感染症学雑誌
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65 巻, 5 号
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  • 中畑 久, 平井 裕一, 辻野 守泰, 沢田 留美子, 熊坂 義裕, 増田 光男, 中村 光男, 小沼 富男, 武部 和夫, 工藤 肇
    1991 年 65 巻 5 号 p. 521-526
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者, 特にインスリン依存性糖尿病患者 (IDDM) 患者においては, 易感染性との関連で多形核白血球 (PMN) 殺菌能の著明な低下が指摘されている.今回IDDM患者の殺菌能低下の機序解明を目的として, 患者PMN superoxide (O2-) 産生能を測定し, インスリン非依存性糖尿病患者 (NIDDM) との比較, 及び糖尿病のコントロール状態との関連を検討した.
    NIDDM67例, IDDM22例, 若年対照6例, 成人対照43例を対象とし, Johnstonらの方法に準じてphorbol myristate acetateの刺激により産生される02-を10, 30分後にferricytochrome Cの還元量にて測定した.NIDDMでも成人対照に比しPMNO2-産生量は低下 (10, 30分値共p<0.01) していたが, IDDMでは若年対照に比し低下 (10, 30分値共p<0.001) しているぼかりでなく, NIDDMとの比較でも有意な低下 (10分値p<0.001, 30分値p<0.01) を認めた.また比較的長期の糖尿病のコントロール状態を表すといわれているHbA1, HbA1c値とPMNO2-産生能10, 30分値の間には有意な負の相関関係 (10分値: HbA1, HbA1c値共p<0.01, 30分値: HbA1値p<0.05, HbA1c値p<0.01) が認められた. 以上より糖尿病患者特にIDDM患者のPMNO2-産生能は低下しており, この低下には持続的高血糖が関与することが示唆された.またこれらの結果は同時にIDDM患者の著明な殺菌能低下の機序の一因を説明するとともに, 易感染性との関連も示唆するものといえる.
  • 井口 和幸, 川端 眞人, 荒島 康友, 久保 信彦, 吉田 美昭, 河野 均也
    1991 年 65 巻 5 号 p. 527-530
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1986年以来, 当教室 (日本大学医学部臨床病理学教室) では免疫ペルオキシダーゼ (IP) 法によるライム病免疫血清診断を実施してきた.1987年7月から1989年2月までの間に15例が血清学的にBorrelia burgdorferiに対する抗体陽性と判定され, ライム病である可能性が強く示唆された.陽性者の間に男女差はなく, 好発年齢もみられなかった.地理的分布は全国的に見られたが北海道, 長野など本州中部以北に多い傾向があった.皮膚症状としては慢性遊走性紅班 (erythema chronicum migrans: ECM) が5例, 全てマダニ咬傷後に出現した.神経症状は6例に見られ, うち5例は顔面神経マヒ, 無菌性髄膜炎, 脳脊髄炎などの神経症状が主症状であった.8例に全菌体を抗原としたELISAを試み, 3例のみ陽性と診断され検査法による判定の差が指摘された.
  • I. 臨床および環境由来株の腸管起病性
    刑部 陽宅, 児玉 博英, 佐藤 茂秋
    1991 年 65 巻 5 号 p. 531-536
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    食中毒, 海外旅行者下痢症, 魚介, 海水および河川水由来non-O1 V. choleraeの腸管起病性とプラスミドを調べた.結果は次のようであった.1) 生菌による家兎結紮腸管反応 (RIL) と乳呑みマウス反応の両者またはいずれかで, 腸管起病性陽性を示す菌の割合は海外旅行者下痢症由来で36/38 (95%), 食中毒由来で15/15 (100%), 魚介, 海水由来で33/44 (75%), 河川水由来で, 1/10 (10%) であった.2) 各種材料由来菌40株のうち8株にプラスミド性DNAを認めたが, その分子サイズは菌株によって異なっていた.また, 腸管起病性とプラスミドとの間には相関は認められなかった.
    以上の結果は腸管起病菌は食中毒や海外旅行者下痢症由来菌に多いが, 魚介, 海水由来菌の多くも腸管起病性であること, 本菌の病原性に関係する遺伝子は染色体上にあることを示している.
  • 蛭田 徳昭, 日守 満里子, 羽布津 雅子, 岡村 登, 小川 正之, 松下 秀, 工藤 泰雄
    1991 年 65 巻 5 号 p. 537-539
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    インドネシアに長期滞在し, 一時帰国した下痢症患者から乳糖遅分解の大腸菌を分離した. この大腸菌は市販の病原大腸菌診断用抗血清のいずれにも凝集しなかつたため, さらに病原性につき検討した結果, 本菌は組織培養細胞への侵入性, Séreny試験および組織侵入性大腸菌検出用酵素抗体法 (EIECELISA) による試験がともに陽性で, 細胞侵入能に関与する大分子量プラスミドを所有する典型的な組織侵入性大腸菌であることが確認された.東京都立衛生研究所で調製された大腸菌O1~O170の抗血清による抗原分析の結果, 本菌は0121抗原を有することが判明, その血清型はO121: H-と決定された.
  • 飛田 正子, 中込 治, 上杉 四郎
    1991 年 65 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年,医療技術の進歩や新薬の開発に伴いCoagulase Negative Staphylococcus(CNS)による感染症が問題になっていることから,各種臨床材料から分離されたStaphylococcus epidermidis(S. epidermidis)43株と医療従事者の鼻前庭より分離されたS. epidermidis7株の50株を対象に, (1)生化学的性状, (2) Slime産生性, (3) β-ラクタマーゼ産生能および, (4) プラスミドパターンについて解析した.
    生化学的性状では同一のプロファイルコードをもっている株が多くみられた.Slime産生性では胸水と胸腔ドレーンチューブから分離された9株のS. epidermidisがSlimeを産生していた. これらの株はmethicillin resistant Staphylococcus aureus (MRSA)と同じ感受性パターンを示す多剤耐性菌であり,ほとんどの株はペニシリナーゼ産生株であった. プラスミドパターン解析では感受性パターンの異なる5種類, 12株からプラスミドDNAを抽出してアガロースゲル電気泳動を行なった結果, 8株が1.9Kbのプラスミドバンドを持っていた. この8株はTobramycin (TOB)とErythromycin (EM)に耐性であった.S. epidermidisの感染症も臨床上,重要視されるようになってきているので,各施設で分離される菌の特徴を知っておくことは必要かつ意義のあることである.
  • 坂田 宏, 丸山 静男
    1991 年 65 巻 5 号 p. 546-551
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    咽頭・扁桃炎の小児25名ずつに, cefixime (CFIX) を6~10mg/kg/日, cefacior (CCL) を40-50mg/kg/日を3-7日間投与し, 投与前後での検出菌の変動を検出数と最小発育阻止濃度 (MIC) の変化で検討した.
    1) 病原性を有する菌の消失率はStmptococcus pyogenes, Haemophilus influenzae, StreptococcuspneumoniaeではCFIX投与群がよかった.CCL投与群ではH.influenzae, S. pneumoniaeが投与後新たに検出された例が3例ずつあった.Staphylococcus aureusではCCL投与群が消失率はよかった.
    2) CFIX, CCL投与群とも投与後に正常細菌叢構成菌であるα-streptococcusの検出率が有意に増加した.
    3) 抗生剤に耐性を有するグラム陰性桿菌と真菌も軽度増加した.その傾向はCFIX投与群に強かったが, CCL投与群ではHaemophilus spp.が投与後増加した.
    4) CFIX, CCL投与群とも投与後に検出されたα-streptococcusは投与前に検出された菌や他の咽頭・扁桃炎の小児から分離された菌よりMIC50は高かった.
    5) 従来の報告にあるペニシリン系抗生剤の成績と比較するとCFIXとCCLの咽頭細菌叢への影響は比較的穏やかであると考えられた.
    6) 抗生剤投与は正常細菌叢とは異なった細菌叢を形成するので, 適応のない患者への投与は避けるべきと思われた.
  • 高木 賢二, 山下 育孝, 井上 博雄, 大瀬戸 光明, 桑原 広子, 西尾 治, 磯村 思无
    1991 年 65 巻 5 号 p. 552-558
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    腸管アデノウイルス (EAd) を糞便から直接検出, 血清型別することを目的として, アデノウイルス40型 (Ad40) 特異, Ad41型特異およびAd群共通単クローン抗体を作製し, それらを用いた酵素免疫吸着法 (ELISA) でEAdの検出, 血清型別について検討した. 電子顕微鏡 (EM) でアデノウイルス粒子陽性であった糞便15例について, これらの単クローン抗体を用いたELISA法による型別と制限酵素切断パターンによる型別との成績を検討したところ, すべて一致した結果が得られ, 単クローン抗体を用いたELISA法はEAdの検出, 血清型別に有用な手段となりうるものと考えられた.
    次に, 1986年1月から1989年4月の間にEMでAd粒子が検出された糞便のうち58例について, このELISA法を用いて血清型別試験を行った. その結果, Ad40が11例, Ad41が25例, Ad40とAd41の混合感染が1例, 非腸管アデノウイルスが4例検出された. このことから, 松山市周辺においては, Ad40よりもAd41が多く流行していたものと考えられた.
  • 1988年秋の兵庫県三田市に於けるT28型流行
    森川 嘉郎, 田場 繁城, 仲西 寿男, 寺本 忠司, 村瀬 稔, 貫名 正文
    1991 年 65 巻 5 号 p. 559-563
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1988年秋に兵庫県三田市の2カ所の診療所において, 溶連菌感染症の流行がみられた.A診療所は旧市街地に, B診療所は人口増加の著しいニュータウン内にあり, 2つの診療圏は異なっている.A, B両診療所で分離された溶連菌株数とそのT型別分布はA診療所58株, 4型 (34.5%), 12型 (31.0%), 1型 (10.3%), 28型 (10.3%), B診療所43株, 28型 (48.8%), 12型 (23.3%), 4型 (11.6%), 1型 (7.0%) で, ニューロタウンに28型株の流行がみられた.1988年度の神戸市感染症定点観測によると分離された溶連菌は102株, そのT型別分布は4型 (47.0%), 12型 (15.7%), 1型 (10.8%), 28型 (9.8%) で, 三田市旧市街地と同様に4型株が優位であった.ニュータウンは人口急増地域という特殊な状況にあり, また旧市街地との交流が少ないため他地域と異なり, T28型株の流行がみられたものと考える.
    薬剤感受性はT型別による差はみられず, 全株ともampicillin, penicillin Gに感受性, tetracycline, chloramphenicolには耐性株が多かった.
  • 普久原 浩, 重野 芳輝, 斎藤 厚
    1991 年 65 巻 5 号 p. 564-570
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    20歳代から60歳代までの健康成人を男女別, 各年代別に各群10人ずつの計100人について血清のIgG サブクラスを測定した. IgG1954.6±373.3mg/dl (62.9±12.1%), IgG2489.2±199.2mg/dl (32.2±10.2%), IgG344.8±32.0mg/dl (3.0±2.1%), IgG428.9±23.8mg/dl (1.9±1.6%) を示し, IgG1 は加齢とともに減少傾向を示し, IgG2は30歳代以降高い値を示した. IgG3とIgG4は有意な変動は示さなかった.
    呼吸器感染症の64例についての感染期のIgGサブクラスにおいてはIgG1とIgG2, IgG4は有意に減少し, IgG3は有意に増加した. また, 31例の呼吸器感染例について感染期と回復期の両時期のIgGサブクラスの変動についても比較検討した. その中では急性感染症例群においてIgG2が回復期に有意に減少した. 慢性感染例に急性感染症を合併した群では有意な変動を示さなかった. このことからIgG2は急性細菌性呼吸器感染中に消費されて減少することが推定された.
    以上よりIgG1やIgG2, IgG4の減少は細菌性呼吸器感染の発症を容易にせしめることが考えられ, 感染期におけるIgG3の増加は感染防御のための反応と考えられる. IgGサブクラスの中でもIgG2が急性細菌感染防御に最も関連が強いことが示唆された.
  • 斎藤 眞
    1991 年 65 巻 5 号 p. 571-576
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    The excretion in the feces of Clostridium perfringens producing enterotoxin by 48 patients in 3 cases of food poisoning was studied during the illness and 1 and 3 months after the onset. Patients in the first outbreak excreted such strains mostly in the form of spores. In the second outbreak, spores and viable count cells were excreted in nearly equal numbers, and about 50% of the spores were enterotoxigenic. In the third outbreak, the strains were detected both as spores and as viable count cells during the illness. In all three groups, most fecal samples contained at least 103 spores per gram. About 1 month after the onset of the illness, (long after recovery from symptoms), 12 colonies producing enterotoxin were detected from five of the 22 samples of feces obtained from subjects in the three groups. There were few C. perfringens organisms, mostly spores, in the feces. Enterotoxin was not detected in the feces. About 3 months after onset, colonies producing enterotoxin could not be detected from feces of 11 of the subjects in the first group. We conclude that persons affected by C. perfringens food poisoning might contaminate food for at least 1 month after the onset.
  • 24ヵ月間の観察成績から
    矢倉 道泰, 上司 裕史, 原田 英治, 大林 明
    1991 年 65 巻 5 号 p. 577-585
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    医療従事者を対象として, Chinese Hamster Ovary Cell由来遺伝子組換えHBワクチン (CDV, 131名) と血漿由来HBワクチン (PDV, 112名) の抗体反応を24ヵ月間観察し, 両ワクチンの比較検討を行った. その結果, 7ヵ月の陽転率ではCDV群96.9%, PDV群77.8%, 24ヵ月目ではそれぞれ95.0%と71.0%となり, 獲得抗体価の幾何平均値では7ヵ月でCDV群588IU/l, PDV群83.0IU/l, 24ヵ月目ではそれぞれ95.2IU/lと11.9IU/lであった. また, 性別, 年齢階級別比較でも陽転率, 抗体価ともにCDV群のほうが有意に高く, とくに40歳以上で顕著な差を認めた. 両群の陽転者の平均抗体価はほぼ平行して減衰し, したがって有効持続期間もCDVの方が長いと推定された. なおnon-responderはCDV群2.3%, PDV群15.2%であり, 前者で有意に低率であった.
  • 中心静脈カテーテルによる心内膜損傷の可能性
    舟田 久, 藤井 章作, 真智 俊彦, 松田 保, 野々村 昭孝
    1991 年 65 巻 5 号 p. 586-590
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    29歳, 女性の急性白血病患者に対する寛解導入療法中に, 緑膿菌による右心系の心内膜炎が経験された. この発症に先駆けて, 同一血清群の緑膿菌による菌血症をともなった外陰部の壊疽性蜂巣炎がみられた. 中心静脈カテーテルの先端が右心房にまで挿入され, 挿入後に不整脈が出現していた. それで, カテーテル先端による心内膜の損傷部に血栓が形成され, このなかに流血中の菌が取り込まれて, 心内膜炎の発症に至ったと推測された. 剖検肺には, 敗血症性塞栓による微小梗塞巣が多発していた. 緑膿菌による心内膜炎は急性白血病症例に非常にまれであるが, 顆粒球数の回復にもかかわらず菌血症が持続するときは本症を疑って精査が必要である.
  • 長坂 昌一郎, 今川 八束, 村田 道里
    1991 年 65 巻 5 号 p. 591-596
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    伊豆諸島では古くから「七島熱」と呼ばれるつつが虫病の流行が知られ, これまでに大島, 新島, 式根島, 神津島, 三宅島, 御蔵島, および八丈島で患者が確認されているが, 流行区域内の利島では報告がなかった. 今回我々は利島において, 1988年12月, ついで1989年12月にあいついでつつが虫病の症例を経験したので報告する.
    第1例は73歳男性, 第2例は83歳女性で, 両症例とも, 発熱, 発疹, 刺し口の主要症候を認めたが, リンパ節腫脹, 肝脾腫は認めなかった. 治療はテトラサイクリン系抗生物質の投与をおこない, 両症例とも速やかに解熱し, 発疹も徐々に消腿した. 血清学的には間接免疫蛍光法により, IgG抗体はKarp, Gilliam, Katoの各標準株に対して上昇し, IgM抗体はGilliam株にのみ上昇を認め, Gilliamないしその類縁株による感染が強く疑われた.
  • 村岡 晴雄, 佐田 通夫, 日野 照子, 井出 達也, 野口 誠司, 渡慶次 千, 矢野 洋一, 小野 勝之, 後野 嘉宏, 鈴木 宏, 中 ...
    1991 年 65 巻 5 号 p. 597-603
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肝機能を伴う風疹の11例 (1979-1989年) を経験した. sGOT, sGPT値は軽度から中等度の上昇を示す例が多かった. LDH値は高度の上昇を認める例があったが, これは他の臓器障害による上昇が加味されているものと思われた. 又sGPT値は11例中9例が発症後8週以内に正常化したが, 2例は異常値が長く続いた. 1例は基礎疾患として非A非B型肝炎の合併があったが, 他の1例はその原因として風疹が関与していると考えられた. 1例で発症早期の肝生検組織像を観察したが, 炎症細胞浸潤は認められず非特異的反応性肝炎の所見であった. 散発性非A非B型急性肝炎の診断に際しては風疹による肝障害も考慮しておく必要があると思われる.
  • 舟田 久, 望月 康弘, 真智 俊彦, 大竹 茂樹, 松田 保
    1991 年 65 巻 5 号 p. 604-607
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    21歳, 男性の急性リンパ性白血病患者の治療中に, 右副鼻腔炎 (前頭洞, 節骨洞, 上顎洞の罹患) がみられ, 下鼻甲介の生検によって鼻脳型ムーコル症と診断された. アムホテリシンB治療が行われたが, 抗白血病療法の奏効と遺伝子組換えヒト型穎粒球コロニー形成刺激因子の投与による好中球数の速やかな増加に一致して, 臨床症状, 鼻腔所見, 副鼻腔のX線写真やCTスキャンの所見が著明に改善した. 原疾患の寛解が抗真菌薬治療の効果発現に重要なように思われた. 本例は, 急性白血病に合併した鼻脳型ムーコル症の内科的治療に成功した第1例目と考えられる.
  • 舟田 久, 水橋 啓一, 真智 俊彦, 大竹 茂樹, 松田 保
    1991 年 65 巻 5 号 p. 608-611
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    60歳, 主婦の急性白血病患者が多剤併用による寛解導入療法を受けた直後に緑膿菌菌血症を発症した. 適切と考えられる抗生薬療法にもかかわらず, 高度の顆粒球減少のために菌血症が持続した (breakthrough bacteremia). しかし, 遺伝子組換えヒト型顆粒球コロニー形成刺激因子の併用により, 急速な顆粒球数の回復とともに速やかな解熱がみられた. このコロニー形成刺激因子の投与による副作用は認められなかった.
  • 島田 雅巳, 佐伯 裕二, 松元 志保, 上村 洋之助, 小谷 富男, 大滝 幸哉, 坂田 師隣, 小池 弘幸, 川野 純一, 佐々木 次男
    1991 年 65 巻 5 号 p. 612-615
    発行日: 1991/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 26-year-old housewife was admitted to our hospital with a history of high fever after previous cesarean delivery. She had premature rupture of the membrane on the 41st week of pregnancy and the amniotic fluid was found to be cloudy on the fourth day after rupture. Therefore, cesarean delivery was performed. On the first day of operation, her body temperature increased up to 38°C in spite of the treatment with Latamoxef (LMOX), 3 g/day. A sample of intrauterine material yielded M. hominis in pure culture. After administration of Minocycline (MINO) with antimycoplasmal activity, the clinical symptoms improved by the 11th day of operation.
    Sera obtained after the infection showed antibodies to M. hominis in ELISA study.
    These results suggested that the cause of this postpartum fever was M. hominis infection.
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