感染症学雑誌
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74 巻, 4 号
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  • 小橋 吉博, 大場 秀夫, 米山 浩英, 沖本 二郎, 松島 敏春, 副島 林造
    2000 年 74 巻 4 号 p. 331-338
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    施設内で発症したと考えられる肺炎症例に関して臨床的特徴を検討した. 対象患者の基礎疾患は, 脳性麻痺を有する若年層と脳血管障害を有する高齢層に分けられた. 両群問でADLは差がなかったが, 若年層は栄養状態は比較的保たれ, 検出菌はMycoplasma pmumoniaeが多く, 予後が良好であったのに対し, 高齢層は栄養状態が不良で, 呼吸器症状以外で発見され, 明らかな誤飲のエピソードが誘因となる症例が多くみられた. 検出菌はMRSAをはじめとした耐性菌や複数菌の出現頻度が多く, 多数の抗菌薬の治療にもかかわらず高い死亡率をとり, 予後不良であった. 一方, 高齢層における生存群と死亡群の比較検討では, 予後に血圧低下, 意識障害, 浸潤影の拡がり, 呼吸不全, 多臓器不全, 代謝性アシドーシスの合併が大きな影響を及ぼしていたが, 検出菌および抗菌薬の内訳には差はみられなかった.
  • 坂田 宏, 丸山 静男
    2000 年 74 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    北海道内の小児科標榜施設98施設を調査対象として, 細菌性髄膜炎に関する調査票を送付した. 98施設のうち78施設から回答が得られ, 回収率は79.6%であった. その中から院内感染例および原因菌や予後が不明な例を除外した82名について検討した. 患者数は1994年から1997年までは1年に9から16名であったが, 1998年は30名と著増していた. 原因菌の頻度はHaemophilus influenzaeが49名を占めており, ついでStreptococcus pneumoniaeが14名, Streptococcus agalactiaeが10名, Escherichia coliが5名であった. 年齢別ではH. influenzaeS. pneumoniaeは1歳未満が多かったが学童期まで患者がみられた. S. agalactiaeはすべて生後3カ月未満の児であり, E. coliもすべて生後5カ月未満の児であった.
    H. influenzae, S. pneumoniae, S. agalactiae, α-streptococcus, がそれぞれ1名ずつ計4名 (4.9%) が死亡した. 後遺症は24名 (29.3%) にみられた. 後遺症の内容は難聴のみが8名と最も多いが, てんかん4名, 脳性麻痺4名などの重篤な例が少なくなかった.
    症例が多かったH. influenzaeによる髄膜炎では発症から治療までの期間が短い, 初診時の血清CRPが低い, 髄液細胞数が少ない例で予後は良好であった (p<0.05).
  • 松下 秀, 小西 典子, 有松 真保, 甲斐 明美, 山田 澄夫, 諸角 聖, 森田 耕司, 金森 政人, 工藤 泰雄
    2000 年 74 巻 4 号 p. 345-352
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    東京において1988~1998年の11年間に, 国内散発事例及び海外旅行者による輸入散発事例より分離されたサルモネラにおけるナリジクス酸 (NA) 耐性株の年次別出現状況, それらの血清型, 他薬剤と合わせた耐性パターンについて検討した。更に, 検出NA耐性株については, フルオロキノロン系薬剤 (NFLX, OFLX, ENX, CPFX) に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, NA感受性株と比較した.
    国内事例ではこの間5, 302株のサルモネラが検出され, そのうちNA耐性株は68株 (1.3%) で, 年次別に見ると1994年までは0~1%台で推移してきたが, 1995年と1998年は3.0%と増加傾向が認められている, 一方, 輸入事例では1, 981株検出され, そのうちNA耐性株は50株 (2.5%) で, 年次別に見ると1991年までは1株しか検出されなかったが, 1996年11.3%, 1998年27.1%と近年急増している。
    両事例由来118株のNA耐性株の血清型は, 型別不能を除き25種認められ, S. Enteritidis, S. Blockly, S. Litchfield, S. Typhimurium, S. Hadar, S. Virchowなど, 検出頻度の高い血清型において株数が多かった。
    他薬剤 (CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, FOM, NFLX) を含めた耐性パターンは, 26パターンと多岐にわたっており, そのうち2剤以上の多剤耐性株は73株 (61.9%) であった。なお, NFLX高度耐性を含む多剤耐性株が1株検出されている.
    これらNA耐性株のフルオロキノロン系薬剤に対するMICは, 対象として用いたNA感受性株に比較して, 各薬剤いずれも4~128倍高い範囲内の分布を示した.
  • 発熱期間と原因疾患および発熱初日の検査値との関連
    上野 久美子, 林 純, 山家 滋, 池松 秀之, 鍋島 篤子, 原 寛, 柏木 征三郎
    2000 年 74 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    入院中の高齢者 (65歳以上) について37.5℃以上の発熱症例1, 105エピソードにおける発熱期間と原因疾患および発熱初日の検査データーについて検討した. 発熱期間は37.5℃を超えた日数が1日であったのが453エピソード (41.0%) で最も多く, 全エピソードのうち960エピソード (86.9%) は4日以内で解熱した. 1日のみの発熱の原因疾患は尿路感染症 (125エピソード) および原因不明 (157エピソード) が多く, 2日以上続く発熱は呼吸器感染症 (267エピソード) によるものが有意に高率であった (p<0.001). 初日の最高体温が38.0℃以上のエピソードでは38.0℃未満に比して2日以上発熱を示すものが有意に高率であり (p<0.001), この傾向は原因疾患別に呼吸器感染症および尿路感染症でみても同様であった. 呼吸器感染症のうち242エピソード, 63.5%は初日の最高体温が38.0℃以上で発症し, 尿路感染症の88エピソード, 33.5%に比較し有意に高率であった (p<0.001). 発熱初日の最高体温および発熱期間は白血球数およびC-reacting Protein値と正の相関を示した (p<0.0001). 高齢者の発熱疾患における体温測定は簡便であり, 発熱の程度は発熱期間および炎症反応とも相関があり病態を把握するうえで有効な手段と思われた.
  • 宇宿 秀三, 野口 有三, 坂本 光男, 相楽 裕子, 須藤 弘二, 近藤 真規子, 今井 光信
    2000 年 74 巻 4 号 p. 360-364
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    抗HIV薬投与歴のない抗HIV-1抗体上昇期の日本人HIV-1感染初期患者についてpo1部位の遺伝子解析を行った結果, ジドブジン (ZDV) の薬剤耐性に関連するRT領域の70番目と215番目にアミノ酸置換が認められ, 患者はZDV耐性変異株により感染したことが示唆された. 今回認められたZDV耐性変異株による感染は日本における初めての報告である.
  • 芦田 隆司, 椿 和央, 長谷川 廣文, 金丸 昭久
    2000 年 74 巻 4 号 p. 365-371
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    同種骨髄移植患者において, トブラマイシン, バンコマイシンと同時に, 非吸収性の抗真菌剤のアンホテリシンBか, あるいは吸収性の抗真菌剤のフルコナゾールを投与して腸内細菌の変動および真菌感染症について検討した. 好気性および嫌気性の細菌は一部の例を除いて移植時には検出されなかった. また, 細菌感染症も認められなかった. 一方, CandidaのコロニーはアンホテリシンB, あるいはフルコナゾールの投与中においても糞便中に検出された. しかし真菌感染症は認められなかった. 今回の検討では, トブラマイシン, バンコマイシンと同時に投与したアンホテリシンB, あるいはフルコナゾールは細菌および真菌感染症の予防に同様に有効であった.
  • 岡崎 充宏, 鈴木 恭子, 荒木 光二, 浅野 紀子, 宿谷 菜穂子, 江上 照夫, 古谷 信滋, 内村 英正, 森田 耕司, 渡辺 登, ...
    2000 年 74 巻 4 号 p. 372-377
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    われわれは1994年2月から1996年9月までに, 杏林大学病院において散発下痢症の起因菌の検索および腸内細菌叢の把握を目的として提出された患者の糞便由来大腸菌2, 240株のうち, O血清型別された151株を下痢原性大腸菌として推定し, これらの菌株を対象にpolymerase chain reaction (PCR) を用いて9種類の病原因子関連遺伝子の検出および患者の胃腸炎症状との関連性について調査した.
    対象とした大腸菌の遺伝子の保有率は205% (31株) であり, これらの患者の胃腸炎症状は一人の患者を除いて全員に認められた. 一方, 無症状例において遺伝子が検出されたものは61症例中1例 (1.6%) にすぎなかった
    検出された各遺伝子の分離株数はeaeAおよびastA: 各14株, VT1: 6株, VT2: 5株, ST1b: 4株, aggR: 3株, およびLT: 2株であり, ST1aおよびinvEは検出されなかった. 特にO157の遺伝子の保有率は55.6% (5/9株) であり, 個々の菌株がVT1, VT2, eaeAおよびastA遺伝子を複数保有した. 一方, 組織侵入性大腸菌血清型の9株からは関連する遺伝子が検出されず, 逆に腸管病原性大腸菌関連遺伝子がそのうちの3株から検出された. また最も高頻度に分離された血清型O159株の遺伝子保有率は23% (1/43株, astA遺伝子保有) と低頻度であり, O血清型と遺伝子の保有状況との関連性の低い菌株が認められた.
    以上のことは病原因子関連遺伝子が検出された菌株を保有した症例は胃腸炎症状の有症率が明らかに高いことを示し, PCR法を用いて糞便由来大腸菌から病原因子関連遺伝子を検出することは, 臨床においてその菌が起因菌であるかどうかを決定するための有効な一つの手段となりうることが示唆された.
  • 若山 恵, 渋谷 和俊, 安藤 常浩, 高橋 啓, 大原関 利章, 直江 史郎, Walter F. COULSON
    2000 年 74 巻 4 号 p. 378-386
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    固形臓器移植症例における深在性真菌症の現況を知るために, 合併頻度や原因菌, 侵襲臓器などの検討を行った.
    深在性真菌症は全移植剖検例の21.0%に認められた. 移植臓器別では, 腎移植例が26.1%と真菌症の合併頻度が最も高頻度であり, 次いで肝移植例が25.0%と高かった. これに対して, 肺移植例は14.3%, 心移植例は13.2%と低率であった.
    また, 原因真菌は, アスペルギルス症が最も高い割合を占め, カンジダとの混合感染例を含めると, 深在性真菌症がみられた症例の70.6%にアスペルギルスによる感染巣が認められた. これに対してカンジダ症は, アスペルギルスとの混合感染例を含めても25.5%であった. さらに, 深在性真菌症の合併頻度を年次別にみると, 1992年以降は増加傾向を認めた. この増加傾向はアスペルギルス症の増加とほぼ一致していた. また, アスペルギルス症では全身性真菌症が高頻度に認められたものの, カンジダ症では消化管に病変が限局していた症例が多かった.
    これらのことから, アスペルギルス症に対する適切な予防と治療が, 固形臓器移植に合併した深在性真菌症に関する最大の課題と考えられた.
  • 常岡 英弘, 藤井 玲子, 藤澤 桂子, 飯野 英親, 石田 千鶴, 村上 京子, 塚原 正人
    2000 年 74 巻 4 号 p. 387-391
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    猫ひっかき病Diagostics (CSD) の血清学的診断法の一つであるBartonella感染診断キット, Bartonella IFA IgG, IgM (MRL Diagnostics) のCSD診断の有用性について自家製IFA法と比較検討した.
    本キットによる健常人110例のBartomlla henselaeに対するIgG抗体価は<1: 64が107例 (97.3%) で, 1: 256以上の高い例は認められなかった. またIgM抗体価は全例が<1: 20であった. IFA法 (自家製法およびキット) によるCSDの診断基準をIgG抗体価1: 256以上, ペア血清で4倍以上のIgG抗体価の上昇, IgM抗体価1: 20以上のいずれかを認めた場合とすると, 臨床的にCSDと診断された患者26例のうち, 自家製IFA法でCSDと確定診断した18例中15例 (83%), 診断できなかった8例中1例 (13%) が本キットで診断可能であり, その特異性は100% (110/110), 感度62% (16/26) だった. またB. henselaeBartonella guintanaの両菌種間に交差反応が認められた.
    本キットは簡便な方法であり, CSD診断に貢献するものと期待される.
  • 高山 直秀, 高山 道子
    2000 年 74 巻 4 号 p. 392-394
    発行日: 2000/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A neonatal varicella case confirmed early to be infected with varicella-zoster virus (VZV) using PCR analysis was reported. The mother devoloped an eruption on the following day the patient's birth and was diagnosed as varicella at 3 day of age. The neonate received immunoglobulin and acyclovir (17.5mg×twice). She was speculated to develop varicella on the 5 to 10 day of age.Eruptions were noted, however, on the 13 day of age, although she was confirmed to be infected with VZV using PCR on the 6 day of age, and her symptoms were much milder than that foreseen. Delay of development and mildness of her symptoms may be attributed to immunoglobulin and acyclovir given on the 3 day of age.PCR method was very useful in determining early that she was infected with VZV.
  • 2000 年 74 巻 4 号 p. 424
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
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