感染症学雑誌
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72 巻, 2 号
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  • 薬剤感受性およびプラスミドプロファイルについて
    牧野 壮一, 朝倉 宏, 白幡 敏一, 池田 徹也, 武士 甲一, 久保田 耐, 藤井 暢弘
    1998 年72 巻2 号 p. 89-96
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1996年10月下旬に北海道帯広市の幼稚園で発生した腸管出血性大腸菌O157集団感染由来147株 (内, 患者由来142株, 原因食品由来5株) の薬剤耐性およびプラスミドプロファイルを調べた. その内, 耐性株は36株 (24.5%) であり, そのすべてがテトラサイクリン (TC) 耐性株で, ストレプトマイシン耐性を同時に示す株が15株 (10.2%) 認められた. しかしながら, その他の薬剤に対しての耐性株は存在しなかった. また, ホスホマイシン (FOM) について, 最小発育阻止濃度を調べた. 好気培養条件下では12.5μg/ml, 嫌気培養条件下では1.6μg/ml, 血液寒天培地上では3.2μg/mlとなり, 培養条件によりFOMの効果が変化することが確かめられた. さらにFOM投与により除菌を確認された後, 再度菌陽性となった患者由来株のFOMに対する感受性を調べたが, FOMに対する感受性には変化が無かった. プラスミドプロファイルは, AからDまでの4パターンに分けられた. 最も多いタイプはA (66.0%) で, 食品由来菌株のプラスミド保有パターンはAに属していた. 9例の家族内感染において, 同一家族内感染から分離された菌株のプラスミドプロファイルはそれぞれ同一であったが, 6例では薬剤耐性パターンが異なっていた. また, 13名の患者で確認された持続感染では, 1回目に耐性株の出た7名のうち6名が2回目には薬剤耐性の変化が認められ, それに伴うプラスミドプロファイルの変化も認められた. 薬剤耐性とプラスミドプロファイルを比較すると, TC耐性がプラスミドに支配されている可能性が示唆された. 原因食品由来株がすべての薬剤に感受性があり, プラスミドプロファイルが同一であることを考えると, 人体内を菌が通過する間に, TC耐性を主とする薬剤耐性の付加や, プラスミドの付加が起こっているものと考えられた.
  • 雑賀 威, 長谷川 美幸, 小林 寅哲, 西田 実
    1998 年72 巻2 号 p. 97-104
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床分離.Pseudomonas aeruginosaはSDS-PAGEの銀染色像から長鎖および短鎖lipopolysacchar-ide (LPS) 保有株さらにLPS欠損株に分類できる. これらの菌株の表層に対する多価カチオン性抗菌薬, 3H-gentamicinのイオン結合は, 長鎖LPS株>短鎖LPS株>LPS欠損株の順となった. しかし臨床分離NO.45株はLPS欠損株であるが, 高い3H-gentamicin結合性を示した. 他方, P.aeruginosa PACIR株とそのLPS欠損変異株において, LPSの0-polysaccharideの繰り返し巣位の欠損が高度になるに従い3H-gentamicinの結合は低下する. しかしLPSの欠損が拡大してcore-oligosaccharideの中性糖残基が欠損してlipid Aが露出状態のPAC605株では, 3H-gentamicinの結合能が回復した. これはP.aeruginosaのLPSのO-polysaccharide部位より深部の陰性荷電部位が結合に関与することを意味し, 臨床分離No.45株の場合もcore部位の中性糖残基に欠損が存在するものと推定される.
    次に上記の3菌株を10分問, gentamicinの20μg/mlに接触させると, PACIR株では生菌数が混合直後の約70%に減少したが, LPS深部の中性糖残基にまで欠損をもつPAC605およびその可能性の高いNo.45株では, それぞれ3.6および11.0%に減少し, これらのLPS欠損株は, gentamicinにより短時間で強く殺菌をうけることが判明した.
  • 川上 小夜子, 斧 康雄, 宮澤 幸久, 山口 英世
    1998 年72 巻2 号 p. 105-113
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1979年4月から1996年3月までの17年間の, 帝京大学医学部附属病院における真菌血症分離菌の動向を検討した. 血液培養が実施された18,403症例中, 真菌血症は642症例 (13.5%) であった.真菌血症例数は, 1980年代中期より急増し1988年には最大 (92症例) に達したが, それ以降は減少傾向を示した. 検出菌種は, (1) Candidaalbicansが224例 (34.9%) で最も多く, 以下, (2) C.parmpsilosis1 49例 (23.2%), (3) C.tropicalis 87例 (13.6%), (4) C.glabrata 65例 (10.1%), (5) Hansenula anomala 58例 (9.0%), (6) C.guilliermondii 24例 (3.7%), (7) C.famala 14例 (2.1%), (8) Trichosporon beigeliil 1例 (1.7%), (9) C.inconspicuaおよびC.lusitaniae各5例 (0.8%) の順で, その他の菌種の検出例も33例 (5.1%) あった. Fluconazole (FLCZ) が臨床に導入された1989年以降C.albicansの分離頻度は減少傾向を示し, これに代わってFLCZに比較的感受性の低いnon-allbicans Candidaspp. やTrichosporonspp. の増加が認められるようになった. 1983年以降29症例に真菌間での菌交代現象が, 11症例に複数真菌検出例が認められたが, いずれも不幸な転帰を辿った終末期の患者であった.近年における真菌血症の起炎菌の菌相は, 抗真菌薬, 特にFLCZの影響により大きく変化していることが示唆された.
  • ウリベ ロサ, 藤岡 利生, 伊藤 彰, 西園 晃, 那須 勝
    1998 年72 巻2 号 p. 114-122
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ウレアーゼA遺伝子の特異的断片を増幅するPCR法を用いて, 胃液中のH. pyloriの検出を試みた. また, PCR法によるH. pyloriに特異的なDNAの増幅は, その中間域のサザン法にて確認した. 22株の臨床分離株と標準株を対象とし, すべてのH. pylori株において, サザン法にて確認された356bpの産物を得たが, 20株の非H. pylori株においては増幅されなかった. また今回の方法では, H. ptlori菌体50CFU又はDNA0.1pgにて検出可能であった. さらに50例の消化器症状を有する患者に, 前庭部生検よりの培養, ラピッドウレアーゼテスト及び組織法と, 加えて胃液のPCR法によりH. pyloriの存在診断を行った.H. pyloriの存在は, 前出の3法のうち少なくとも2法の陽性により判定したこの方法により, 50例中34例が陽性と判定された. さらに, この34例中32例 (94.1%) がPCR陽性であった. PCR法は, H.pyloriの検出の感度と特異性において, 培養とラピッドウレアーゼテストに比べ優れていた. さらに, DNAの抽出法を改良する事により, 迅速にかつ簡便な検出法を確立した. 今回の研究で, 胃液のPCR法は高感度で特異的な手法としてH. Pylori感染の診断において有用な方法である事が実証された.
  • 力丸 徹, 三森 佳子, 一木 昌郎, 大久保 洋, 光井 敬, 末安 禎子, 堀田 まり子, 木下 正治, 松波 道也, 大泉 耕太郎
    1998 年72 巻2 号 p. 123-127
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    終末期肺癌患者における感染症の意義を検討した. 肺癌自体が治療困難な場合が多いため, その終末期感染症の特徴を検討すること自体, 意味を持たないとする考え方もある. しかし, 実際には肺癌終末期感染症の治療に膨大な労力と医療費をかけている. すなわち, 併発感染症の特徴を把握することは, 適切な治療を行うために重要であり, ひいては医療費の無駄を省くことになる. 検討結果は死亡前にかなりの割合で感染症が併発しており, そのなかで菌血症が重要と考えられた. 起炎菌としては, 細菌では緑膿菌などの弱毒菌が多く, またカンジダ血症も多数認められた. 喀痰細菌叢の検討では肺炎球菌やインフルエンザ菌の割合が少なく, 黄色ブドウ球菌や緑膿菌およびアシネトバクターを多く認めた. 感染症が患者の予後やquality of lifeに対し, 悪影響を及ぼしている可能性が高く, たとえ肺癌終末期患者といえども, 適切な感染症対策が重要と考えられた.
  • 太田 智裕, 後藤 元, 和田 裕雄, 湯浅 和美, 井口 万里, 岡村 樹, 家城 隆次, 鈴木 謙三
    1998 年72 巻2 号 p. 128-135
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    胸郭内の炎症, 感染が疑われた10症例にジエチレントリアミン五酢酸インジウム標識ヒト免疫グロブリンG (111In-DTPA-IgG) シンチグラフィを施行し, その有用性を検討した. 肺炎の4例, 肺膿瘍の2例, 肺結核の1例, 結核性胸膜炎の1例の計8例が真陽性となり, 肺炎の1例は疑陰性, 肺癌の1例が真陰性であった. 肺内病変のみならず胸腔内の病変への集積も認められた. 本検査における感度, 特異度, 正確度はそれぞれ88.9%(8/9), 100%(1/1), 90%(9/10) であった. 111In-DTPA-IgGは胸郭内の炎症, あるいは感染性病変の検出に有用であると考えられた.
  • 吉野 修司, 山本 正悟, 川畑 紀彦, 糸数 清正
    1998 年72 巻2 号 p. 136-141
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性出血性結膜炎 (AHC) 患者からのEnterovirus70 (EV70) の分離は困難である. このためエンテロウイルスに共通なプライマーを用いたRT-PCR法によるEV70の検出と, Stringent Microplate Hybridization (SMH) 法による同ウイルスの型別について検討した.あわせて標準株J670/71と宮崎, 沖縄の両県で流行したEV70をSMH法で比較し, さらにAHCの別の起因ウイルスであるcoxsackievirusA24 variant (CA24v) について標準株EH24/70と千葉, 宮崎両県での流行株の比較をSMH法と交差中和試験で試みた.
    1990年に宮崎県で流行したAHC患者の結膜ぬぐい液34件, 1994年に沖縄県で流行したAHC患者の結膜ぬぐい液10件を用い, 対照としてRD-18S細胞で増殖させたEV70の標準株を用いた. その結果, 宮崎県で集められた結膜ぬぐい液34件中26件 (76%), 沖縄県の10件中9件 (90%) から得られたPCR産物はSMH法で全てEV70と型別され, この方法は分離困難なEV70の迅速検出に有用であると思われた. また, SMH法を用いた株間の比較は, 約25年前に分離された標準株と現在の株をプローブとした場合にEV70, CA24vともに反応性に違いが生じ, ウイルスの変異を裏付ける結果となった.
  • 児玉 和也, 田村 達司郎, 新井 潤子
    1998 年72 巻2 号 p. 142-146
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 25-year-old male, who had returned from the Republic of Mali in Africa, was admitted to our hospital because of a 3-day history of high fever, on the first of October 1996. He was diagnosed as Plasmodium falciparum malaria by peripheral blood smear. From the admission day he was treated with quinine HC1, 1, 500 mg per day, and sulfamethoxazole 2, 400 mg trimethoprim 480 mg per day, but on October 2nd blood examination showed 35%0 parasite density and he was given mefloquine. However he was complicated with DIC on October 3rd, ARDS on October 5th. By anti-coagulant therapy and methylprednisolone pulse therapy he became afebrile and respiratory function improved rapidly. ARDS should be emphasized as a severe complication of imported severe malaria.
  • 高木 宏治, 進 浩和, 久間 文明, 岡田 薫, 澤江 義郎
    1998 年72 巻2 号 p. 147-150
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We reported a case of tuberculous pyothorax which developed at four years after finishing with the first treatment for pulmonary tuberculosis.
    A 50-year-old female was admitted to our hospital with right chest pain. Tuberculous pyothorax was diagnosed by means of polymerase chain reaction (PCR method) of pleural effusion and of histological findings of the pleural section. She was cured by operation, pleural drainage and anti-tuberculous drugs. The bone scincigram of 99mTc revealed accumulation in the right 9th rib, tuberculous empyema might have been a secondary development from osteomyelitis.
  • 永倉 貢一, 小池 潤, 宮澤 正行, 三輪 剛, 相川 正道
    1998 年72 巻2 号 p. 151-156
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    日本では年間100例から120例のマラリア症例が報告されている.そのうちの約30%は致死的な熱帯熱マラリアPlasmodium falciparumの感染であり, 1年間に数例の死亡例がある.本マラリア感染では, このような治療の遅れによる重症化, 原虫の薬剤耐性と集団発生が, 現在, 問題となっている.97年5月の連休にシンガポール近郊のインドネシア・ビンタン島の海岸リゾートホテルに滞在した37歳の男性が, 本原虫による虫血症, 強度の貧血, DIC状態の重症マラリアになった.幸いにして, 感染原虫は薬剤耐性株ではなく, この患者はキニマックス®の静注と濃厚赤血球輸血で救命された.かってマラリアの浸淫地であった地域に近代的なリゾートホテルが林立し, 多くの日本人観光客が訪れている.これらの地域ではマラリアが完全に制圧されている訳ではなく, いつでも薬剤耐性原虫の集団発生がおこりうる.関係部局にマラリアへの注意を喚起すべく本症例を報告した.
  • 宮崎 貴子, 伊藤 八次, 加藤 雅也, 秋田 茂樹, 水田 啓介, 宮田 英雄, 加藤 直樹, 渡辺 邦友
    1998 年72 巻2 号 p. 157-161
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Retropharyngeal abscess is reported to be decreasing in frequency in recent years. We report two cases of retropharyngeal abscess that were diagnosed within four years in Department of Otorhinolaryngology, Gifu University Hospital. Case 1 was a 36-year-old male who was suggested to have an abscess as primary infection and case 2 was a 71-year-old female whose abscess seemed to be a secondary infection following unknown primary infection. Endoscopic or open neck drainage as well as antibacterial chemotherapy mainly with combinations of flomoxef and clindamycin in the case 1 and piperacillin and clindamycin in the case 2 was successfully carried out. They were discharged an 15-day and 24-day after operation in the cases 1 and 2, respectively. A 30 min. culture after sample collection on operation demonstrated aerobe-anaerobe mixed infection in both cases; three aerobes and four anaerobes in the case 1 and three aerobes and two anaerobes in the case 2. These results suggest that retropharyngeal abscess may be a complicated infection involving more bacterial species than has been commonly believed. Measuring susceptibility of isolates to antimicrobial agents, a strain of Capnocytophaga sp. and a strain of anaerobic gram-negative rod were highly resistant to piperacillin, cefroxine and ofloxacin. It is important for adequate antibacterial chemotherapy to grasp the bacteriology of retropharyngeal abscess and analyze susceptibility of antimicrobial agents.
  • 久原 孝, 岡田 要, 木内 武美, 富永 ユリ, 広瀬 政雄, 香美 祥二, 大西 克成
    1998 年72 巻2 号 p. 162-166
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Bacteroides fragilis腸炎後に発症したHemolytic uremic syndrome (HUS) の2歳女児例を経験した. 患児は出血性腸炎発症10日後に溶血性貧血, 血小板減少, 腎障害を発症した. 血性下痢便の培養検査にてB. fragilisが検出され, 臨床症状, 検査結果からB. fragilis腸炎後のHUSと診断した. 本症例のHUSの程度は軽症であって保存的治療により改善した. 現在までB. fragilisのHUSへの関与の報告はなく, 貴重な症例と考えられた.
  • 秋庭 正人, 鮫島 俊哉, 中澤 宗生
    1998 年72 巻2 号 p. 167-168
    発行日: 1998/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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