愛媛県松山市内にある小児科医院に来院し, 溶連菌感染症の診断を受けた患者より分離された菌株のうち, 2298菌株 (全分離菌株の98.5%) を用い, T型別, M型別, OFテストと, PCG, AMPC, CEX, TC, EMのMICの測定をした結果, 次の結論を得た.
1) T型別結果より同一菌型のMを推定する場合, 1, 4型菌についてはT1, 4型菌の5%がM1, 4型菌として型別できないのに対し, T12型菌の20%がM12型菌でない結果であった.
2) MutであるT12型菌株のうち, 30%はOF (+) の菌株であり, 明らかに異質の菌型と考えられた.
3) T12-28型を示す松山2166菌株を用いた免疫実験で, 松山2166菌型に特異的な抗体を検出し, それはM12, M28のいずれにも該当しなかった.
4) PCG, AMPC, CEXに対しては全菌株共感受性であったが, T4菌株はTC耐性, T12菌株はTC単独或いはTC-EMに耐性を示していた.
5) 1982年までEM耐性菌とされていた菌株は主としてM12型菌であり, この年の分離菌株数の減少を境として, EM感受性M12型菌株が増加した.
以上より共通抗原であるT抗原を指標としてA群溶連菌の型別を行う場合には, 常に他のM型菌のとり込みを予想し, 一定のリスクを考えて結果を考慮すべきであり, このリスクを減少させる為にOFテストを加えることも有効である.
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