感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
79 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 森 功次, 林 志直, 佐々木 由紀子, 野口 やよい, 甲斐 明美, 諸角 聖
    2005 年79 巻8 号 p. 521-526
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Norovirus (NV) 集団事例においては0発症者と共通の喫食がある非発症者や, 不顕性感染の集団施設職員からもNVが検出される場合がある.食品を介したと推定される集団胃腸炎およびヒトからヒトへの伝播によると推定される集団胃腸炎事例において, 発症者および非発症者の糞便中に排出されるウイルス遺伝子量をrealtime-PCR法を用いて測定した.その結果, 糞便に含まれるNV遺伝子量の平均値は104-106 copy/gで, 発症者群と非発症者群に有意差は認められなかった.この結果からNVの曝露により不顕性感染が成立した非発症者においても, 糞便中に多量のNVを排泄している場合のあることが明らかとなった.このような非発症者が調理に従事する場合は新たな食中毒集団発生に, 施設等の従事者であれば施設内の胃腸炎流行の拡大に関与する可能性が示唆された.
  • 田中 博, 黒木 俊郎, 渡辺 祐子, 浅井 良夫, 大谷 勝実, 須釜 久美子, 芹川 俊彦, 中嶋 洋, 砂原 千寿子, 帆足 喜久雄, ...
    2005 年79 巻8 号 p. 527-533
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    2000年9月から2003年3月までの期間, 全国10県で健康者における髄膜炎菌の保菌状況を調査した.学生, 社会人, 高齢者, 外国人等の健康者5,886名の口蓋扁桃から髄膜炎菌の分離を試みた結果, 髄膜炎菌は25名 (学生21名, 社会入3名, 外国入1名) から分離され, 分離された集団での分離率は0.5%-5%, 全体の平成均分離率は0.4%であった。保菌者の年齢は50歳の1名を除いてすべて10歳代後半から20歳代であり, 性別は男性17名, 女性8名であった.分離菌株は血清群別試験でB群 (9株) とY群 (4株) に群別されたが, 12株は群別できなった.また, 髄膜炎菌の簡易分類マーカーであるγ-グルタミールアミノペプチダーゼ活性の認められない菌株が1株存在した.
  • 大河内 康実
    2005 年79 巻8 号 p. 534-542
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    防衛医科大学校病院において剖検が関与した院内結核集団感染を経験した.その事例と病院内の結核感染の背景について検討した.骨髄異形成症候群の72歳男性が入院し, 剖検にて粟粒結核と診断された.接触者検診が行われ, ツベルクリン反応の発赤長径30mm以上を感染ありと定義した.結核感染者は13名でそのうち3名の発病者が発生した.発病者のうち2名が剖検室のみ, 1名は病棟および剖検室で初発症例と接触していた.剖検室のみでの接触者と病棟のみでの接触者の結核感染のオッズ比は5.04 (95%信頼区間1.08-23.42) であった.さらに, 二次発病者のひとりは気管支結核で強い感染源と考えられたため, 接触した職員の定期外健康診断とその接触した患者の2年間の経過観察が行われた.事例発生から6年間で, 同一感染源から3名の結核発病者とのべ68名の結核感染者が生じ, 結核集団感染事例と考えられた.また, 1997年から2002年の6年間に当院入院後に診断された活動性結核症例は23例で基礎疾患のある高齢者が多く, そのうち本事例を含む6例で剖検が行われていた.剖検例5例で陳旧性結核病変を認めた.剖検症例で活動性結核の生前診断が得られていたのは1例のみであった.結核既感染の高齢患者には結核発病のリスクがあり, かつ, 剖検前に結核の臨床診断は必ずしも得られていないことから, 剖検時に結核感染対策を行うことが必要と考えられた.
  • 前田 卓哉, 齋藤 智也, 竹内 勤, 浅井 隆志
    2005 年79 巻8 号 p. 543-548
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    我々は2001年1月より2005年2月にかけて, トキソプラズマ髄膜脳炎が疑われた患者髄液を用い, 18SrDNAを標的とするnested-PCR法が補助診断法として有効であるか検討した.対象にはCDCのクライテリアに基づき抗トキソプラズマ療法を受け, 最終的にトキソプラズマ髄膜脳炎と診断が確定した11症例の治療前髄液, および画像的にトキソプラズマ髄膜脳炎が疑われるも, 抗トキソプラズマ療法にて効果なく, 最終的に悪性りンパ腫と診断された2症例の髄液を検体として用いた.Nested-PCR法の結果.陽性と判定された8検体について, すべて臨床的にトキソプラズマ髄膜脳炎と診断されており, 本法の高い特異性が示された.一方, トキソプラズマ髄膜脳炎11症例中3例でPCR陰性となり, 27.3% 3 11で偽陰性を生じる結果となった.
    トキソプラズマ髄膜脳炎の確定診断は困難なことが多く, 多くの症例で最終的に治療的診断が行われているのが現状である.血清学的診断についても感度および特異性の点で問題があり, 新たな診断法の開発が急務となっていた.髄液を用いた nested-PCR 法は感度の点で問題が残るものの, 迅速かつ特異性の高い補助診断法として非常に有用であると考えられた.
  • 脇本 寛子, 矢野 久子, 馬場 重好, 奥住 捷子, 岡本 典子, 脇本 幸夫, 宮川 創平, 溝上 雅史
    2005 年79 巻8 号 p. 549-555
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Group B Streptococcus (GBS) は新生児敗血症・髄膜炎の起炎菌の約1/4を占めその感染予防が重要である.米国CDCの勧告では分娩の4時間前にペニシリンGを予防投与することを推奨しているが, 日本での抗菌薬の予防投与時期に関する報告はほとんどない。そこでGBSによる垂直伝播を予防するために, 妊娠分娩経過中におけるGBS保菌妊産婦への予防策 (抗菌薬の予防投与時期等) と児への伝播の関連を検討した.対象は2000年1月-2004年12月に2病院で妊娠中にGBS保菌と判明し経膣分娩をした母150名とその児151名である.母150名中児18名に伝播した (伝播率12.0%).分娩のために入院した直後に施行される抗菌薬の予防投与から分娩迄の時間と伝播の関連は, 3.5時間未満群 (53名中9名伝播) は3.5時間以上群 (83名中4名伝播) と比べて有意に伝播した (p<0.05).入院から児娩出迄の時間では, 伝播した場合の方がこの時間が有意に短かった (p<0.05).抗菌薬の予防投与から児娩出迄の時間が3.5時間以上となるよう, 分娩時の人院時期に関する保健指導を (特に分娩経過の早い経産婦に) 徹底する必要がある.
  • 鳴河 宗聡, 丸山 宗治, 安岡 彰, 舟田 久, 小林 正
    2005 年79 巻8 号 p. 556-560
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Tetanus is characterized by tetanic convulsions related to the actions of tetanospasmin pro-duced by Clostridium tetani. Another important characteristic of tetanus is the instability of the car-diovascular system related to sympathetic hyperactivity in the autonomic nervous system, and it may be an important prognostic factor. We report a patient with tetanus in whose unstable circula-tory kinetics made circulation management difficult.
    A 77-year-old woman who injured in a fall, 11 days after trismus appeared and 3 day after con-vulsion appeared. It was not severe case in the acuity classification. However, repeated generalized convulsions and autonomic imbalance involving the cardiovascular system were observed clinically, suggesting a severe case.
    Because of the unstable circulatory kinetics, the patient was carefully managed was performed in the intensive care unit (ICU), and she improved. ICU management may be essential for treating severe tetanus with cardiovascular complications.
    Acquired immunity is not achieved after the onset of tetanus, and since elderly people. in par-ticular, as in our own caset, are easily injured when they fall, we recommend vaccination.
  • 脇本 寛子, 矢野 久子, 馬場 重好, 奥住 捷子, 岡本 典子, 脇本 幸夫, 宮川 創平, 溝上 雅史
    2005 年79 巻8 号 p. 561-563
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
feedback
Top