteinaseの質的な違いは認められず, いずれも両産生物質の高い産生量が病態に影響を与えたことが示唆された.検討した3種の菌体外産生物質では発赤毒素の産生量のみ低値を示したが, SLOおよびproteinaseの高産生性は, 溶血を伴う低酸素血症および軟部組織の壊死等の病態と関与する可能性が示唆された.
  • 八木 幸夫, 山本 正悟, 吉家 清貴, 野田 伸一
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1193-1198
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    鹿児島県北部大隅地区のツツガムシ病患者を対象に, ツツガムシ病リケッチア各株に対する血清抗体価の測定を行い, 浸淫するリケッチアの血清型の検討を行った.34名の患者のうち19名 (55.9%) がKawasaki株に, 13名 (38.2%) がKuroki株に最も高い血清抗体価を示した.また, 2名 (5.9%) の患者は最も高い抗体価を示す株を特定できず, このうち1名はGilliam株, Karp株, Kato株およびKuroki株の4株に, 他の1名はGilliam株とKawasaki株の2株に同程度の血清抗体価を示していた. この地区では, ツツガムシ病リケッチアはKawasaki型とKuroki型が分布し, Kawasaki型が優勢であることが示唆された.10病日以内の治療前の患者についてCRP, 白血球数, 血小板数, GOT, GPTおよびLDHを比較したが, Kawasaki型とKuroki型の両群の患者でいずれにも有意差は認められなかった.
  • 渡辺 好明, 中根 嘉郎
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1199-1203
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    18年間 (1979年-1996年) に当院内科で血清学的に診断されたMycoplasma pnezamoniaeによる肺炎 (マイコ肺炎) 244例について検討しマイコ肺炎の流行周期の変化について検討した.1988年までは1979-1980年, 1984-1985年, 1988年を中心に3回の4-5年間隔の流行周期が認められたが1988年以降は周期性が不明確となった.季節別の検討で冬期 (12月, 1月, 2月) の発症が前半9年間 (1979-1987) の13%に比較して後半9年間 (1988-1996) は24%で有意に (p<0.05) 増加し流行季節が夏秋中心から冬まで延長していた.マイコ肺炎は時に致死例の報告もあり流行年, 流行季節を問わず注意が必要となった.
  • 松下 秀, 野口 やよい, 柳川 義勢, 五十嵐 英夫, 森田 耕司, 和田 博志, 渡辺 登, 柴田 幹良, 金森 政人, 工藤 泰雄, ...
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1204-1209
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は1996年に, 海外旅行歴のない5症例ものVibrio cholerae non-O1による散発下痢症例を経験した.本報では, これら国内症例と, 同年に本菌が検出された8例の海外旅行者による輸入症例を加えた, 計13症例の概要と分離菌株の諸性状について報告する.
    国内症例の発生時期は6-9月と夏期であったが, 輸入症例は1-10月とほぼ年間を通して認められた.主要臨床症状は, 全例が一日最高2-12回の水様性下痢 (平均5.5回), 腹痛10例 (77%), 嘔吐4例 (31%), 及び発熱2例 (15%) であった.
    各症例からそれぞれ分離された13菌株の生化学的・生理学的性状はV.choleraeに完全に一致するものであった.血清型別試験では11種に型別され, O2及び05が複数検出された.毒素産生性ではCTは全菌株非産生, NAG-STは2菌株 (血清型O14とO88) が産生性, 溶血毒素は全菌株とも産生性であった.
  • 吉田 耕一郎, 二木 芳人, 大野 学, 渡辺 信介, 橋口 浩二, 中島 正光, 松島 敏春
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1210-1215
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    深在性真菌感染症の診断において血中 (1→3)-β-D-glucan (β-glucan) 値の測定は既に広く臨床で用いられている. 我々は胸水中, 髄液中のβ-glucan値を測定し, その臨床的意義について検討した.
    1995年4月から1996年10月までに, 川崎医科大学附属病院でβ-glucanfreeで胸水を採取した27人と, 同じく髄液を採取した23人を対象として各々のβ-glucan値を測定した. 胸水検討症例は男性17例, 女性10例, 年齢は19歳から96歳, 平均年齢62.1歳であった. このうち血液透析施行の2例は基準値の検討から除外した. 髄液検討症例は男性15例, 女性8例, 年齢は18歳から72歳, 平均年齢48.4歳であった. 真菌感染症例は2例 (胸水1例, 髄液1例) であった. アスペルギルス性膿胸, クリプトコッカス髄膜炎症例では, 各々胸水中, 髄液中のβ-glucanは増加していた. β-glucan値に影響を及ぼす因子のない症例ではおおよそβ-glucan値は低値であったが一部に偽陽性も認められた. 胸水, 髄液でのβ-glucan値測定は, 胸膜炎や髄膜炎の原因として真菌感染症が関与しているか否かを決定するのに適切な指標となり得ると考えられた. しかし, 偽陽性の存在も確認され, 今後さらに症例を増やして検討していく必要がある.
  • 村岡 宏江, 小林 寅哲, 長谷川 美幸, 雑賀 威, 戸田 陽代, 西田 実, 鈴木 純子, 峯 徹哉, 藤田 敏郎
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1216-1220
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pylori (以下H. pyloriと略す) の産生するureaseは消化性潰瘍の病因や胃内への感染定着因子の一つとして考えられている.
    今回われわれは消化性潰瘍を有する患者から採取した2,331検体から1,602株のH. pyloriを分離し, そのうち7株にurease非産生H. pyloriを検出した. これら7株の生化学的性状を詳細に調べた結果, ATCC由来の3種類の標準株と比べてurease産生性以外は全て一致した. さらにこれらの菌株はPCR法によってもH. pyloriである事が確認された.
    これらの事実はH. Pyloriの病原因子や感染機序に新たな知見を提起するものと思われた.
  • 鈴木 則彦, 橋本 智, 石橋 正憲, 金 英夫, 奥田 潤, 西渕 光昭
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1221-1225
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    海外旅行者下痢症患者から分離された腸炎ビブリオのうちから, ポリヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーション法により, tdhおよびtrh遺伝子の両者を保有する125株を選出した.これらの菌株について, TDHの産生レベルを調べ, またtdh遺伝子に関連する性質とTDH産生レベルとの相関関係の有無について解析した.TDH産生レベルは, 菌株間でかなり大きな差が認められたが, いずれも神奈川現象陽性株のレベルよりも低かった.Elek変法および我妻培地法を併用して, 被検菌株を18株の “TDH産生株”, 85株の “TDH弱産生株”, および22株の “TDH非産生株” に大別した.“TDH産生株” の中で最も高レベルのTDHを産生した菌株は, 対象菌株として用いた神奈川現象陽性株のTDHレベルより2段階低いレベルのTDHを産生した (RPLA法による比較).
    全被検菌株がtoxR遺伝子を保有していた.105株および20株が, それぞれtrh1およびtrh2遺伝子を保有していたが, trh遺伝子のタイプの違いとTDH産生レベルとの相関関係は認められなかった.tdh遺伝子を含むHind III DNA断片のパターンにかなり多様性が見られたが, TDH産生レベルとの関連性は認められなかった.
  • 福井 克仁, 加藤 直樹, 田中 香お里, 加藤 はる, 渡辺 邦友, 立松 憲親
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1226-1231
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    口腔外科領域の感染症として閉鎖性膿瘍に関する細菌学的検討は多く見られるが, 臨床的に少なからず経験される瘻孔形成性の開放性膿瘍に関する検討はほとんどない.我々は唾液の混入に細心の注意を払って検体を採取し, 2時間以内に培養に供した開放性の口腔外科領域感染症3例において詳細な細菌学的検索を行った.その結果, 全例好気性菌と嫌気性菌の混合感染で, 特にStreptococcusとPrevotellaintermediaを含むPrevotellaは3例全例から検出された.以上のことから, 開放性膿瘍であっても閉鎖性膿瘍と同じく嫌気性菌を中心とした多菌種による混合感染であることを念頭においた細菌検査が必要であると思われた.また検査法によっては見逃されることが多いPrevotellaの6株すべてがβ-ラクタメース産生菌で, セフェム系抗菌薬に低感受性を示したことは, 注目に値すると思われる.
  • 根本 優子, 小林 昌彦, 金子 克
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1232-1237
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1996年7月から1997年2月までの間に, 岩手県内で発生した11例の散発例の腸炎患者, および一例の集団感染から分離した腸管出血性大腸菌 (enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC) O157: H7計38株について, 1992年に分離したEHECO157: H71株および0157: NM2株とともにパルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) を行い, ゲノタイプを比較検討した.さらにPFGEパターンによる分類を補足するために, Shiga-like toxin遺伝子 (stx) のゲノムDNAへの組み込み部位をサザンプロット法で解析した.その結果, stx1は2株を除いて約130kbのXbaI DNA断片に存在し, 一方, stx2は600kbから155kbの長さの異なる11のDNA断片に存在し, 組み込み部位が多様であることが明らかとなった.以上の検討から, 岩手県内で分離したEHEC O157: H7は7つのゲノタイプに分けられた.また, 集団感染例の分離株を含めて, 半数のEHEC O157: H7が1992年の分離株と同じゲノタイプであることから, 同タイプの菌株が大迫町, 盛岡市を中心として岩手県内で広がりつつあることが示唆された.
  • ウイルス性肝炎の4症例を中心にして
    町田 裕一, 田中 宏子, 矢野 ヨシ, 矢野 享, 吉田 カツ江
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1238-1245
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1) 定員100名の重症心身障害児施設において, 昭和60年から平成9年までの12年間にA型肝炎, B型肝炎, C型肝炎, ヒト単純ヘルペスウイルス (1型) (HSV-1) の4種類のウイルス性肝炎を経験した.
    2) A型肝炎の初発例は看護士で, 勤務病棟で他の看護婦と入所者が各1例ずつ発症した.B型肝炎は入所時検査で発見されたが, 10年以上肝炎は発症せず, 血中HBs抗原, HBe抗原, DNAポリメラーゼ陽性が持続していた.平成8年3月に肝炎が発症し, 平成9年3月HBe抗体陽性化し, 4月に, GOTの軽度増加を残し, GPTは正常化した.C型肝炎は, 入所直後C型肝炎ウイルスRNA陽性 (3型) であることが判明した.HSV-1による肝炎は, 肺炎を疑って加療中突然死亡し, 死後剖検によりHSV-1による激症肝炎であることが判明した.
    3) 院内感染予防対策により, A型肝炎は他の職員1名と入所者1名の発症に留まり, B型, C型肝炎は, 1997年4月現在, 入所者職員ともに, 臨床的にも, 年1回の血清抗体価からも院内感染は見られていない.
    4) B型, C型肝炎は, 重症心身障害児施設の特殊性から一般に行われている院内感染予防対策を長期間更に厳しく実施せざるを得ず, 院内感染は防止されたが, 患者の心理的, 物理的隔離が本人の人権, QOLの保護との関連で苦慮する場面が多く, 今後に課題を残した.安全, 有効, 廉価なワクチン開発の重要性を強調した.
  • 古賀 宏延, 河野 茂, 朝野 和典, 能田 一夫, 菅原 和行, 平潟 洋一, 上平 憲, 宮下 修行, 松島 敏春, 西野 和美, 横田 ...
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1246-1251
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    結核菌検出のための遺伝子増幅法として, 耐熱性遺伝子連結酵素 (Ligase) を用いたDNA増幅法 (Ligase Chain Reaction: LCR) に基づく全自動の結核菌群核酸増幅同定検査用試薬 (LCR MTB: 米国アボット社) が開発され, 今回その臨床的有用性について検討した.
    結核症患者由来の458検体を対象として, LCR法と塗抹法, 培養法とを比較検討し, 一部の検体ではMTD法やAmplicor法とも比較した.
    LCR法の感度は49.8%(228/458) で, 塗抹法の31.9%(146/458) や培養法の39.1%(179/458) より優れていた.また他の遺伝子増幅法との比較では, MTD法の37.9%(129/340) に対してLCR法は47.6%(162/340), Amplicor法の56.5%(113/200) に対してLCR法は59.5%(119/200) と, いずれも本法による感度が高く良好な成績が得られた.LCR法は操作が簡便かつ迅速で感度も良好であることから, 結核菌群核酸増幅同定検査用試薬として臨床的にも有用性が高いことが示唆された.
  • 渡辺 秀裕, 武田 英紀, 坂川 英一郎, 渡辺 慶太郎, 高安 聡, 河合 伸, 小林 宏行
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1252-1256
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性, 発熱を主訴に入院.胸部X線, CT所見では, 両側のiso-densityの胸水が認められ, 両側胸水を伴う結核性胸膜炎と診断した.しかしMRI所見は, 左右異なるintensityが示され, 胸水検索では左側はリンパ球優位, ADA高値の結核性胸水の性状が観察されたが, 右側は好中球優位で結核菌培養, PCRは伴に陽性を示した.リンパ球検索では左側は, 再循環型HelperT細胞が多かったが右側では僅かであった.本例は, 左側: 遅発性過敏性反応, 右側: 急性炎症性反応と結核菌感染に対して左右で異なる生体反応を同時に呈しており, 結核性胸膜炎の発症を考える上で興味ある症例と思われた
  • 日吉 基文, 田窪 孝行, 田川 進一, 橋本 卯巳, 巽 典之
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1257-1260
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腎移植患者に併発したサイトメガロウイルス感染症に対して, 抗サイトメガロウイルス抗体高力価グロブリン製剤 (CMV-IG) のみによる治療が奏功したので報告する. (CMV-IG) は, 1日2回, 861ng/kgで16日間 (休止日をはさんで, 4日間と12日間) 点滴静注投与された.その後, 86/kgで週1回, 計7週間投与された.サイトメガロウイルス感染症は, 新開発のサイトメガロウイルス診断PCRキツト (AMPLICOR® CMV) によって血漿中のウイルス血症を証明することにより, 診断された.このキットを使うことにより, 患者血漿中よりサイトメガロウイルスが消えていく様子を明瞭にモニターすることができた.
  • 三輪 智恵子
    1997 年 71 巻 12 号 p. 1261-1262
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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