感染症学雑誌
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60 巻, 1 号
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  • 村松 紘一, 和田 正道, 小林 正人
    1986 年 60 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年10月に長野県上山田町のKホテルに宿泊した255名の中から患者数132名 (発病率518%) のEscherichia coli O159: H20による集団食中毒が発生した.
    患者132名の主な症状は水様性下痢 (97.3%), 腹痛 (56.8%), 倦怠感 (18.9%), 頭痛 (10.6%), 嘔気 (8.3%), 発熱 (7.6%) および嘔吐 (3.8%) 等であり, 潜伏時間は7~132時間 (平均50.1時間) であった.患者34名中17名 (50.0%), 井戸水等7検体中2検体 (28.6%) から該菌を検出したが, 他の既知下痢症原因菌は検出されなかった.分離したE.coli O159: H20は耐熱性エンテロトキシソ (heatstable enterotoxin) のみを産生した.該菌はインドール反応が陰性, 運動性が37℃ では陰性, 25℃ で陽性の性状を示し, 典型的なE.coliの性状とは異なっていた.
    本事例は井戸水が原因と推定されたが, その汚染源は解明できなかった.
  • 第1報本邦48施設におけるアンケート調査成績年度, 年齢別頻度並びに原因菌について
    藤井 良知, 西村 忠史
    1986 年 60 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    全国大学病院並びに関連病院小児科48施設の協力を得て, 1980年より1984年6月に至る期間の入院敗血症患者805例中菌血症を証明でき±761例について解析した.
    入院患児の0.57%に当り年度では微増傾向にある.男女比は1.5対1で常に男児が多い.年齢では2歳未満が67.4%を占めるが, 新生児期が34.3%かつ3日齢までが12.2%と幼若児ほど多い.
    年度別の検出菌はグラム陽性菌, ことにS.aureusに漸増傾向を認め, 1983年以降は従来のグラム陰性菌優勢から逆転してグラム陽性菌優位となっているが, 5年間を平均するとグラム陽性菌対陰性菌は46.9対53.1で後者の殆どすべてを占めるグラム陰性桿菌が優勢であった.
    年齢別には3ヵ月未満乳児ではE.coli, S.aureus, GBS, S.epidermidis, Klebsielia spp., Pseudomonas spp.の順であり, Enterococcus, 嫌気性菌, GASが頻度が低いながらこれに続いている.E.coli, GBSは3ヵ月以上の乳児では明らかに減少した.Proteus spp., Staphylococcus spp., Enterococcus spp.は幼若群に多いが年長群にもあり, Enterobacter spp., Serratia spp., Klebsiella spp.及び真菌は両群に同様に検出され, S.viridans, S.pneumoniae, H.inltuenzae, Salmonelia spp.は年長群に多かった.なおListeria monocytogenesと嫌気性菌は3ヵ月未満のものに多かった.
  • 多羅尾 和郎
    1986 年 60 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近では肝性脳症の成因としてアミノ酸比の変動が挙げられているが, 血中アジモニアの上昇が脳症発現の一大原因である事には変りはない.その血中アジモニア上昇には大腸内urease産生菌によるアジモニア産生が重要でありurease産生菌としてはProtezts, Klebsiella等の好気性グラム陰性桿菌が主であると従来信じられてきたが, 最近, 糞便中の最優勢菌である嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesにも好気性菌に勝るurease活性が存在する事が判明し, 肝生脳症では嫌気性菌がアジモニア産生の主体をなす事が考えられる.われわれはこの点を, 好気性グラム陰性桿菌は抑えないが嫌気性グラム陰性桿菌を抑える非吸収性抗生剤vancomycin hydrochlorideを用いて検討した.方法としては肝硬変の肝性脳症出現例で血中アジモニア値上昇を伴った5症例に, vancomycinを7~33日間繰り返し経口投与し脳症の症状, 血中アジモニア値, 脳波所見, 糞便19中の菌種, 細菌数の変動を検索した.結果は5例全例で繰り返し脳症の改善, 血中アジモニア値の下降, 脳波の改善を認め, それと共に糞便中の嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesの著減を認めた.又, 投与中止によりBacteroidesの増加と共に脳症が再出現した.肝性脳症の出現には嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesが重要であり, これを抑える非吸収性抗生剤vancomycin hydrochlorideが脳症の治療に有効であった.
  • 賀来 満夫
    1986 年 60 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionella pneumophilaによって産生されるβ-lactamaseについて, その誘導性, 基質特異性, 阻害などに関して検討を加えた.
    L.pneumophilaの産生するβ-lactamaseはinducerの濃度依存性に活性の上昇が認められ, L. pneumophilaが誘導型β-lactamase産生菌であることが認められた.
    基質特異性についてはペニシリジおよびセフェム系の双方に対して幅広い酵素活性を有し, 中でもCEZ, CZXに対して最も著明で, オキシイミノセファロスポリジ系抗生剤であるCXM, CTXなどに対しても活性を有していることが特徴的であった.
    本酵素はclavulanic acidおよびsulbactamの添加により, 著明に酵素活性が阻害を受けており, 各々10μMの添加ではその酵素活性の90%以上が阻害を受けていた.
    本菌の産生するβ-lactamaseはその基質特異性, 阻害などの面から, 三橋の分類によるcefuroximase (Type 1) の範疇に属するものと考えられた.
  • 第1報: Amoxicillinとの対比
    澤木 政好, 三上 理一郎, 三笠 桂一, 国松 幹和, 伊藤 新作, 成田 亘啓
    1986 年 60 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症はしぼしば難治性である.我々は経時的に経気管吸引法 (TTA) を施行し, 難治例において, ほぼ同一細菌による持続的細菌感染を認めた.そこで, 本症の長期 (6ヵ月以上) 化学療法を, β-lactam系より下気道への移行のよいErythromycinを用いて試みた.今回はコジトロールとして機序の異なるAmoxicillinも用い, 両者の有用性を少数例について検討した.
    対象は通年性の多量の膿性疾と労作時呼吸困難を訴え, PaO2の低下を認める副鼻腔気管支症候群8例 (びまん性汎細気管支炎7例と気管支拡張症1例) である.治療前TTA検出菌はH.influenzae4例などであった.主な抗生物質はErythromycin 600~1,200mg/日 (分3) 4例と, Amoxicillin lg/日 (分4) 4例で, 経口投与した.
    (1) Amoxicillin群では, それぞれ, 2ヵ月目, 9.5ヵ月目, 12ヵ月目と13.5ヵ月目に, P.aeruginosaなどの他菌の出現を認め, 治療を中止した.Erythromycin群では, P.aeruginosaなどの出現がみられず, 10ヵ月以上治療継続中である.
    (2) 両群とも長期治療中は臨床的に有効であったが, 有意な副作用は認めなかった.
    以上の成績より, Erythromycinを主とした長期化学療法は, 慢性下気道感染症の有用な治療法となる可能性が示唆された.
  • 第2報: Pseudomonas感染例も含めて
    澤木 政好, 三上 理一郎, 三笠 桂一, 国松 幹和, 伊藤 新作, 成田 亘啓
    1986 年 60 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症における長期的に有用な治療法を確立する目的で, 長期化学療法を試みた. 今回は, 第1報で有用性が示唆されたErythromycinで, Pseudomonas aeruginosaの感染例も含め, 投与症例を追加し, 長期治療の臨床的有用性の検討を行なった.
    対象は副鼻腔気管支症候群10例 (びまん性汎細気管支炎9例と気管支拡張症1例) で, 治療前経気管吸引法 (TTA) 検出菌はH. influenzae4例, H. influenzae+S. pneumoniae 1例, S. pneumoniae 1例, H. parainflzaenzae1例, P. aeruginosa2例, P. mczltophilia 1例であった.
    Erythromycin投与期間は8ヵ月~25ヵ月 (平均16.8ヵ月) であった.
    (1) 臨床効果は全例に認められ著効1例, 有効8例, やや有効1例であり, Pseudmonas感染例は有効であった.
    (2) 著効の1例を除いて, 治療後のTTAなどからH. influenzaeP. aeruginosaは消失しなかった.
    (3) 長期治療中有意な副作用は認めなかった.
    以上より, Erythromycin長期治療は, P. aeruginosa非感染例では, P. aemginosaの菌交代症を起こすことなく, また, P. aeruginosa感染例でも, P. aeruginosa非感染例と同様に, 有用な治療効果が得られ, 慢性下気道感染症における有力な治療法であると考えられる.
  • 加地 正伸
    1986 年 60 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者におけるイジフルエジザワクチジ接種時の抗体産生ならびに安全性を検討するため, 血液透析患者 (HD群) 49例, 腹膜透析患者 (PD群) 17例, 保存的治療を受けている慢性腎不全患者 (conservative群) 22例の各慢性腎不全患者ならびに健康成人 (control群) 29例に対してイジフルエジザHAワクチジを接種し, 以下の結論を得た.
    1) HD, PD, conservative群のいずれの群においてもワクチジ含有抗原すなわちA/Kumamoto/37/79 (HIN1), A/Ishikawa/7/82 (H3N2), B/Singapore/222/79に対するHI価の上昇 (幾何平均HI価の上昇, HI価保有率の上昇およびHI価上昇率) はcontrol群と同程度に良好であった. 各ワクチジ含有抗原相互間での比較では, control, HD, PD, conservative群ともB/Singapore/222/79に対してよりA/Kumamoto/37/79 (HIN1), A/Ishikawa/7/82 (H3N2) に対するHI価の上昇の方が良好であった.
    2) A (H3N2) 変異抗原のうちA/Kyoto/C-1/81に対するHI価上昇率はHD, PD, conservative群ではcontrol群に比して, また, A/Niigata/102/81に対するHI価上昇率はHD群ではcontrol群に比して有意に劣っていた.すなわち, HD, PD, conservative群の各慢性腎不全患者では, 一部変異抗原に対するHI価は健康人程の上昇を示さなかった.
    3) 副作用としての局所反応, 全身反応は慢性腎不全患者においても健康人と同様に特記すべきものは認められなかった.
    4) ワクチジ接種により慢性腎不全の治療管理状態に悪化を認めなかった.
    以上の成績から, 慢性腎不全患者ではワクチジ株の選定が適切であればワクチジ接種により健康人と同程度のHI抗体が産生され, しかも安全にワクチジを接種し得ると結論され, 慢性腎不全患者にも積極的にワクチジ接種が行なわれるべきであると考える.
  • 藤井 修照
    1986 年 60 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1984年6月初めから2ヵ月の間に, 発熱を以って始まる特異な発疹性疾患103例を経験した.強い流行性を示し, 家族内伝播の傾向が著明であり, 殆んどが9歳以下の小児であったが, 患児の親にも感染は及んだ.材料の採取できた症例の90%にEchovirus type 16 (以下Echo 16と略す) が証明され, この疾患はBoston exanthemであると結論するに至った.
    本疾患は数日の発熱のあと, 特異な発疹が出現, 約1週間で消退し, 合併症もなく比較的軽症であるが, 類似する他の発疹性疾患との鑑別は比較的容易であると考えられる.
    Echo16の分離される頻度は極めて低いと云われるが, 今回観察された強い流行の原因についての解明が待たれる.
  • 斧 康雄, 西谷 肇, 野末 則夫, 上田 雄一郎, 国井 乙彦, 金ケ崎 士朗, 岩田 滉一郎
    1986 年 60 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者の易感染性について, その原因を調べる目的で, 同患者の食細胞の活性酸素放出能について検討した.
    肝硬変患者では, 健康成人と比較して, 末梢血白血球数の減少 (P<0.001) がみられ, 主として顆粒球機能を反映する全血化学発光の低下 (p<0.01) や単球化学発光の低下 (p<0.05) がみられ, 食細胞の活性酸素放出能の低下がみとめられた.また, 同時にオプソニン活性の低下がみられ, この様な食細胞の機能低下が易感染性の一因となっていると考えられた.さらに, 肝硬変にしぼしば合併する糖尿病, 肝細胞癌, 摘脾, 感染症などの病態時の食細胞の活性酸素放出能の変化についても検討を加えた.
  • 高松 健次, 小松 裕司, 中野 義隆, 南川 博司, 西本 正紀, 宮本 修, 田村 一民, 田中 勲
    1986 年 60 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新生児および乳幼児に好発するリステリア症は, 成人においては免疫抵抗力の低下した患者に発症し, いわゆる日和見感染症としての色彩が強く, 成人例の方が予後の悪い事が指摘されている.最近著者らは, リステリア敗血症を発症したにも拘わらず, 何ら抗菌剤投与を受けることなく自然治癒した肺癌患者を経験した.症例は55歳の男性で, 上大静脈症候群を呈するS1原発の腺癌により, 抗癌剤及び放射線治療を受け白血球減少症を来たした時期に, 発熱, 全身倦怠を主徴として, Listeria monocytogems 4bによる敗血症を発症した.しかし間もなく自然に解熱し, 血液培養も陰性化し, 何ら抗菌剤投与を受けることなく自然治癒に至った.3ヵ月後に基礎疾患である肺癌にて死亡したが, 剖検においてもリステリア菌によると思われる転移性化膿性病巣は認められなかった.自宅に猫を飼っていたが感染経路は不明であった.リステリア敗血症の自然治癒例は少なく, 興味ある症例と考え報告した.
  • 田口 善夫, 岩田 猛邦, 相原 雅典, 福本 晃
    1986 年 60 巻 1 号 p. 81-82
    発行日: 1986/01/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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