輸入症例が年々増加の一途をたどっている細菌性赤痢の特徴を把握するため, 東京において1980-1989年の最近10年間に輸入及び国内症例から分離された赤痢菌を対象に, その菌種・血清型並びに薬剤耐性の面から比較検討した.
輸入症例より分離された804株 (海外由来株) と海外とは直接関連がないと考えられた都内での分離株385株 (国内由来株) における菌種別検出頻度は, 両由来株とも
S. sonneiが最も高く, 次いで
S. flexneri, S. boydii, S. dysenteriaeの1頂であった. しかし, 海外由来株では国内由来株のそれと異なり
S. sonneiの全体に占める割合が低かった.海外由来株ではまた各菌種における血清型も国内由来株のそれに比し多彩であった.
CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLXの9種薬剤について実施した薬剤耐性試験における耐性菌出現状況は, 両由来株とも
S. dysenteriae, S. flexneri, S. boydii, S. sonneiの順で耐性頻度が高く, 全体では海外由来株で80.1%, 国内由来株で82.9%が耐性であった. 薬剤別では, 海外由来株でSM, TC, CP, ABPC, ST, 国内由来株でTC, SM, ABPC, CP, STの順で耐性頻度が高かった. その耐性パターンは, 全体で32パターンにわたっていたが, 両由来株ともCP・TC・SM・ABPCの4剤耐性を示すものが最も高頻度であった. なお, FOMとNFLXに対する耐性株は両由来株とも全く認められなかった.
1989年に分離された海外由来の耐性菌50株中, その耐性が大腸菌に接合伝達されたのは3株 (6.0%) であった.
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