1994-1996年の3年間に, 世界各地から収集した
Vibrio cholerae non-O1 non-O139について, その分布を把握するためにそれらの血清型別を行い, さらにそれらの菌株のコレラ毒素 (CT) 遺伝子 (ctx) およびNAG-ST遺伝子の保有状況を検査し,
ctx陽性株についてはさらにCT産生性を調べた.また, 型別不明株を用いて新血清型の追加を試みた.供試した
V.cholerae non-O1 non-O139菌株1,898株は, R型の50株および型別不明の74株を除き128血清型に分けられたが, その血清型分布には地域および由来による明らかな相違は認められなかった.
型別不明株の中に38の新しい血清型 (O156-O193) を認め, 抗原構造表に追加した.
V.choleraeの免疫血清中にはR抗体がかなり含まれ, 実際の検査に用いる診断用抗血清はR菌株で吸収したものを使用しなければならない.
白糖非分解性, VP反応陰性菌株の中に, ルミネセンスを産生したものが見られたが, DNA相同性試験から何れも
V.choleraeと同定された.これまでVibrio mimicusと同定された菌株中に, ルミネセンス産生性V.choleraeが紛れ込んでいた可能性があり, 両菌種の同定においては必ず発光性を確認しなけれぼならない.
供試した1,898株中, CT遺伝子を保有し, CTを産生したものはわずか37株 (約2%) であった.しかしながら, 特に血清型O141菌株はCT産生株の割合が, 16株中10株 (約63%が陽性) と極めて高かった.今後, CT産生性のO141菌群によるコレラ様下痢症の動向に注目したい.
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