感染症学雑誌
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65 巻, 7 号
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  • III. 各種材料由来菌の腸管毒産生性
    刑部 陽宅, 児玉 博英, 佐藤 茂秋
    1991 年65 巻7 号 p. 781-787
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Non-O1 V. choleme, ヒト (海外旅行者下痢症および食中毒) 由来菌58株, 魚介および環境由来菌76株, 計134株について, 各種腸管毒産生性を調べ次の結果を得た. 1) コレラ毒素 (CT) 遺伝子陽性菌の頻度はヒト由来で3.4%, 魚介, 環境由来で2.6%であった. 2) 溶血毒, プロテアーゼと関係ある家兎結紮腸管反応陽性物質 (FAF), 乳呑みマウス腸管液貯溜因子, NAG-rTDH, NAG-STおよびVero毒素様毒素産生菌の割合は臨床由来で, それぞれ100, 72, 31, 2, 0, および0%, 魚介, 環境由来で, それぞれ100, 57, 24, 0, 1.3, および0%であった. また, 多くの菌株の乳呑みマウス腸管液貯溜因子は溶血毒であった. 3) 腸管起病菌の家兎結紮腸管反応で得られた腸管貯溜液 (31株) からのCT様毒素, 溶血毒, FAF, NAG-rTDH, NAG-STおよびVero毒素検出率はそれぞれ0, 100, 3.2, 3.2, 0, および0%であった.
    以上の結果から, 多くのNon-O1 V.cholemeの腸管起病メカニズムでは, 溶血毒が関与しているように思われ, CT様毒素, Vero毒素, NAG-STおよびNAG-rTDHはあまり重要ではないと推定される.
  • 松本 昌門, 榊原 徹, 齊藤 眞, 船橋 満, 磯村 思无
    1991 年65 巻7 号 p. 788-793
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    NTT名古屋会館のエルトール稲葉型コレラ菌による集団発生は, 有症者が多く, 重症例も認められたので, 本事例の当所分離株7株 (以下NTT事例株と略す.) と過去における事例分離株 (以下過去の事例株と略す.) 19株について, コレラ毒素産生性等を比較し以下の結果を得た.
    1. NTT事例株のCAYE-L培地, 30℃ 培養におけるコレラ毒素産生量は, 16-256ng/ml (平均値130ng/ml), ポリミキシンB処理たより, 32-256ng/ml (平均値142ng/ml) に増加した. これに対して過去の事例株では, 各々8-256ng/ml (平均値34ng/ml), 8-128ng/ml (平均値44ng/ml) であり, 両者の間に有意な差が認められた.
    2. NTT事例株のCAYE-L培地, 37℃培養におけるコレラ毒素産生量は, 512-4,096ng/ml (平均値2,100ng/m1) であり, ポリミキシンB処理では1,024-2,048ng/ml (平均値1,600ng/ml) であった. これに対して過去の事例株では, 8-64ng/ml (平均値25ng/ml), 8-128ng/ml (平均値45ng/ml) であり, NTT事例株は, 過去の事例株に比べ著明に多くコレラ毒素を産生した. この傾向は, AKI培地においても同様であった.
    3. CAYE-L培地, 37℃培養においてNTT事例株は, 菌株接種後9時間の菌数が, 過去の事例株に比べ約50倍多く, すみやかな増殖が認められた.
  • 宮崎 勢, 三浦 亮
    1991 年65 巻7 号 p. 794-798
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    急性非リンパ性白血病の治療中に肝脾カンジダ症を合併した11例を経験した. 抗真菌剤の経静脈投与を行ない得なかった5例は肝不全死したが, 投与した6例は治癒せしめた.
    典型的な肝脾カンジダ症の臨床経過は白血病の化学療法後, 好中球数の回復にもかかわらず抗生剤不応の発熱が続き, 右季肋部を中心とした腹痛を伴う. さらに, 総ビリルビンとアルカリフォスターゼの上昇を主とする肝機能異常と肝腫大が明らかとなる. 腹部CTでは肝脾および腎に1cm程度の, 造影剤で増強されない低吸収域が多発し, USでも同大の低あるいは高エコー帯が多発するが, ときにtarget signを示す. これら特有の臨床症状と腹部画像検査により肝脾カンジダ症の診断は困難ではなく, 抗真菌剤の早期投与により本症は治癒可能である.
  • 癌患者におけるEBV感染と免疫
    田島 マサ子, 武田 史子, 竹島 寿男, 横畠 徳行, 冲永 功太
    1991 年65 巻7 号 p. 799-807
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトヘルペス科ウイルスはヒトに潜伏感染し, 免疫能の低下時に再活性化することが知られている. 免疫能の指標としてヒトヘルペス科ウイルス (Varicella-Zoster Virus: VZV, Herpes Simplex virus: HSV, Cytomegalo Virus: CMV, Epstein-Barr Virus: EBV) の抗体調査を40歳-80歳未満の癌患者と同年齢層の健常者について行なった. その結果EBVを除きCF抗体の陰性例は60歳未満の若齢の健常者と60歳以上の老齢の癌患者であった. 高抗体価 (64倍以上) の保有例は若齢の癌患者と老齢の健常者に高率に認められた. 一方EBV抗体は健常者の80%以上が40-160倍の抗体価を有し, 高い抗体価 (640倍以上) は7%以下であった. さらに老齢になると抗体陰性率と40倍以下の低抗体価の保有率上昇が認められた. それに対し癌患者では70%が320倍以上の抗体価を有し, 抗体陰性例は0%, 低抗体価は5%以下であった. また高抗体価の保有率は加齢と共に上昇し70歳代では半数の50%が高抗体の保有例であった. さらにVirus Capsid Antigen (VCA) の高抗体価の癌患者ほど, EBVの標的細胞である成熟B細胞数の減少と機能低下を認めた. この現象はEBVが担癌生体で再活性化することにより, 特異抗体の産生能の低下を引き起こしている可能性を示している.
  • 亀井 克彦, 河野 典博, 多部田 弘士, 本田 明, 海野 広道, 長尾 啓一, 栗山 喬之, 山口 哲生, 宮治 誠
    1991 年65 巻7 号 p. 808-812
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    5例の肺aspergillomaに対し, 新たに開発されたtriazole系抗真菌剤であるitraconazole (ITZ) を投与し, その臨床的効果を検討した.評価可能であった4例中, 自覚症状, 画像診断とも2例に有効性が認められ, 総合的に2例 (50%) で有効と考えられた.副作用は軽度の可逆的肝機能障害が1例に認められたのみであった.画像診断上, 菌球の部分的消失を見た1例では, ITZ投与量が200mg/日と他症例よりも多く, また血中濃度も2,068ng/mlと他症例に比しはるかに高値を示していた.以上より, 本剤は肺aspergillomaに対し, 有用な薬剤と考えられたが, 投与量, 投与方法等を工夫して血中濃度を高めることにより, さらに有効性が高まる可能性が示唆された.
  • 福山 正文, 上村 知雄, 伊藤 武, 原 元宣, 田淵 清, 村田 元秀, 光崎 研一
    1991 年65 巻7 号 p. 813-819
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    著者らは1983-85年にかけて河川水や土壤からAeromonas感受性ファージの分離を試みファージを分離することに成功し, 分離菌株についてファージ型別をわが国で最初に検討した.その成績を要約すると以下の通りである.
    1) 河川水195例中82例 (40.1%) および土壤90例中23例 (25.6%) から本菌感受性ファージを分離した.また, その105例から分離されたファージを用い交差試験を行ったところ, 13群 (I-XIII群) に型別された.
    2) 1982年から1983年にかけて河川水, 湖水, 河川土壤および淡水魚から分離したAeromonas属594株を対象に著者らが開発したファージ群でファージ型別を行ったところ, 129株 (21.7%) が本ファージに型別された.河川水, 湖水由来では71株中11株 (15.5%) が, 土壤由来では82株中29株 (35.4%) が, 淡水魚由来では441株中89株 (20.2%) がそれぞれ型別された.菌種別では, A.hydrophilaが103株中53株 (51.5%) に, A.sobriaが292株中21株 (7.2%) に, A.caviaeが148株中13株 (8.8%) に, Aeromonasspp.51株中42株 (82.4%) にそれぞれ型別された.また, ファージ型別された中では, 特に1群, IV群とVI群に該当するものが多く認められた.
    以上のごとく, 本菌ファージを分離することに成功し, I-XIII群に群別することができた.また, 本ファージ型別は本菌の生態学的分布調査の解析に応用できうることが示唆された.
  • 柏木 義勝
    1991 年65 巻7 号 p. 820-832
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1956年から1978年までの期間に, 都立豊島病院に入院した猩紅熱患者で, 入院1週間以内に咽頭および鼻腔から分離した溶血レンサ球菌 (溶連菌) のうち, 主要流行菌型であるA群4, 6および12型の1,586株について各種薬剤に対する感受性を測定した.そのうち流行菌型との関係が深いtetracycline (TC), chloramphenicol (CP) およびerythromycin (EM) の成績について報告する.
    TC耐性株の最初の出現は, 1959年の1株 (6型) で, その後64年に4型の流行と共に耐性株が増加した.1968, 1969年はやや減少したが, 1970年から再び増加し, 1973年以降は90%を超えて1978年には100%に達した.
    CP耐性株の最初の出現は, 1969年の1株 (4型) で, その後12型の流行と共に年々増加してきた.
    EM耐性株の最初の出現は, 1972年の30株 (12型) で, CP耐性株と同様に12型の増加と共に年々増加してきた.
    なお, 最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した入院時分離株の1,586株のうち, TCには932株 (58.8%), CPには452株 (28.5%), EMには574株 (36.2%) が耐性を示した.
    各菌型別の耐性の変化は, 1964年の4型の流行と共にTC耐性株が増加し, 1972年の12型の流行と共にCPおよびEM耐性株が増加したが, 6型は3薬剤に対する耐性株が少なかった.
    かくの如く, 常用薬剤に対する耐性獲得状況により菌型の流行が左右される現象がみられたことにより, 本来, 溶連菌の流行菌型は各型に対する免疫非獲得者の累積と関係するとされていたが, これに加えて耐性獲得も菌型の流行に大きな役割を演じていることが明らかになった.
  • 森 正司, 安形 則雄, 村瀬 嘉孝, 太田 美智男
    1991 年65 巻7 号 p. 833-837
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1989年9月に名古屋市内で発生したコレラ集団発生と同時期に発生したコレラ散発事例より分離したコレラ菌を比較解析した.
    調べたコレラ菌6株 (集団事例由来3株, 散発事例由来3株) はすべてエルトール稲葉型で, 生化学的性状は同じであった.カッパファージ型は, ファージ非産生, ファージ感受性で“cured”であつた.Mukerjee型は4型, Lee型は32に感受性, 37に非感受性で同じであつた.薬剤感受性は調べた10薬剤において全く同一のパターンを示した.
    以上の調査した項目において菌株間の違いを見出せなかった.コレラ菌染色体のDNAの制限酵素切断パターンの比較や, コレラ毒素を含むDNA断片の大きさの比較は, コレラ菌の疫学調査に有用な検査法であるので, プラスミドの検出とともに, 染色体DNAの制限酵素HindIIIの切断パターンおよびコレラ毒素遺伝子を含むDNA断片の大きさの比較を行った.その結果プラスミドは全ての菌株で検出できなかつた.染色体DNAの切断パターンおよびコレラ毒素遺伝子を含むDNA断片の大きさに菌株間の違いは見出せなかった.これらの結果から集団事例と散発事例が同一菌株由来のコレラ菌による感染であることが示唆された.
  • 安岡 彰, 河野 茂, 前崎 繁文, 山田 洋, 賀来 満夫, 宮崎 幸重, 古賀 宏延, 原 耕平
    1991 年65 巻7 号 p. 838-843
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は, 新しい血液培養法としてDu Pont社のIsolator ® を用いたlysis centrifugation法と, 従来のカルチャーボトル法とを比較し, 次の結果を得た. カンジダを血液中に加えた試験管内の培養実験で, Candida albicans (YF-274) は, 12検体中, lysis centrifugation法では翌日に9検体 (75.0%) で, 3日後には11検体 (91.7%) で培養陽性となった. カルチャーボトル法では3日後に初めて12検体中, 4検体 (33.3%) で陽性となり, lysis centrifugation法が早期診断において優れていた. C.tropicalis (YF-386) はlysis centrifugation法では2日後に12検体中100%陽性となった. これに対し, カルチャーボトル法では7日後にようやく1検体で陽性となり, 10日後に4検体 (33.3%) で陽性となつたのみであり, 迅速性と検出率のいずれにおいてもlysis centrifugation法が優れていた. 94症例の, のべ180検体の臨床的検討では, lysis centrifugation法では63検体中11.1%, カルチャーボトル法では117検体中7.1%で真菌が検出された. 同一検体で両方の検出法が検討された43検体では, lysis centrifugationで7検体 (16.3%) で真菌が分離され, カルチャーボトル法では3検体で分離された. 検出菌は, カルチャーボトル法ではC. albicansC. parapsilosisのみであつたが, lysis centrifugation法ではこれらに加え, C. tropicalis, C. krusei, Candida spp. が分離された. 本法は, 血中からの真菌の検出率の向上と迅速な同定に有用な方法と思われた.
  • 原田 祐輔, 宮崎 修一, 金子 康子, 五島 瑳智子
    1991 年65 巻7 号 p. 844-850
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    DNAプローブ法による淋菌検出の基礎的検討を臨床分離菌株 (18菌種, 81菌株) を用いて行った. DNAプローブはGen-probe社製淋菌診断キット (PACE) を使用した. 本法による淋菌の陽性率は100%(30/30) であり, 淋菌以外のグラム陽性菌および陰性菌では0%(0/51) であった. 淋菌の菌量とDNAプローブRLU値は高い相関を示した (相関係数: 0.96). 陽性感度は5×103cells/transport tubeであった. 共存菌が存在した場合および加熱処理や, 抗菌薬を作用させ, 菌が死滅したり増殖能力を失った場合にも, 淋菌の陽性率は低下せず, 検出への影響は認めなかった. また, 本法は抗菌薬の溶菌作用を推測する手段としても利用できることが示唆された.
  • 山内 保生, 長沢 浩平, 多田 芳史, 塚本 浩, 吉沢 滋, 真弓 武仁, 仁保 喜之, 草場 公宏
    1991 年65 巻7 号 p. 851-856
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus, SLE) に帯状疱疹 (herpes zoster, HZ) が高頻度に発症する要因を解明するために水痘一帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus, VZV) に対する免疫能を検討した. 当科のSLE患者119例中56例 (47%) と高率にHZの罹患がみられた. 9例はSLE診断以前にHZに罹患していた. SLE診断後のHZの発症頻度は100 person-yearsあたり5.45であった. HZ罹患と腎障害の関連はみられなかった.
    VZVに対する中和抗体価, CF抗体価の検討ではSLEでHZの既往のある例は, HZ既往のないSLEや健常者よりも有意に高い抗体価がみられた. VZV抗原に対する皮内反応は, SLE患者ではHZの既往の有無にかかわらず健常者よりも有意に低い陽性率を示した. また, 皮内反応時の副腎皮質ステロイド剤 (ス剤) の使用量が1日10mg以上の群はそれ未満の群に較べて有意に低い皮内反応の陽性率を示したが, ス剤を全く使用していない未治療SLEでも, 皮内反応陽性率は低下していた.
    SLEにHZが合併する1つの重要な要因として細胞性免疫能の低下が関与していると考えられた. 細胞性免疫能は, SLE自体による低下のほか, ス剤にも強く影響されていることが示唆された.
  • 松下 秀, 山田 澄夫, 工藤 泰雄, 大橋 誠
    1991 年65 巻7 号 p. 857-863
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    輸入症例が年々増加の一途をたどっている細菌性赤痢の特徴を把握するため, 東京において1980-1989年の最近10年間に輸入及び国内症例から分離された赤痢菌を対象に, その菌種・血清型並びに薬剤耐性の面から比較検討した.
    輸入症例より分離された804株 (海外由来株) と海外とは直接関連がないと考えられた都内での分離株385株 (国内由来株) における菌種別検出頻度は, 両由来株ともS. sonneiが最も高く, 次いでS. flexneri, S. boydii, S. dysenteriaeの1頂であった. しかし, 海外由来株では国内由来株のそれと異なりS. sonneiの全体に占める割合が低かった.海外由来株ではまた各菌種における血清型も国内由来株のそれに比し多彩であった.
    CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLXの9種薬剤について実施した薬剤耐性試験における耐性菌出現状況は, 両由来株ともS. dysenteriae, S. flexneri, S. boydii, S. sonneiの順で耐性頻度が高く, 全体では海外由来株で80.1%, 国内由来株で82.9%が耐性であった. 薬剤別では, 海外由来株でSM, TC, CP, ABPC, ST, 国内由来株でTC, SM, ABPC, CP, STの順で耐性頻度が高かった. その耐性パターンは, 全体で32パターンにわたっていたが, 両由来株ともCP・TC・SM・ABPCの4剤耐性を示すものが最も高頻度であった. なお, FOMとNFLXに対する耐性株は両由来株とも全く認められなかった.
    1989年に分離された海外由来の耐性菌50株中, その耐性が大腸菌に接合伝達されたのは3株 (6.0%) であった.
  • 相原 雅典, 酒井 美智子, 岩崎 瑞穂, 島川 宏一, 小崎 節子, 窪 真理, 高橋 浩
    1991 年65 巻7 号 p. 864-874
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1976年から1988年まで13年間の, 当院における合計9,393例の下痢, 腸炎患者糞便より検出した腸管系病原菌を集計した.外来患者は合計5,443例を検査し, 1,686例 (31.0%) から1,811株の病原菌を検出した.分離菌は1978年以前はSalmonella spp., 大腸菌血清型 (E.coliserotype),Vibrio parahaemolyticusのほか数菌種で, 菌の検出率も14.8%と低率であった.1989年以降10年間の病原菌検出率は34.4%と大幅に上昇し, 検出菌種も1978年以前に比べ約2倍増加した.菌検出率の増加はCampylobacter spp.の検出が主因であった.1979年以降の主要な検出菌はCampylobacter spp., E.coli serotype, Salmonellaspp., V. parahaemolyticus等であったが, Rota virusやClostridium diffcile, Aeromonas spp., Vibriofluvalis等検出菌種の増加と多様化が認められた.入院患者は3, 950例を検査し, 800例 (20.3%) から835株の病原菌を検出した.検出菌の中ではC. difficileが最も多く423例に認められ, 次いでE. coliserotype, Salmonella spp., Campylobacterspp., V. parahaemolyticus, Aeromonas spp.の順であった.C.4顔cile検出例は, いずれも抗菌剤投与後に下痢または腸炎を発症した患者であった.法定伝染病起因菌としてはSalmonelhaspp.serovar Typhiを5例,Salmonellaspp. serovar Paratyphi Aを1例,Shigella flexneriを3例,Shigella sonneiおよびEntamoeba histolyticaを2例より検出した
  • 池田 文昭, 横田 好子, 峯 靖弘
    1991 年65 巻7 号 p. 875-882
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureusおよび11菌種のcoagulase negativeStaphylococcus計598株についてslimeの産生の有無を測定しslimeの産生とbiofilmの形成の関連性を検討した.slimeの強い産生を示した株はS. epidermidisのみに認められ16%(42/263) の頻度であった.S. epidermidisのslime強産生株と非産生株の医療用シリコンディスク (Sディスク) に対する付着率は2.3-14.8%の範囲で菌株間で差異があるもののslime産生の有無との関連性は認められなかった.しかし, 菌を付着させたSディスクを培養すると, slime産生株のみがSディスク表面の菌数が著しく増加し肉眼的にも観察可能なbiofilmを形成した.Biofilm形成過程を走査電顕で観察すると菌体表面に分泌されたslimeと考えられる突起様構造が出現し, これを架橋として菌が凝集している像が認められた.Biofilm形成後のS. epidermidisに対するcefazolin (CEZ), cefmetazoleおよびflumoxefの殺菌作用は菌付着直後に比較して著しく低下したがCEZのヒト血清中濃度シミュレーションモデルにおいてCEZはS.epidermidisの菌数の減少と, 形成されたbiofilmを消失させた.
  • 古賀 香理, 粕谷 志郎, 大友 弘士, 名和 誠, 栗山 逸子
    1991 年65 巻7 号 p. 883-887
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A 88 year old Japanese male was repeatedly infected withAncylostoma duodenale.He underwent an artificial anus operation about 55 years ago. He appeared to be infected with hookworm earlier than in 1977 and developed severe anemia. Though he was treated with pyrantel pamoate and mebendazole several times, reinfections developed in each time. A possible origin for his reinfections was his own feces defecated through his artifical anus. Unsanitary handling of the anus and the feces exposed himself to oral or percutaneous infection. Besides, a single dose of pyrantel pamoate, usually very effective against Ancylostoma duodenale, was not so effective in this patient. Therefore, we prescribed multiple doses of pyrantel pamoate, and followed by a single dose of mebendazole. However, reinfections still persisted because of his unsanitary behavior.
  • 菊池 嘉, 岡 慎一, 後藤 美江子, 後藤 元, 木村 哲, 三田村 圭二, 島田 馨
    1991 年65 巻7 号 p. 888-892
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Increasing rates of human immunodeficiency virus (HIV) related tuberculosis have been noted and recently the clinical importance of the disease has been mentioned. The diagnosis of tuberculosis is more difficult in those patients with HIV seropositive than those with seronegative, because those with seropositive have atypical clinical features
    A 29-year-old male, who was infected with HIV heterosexally in Central Africa in 1986, was admitted to our hospital with a history of general malaise and weight loss in April, 1989. Laboratory and physical examinations revealed anemia, thrombocytepenia, the elevation of LDH, and giant intraabdominal lymphadenopathies, suspecting malignant lymphoma.Mycobacteriumwas isolated from the sputa in April and was confirmed asM. tuberculosisusing a DNA probe in May, 1989. Clinical symptoms including giant lymphoadenopathies and laboratory abnomalities improved with antituberculosis therapy. Development of a rapid method for the diagnosis of tuberculosis was warranted in this case.
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