糖尿病患者, 特にインスリン依存性糖尿病患者 (IDDM) 患者においては, 易感染性との関連で多形核白血球 (PMN) 殺菌能の著明な低下が指摘されている.今回IDDM患者の殺菌能低下の機序解明を目的として, 患者PMN superoxide (O
2-) 産生能を測定し, インスリン非依存性糖尿病患者 (NIDDM) との比較, 及び糖尿病のコントロール状態との関連を検討した.
NIDDM67例, IDDM22例, 若年対照6例, 成人対照43例を対象とし, Johnstonらの方法に準じてphorbol myristate acetateの刺激により産生される0
2-を10, 30分後にferricytochrome Cの還元量にて測定した.NIDDMでも成人対照に比しPMNO
2-産生量は低下 (10, 30分値共p<0.01) していたが, IDDMでは若年対照に比し低下 (10, 30分値共p<0.001) しているぼかりでなく, NIDDMとの比較でも有意な低下 (10分値p<0.001, 30分値p<0.01) を認めた.また比較的長期の糖尿病のコントロール状態を表すといわれているHbA
1, HbA
1c値とPMNO
2-産生能10, 30分値の間には有意な負の相関関係 (10分値: HbA
1, HbA
1c値共p<0.01, 30分値: HbA
1値p<0.05, HbA
1c値p<0.01) が認められた. 以上より糖尿病患者特にIDDM患者のPMNO
2-産生能は低下しており, この低下には持続的高血糖が関与することが示唆された.またこれらの結果は同時にIDDM患者の著明な殺菌能低下の機序の一因を説明するとともに, 易感染性との関連も示唆するものといえる.
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