感染症学雑誌
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61 巻, 12 号
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  • 低抗体価抗体保有者の検出とその意義
    岡山 昭彦, 橘 宣祥, 石崎 淳三, 横田 勉, 志々目 栄一, 津田 和矩
    1987 年61 巻12 号 p. 1363-1368
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HTLV-I感染後の抗体産生状況を明らかにする目的で, 宮崎県南西部居住者1,203名を対象とし, HUT102生細胞膜を抗原とする間接螢光抗体法 (膜抗原法) による抗HTLV-I抗体の測定を行ない, とくに低抗体価抗体保有者の検出を試みた.
    抗体価1: 4の低抗体価陽性血清は, 全陽性血清の12.4%(24/193) 認められた.これらの低抗体価抗体保有者の年齢別, 陽性者に対する割合は, 20歳未満で50%と最も高く, 加齢とともに低下し, 70歳代では最低であった.逆に抗体価1: 160以上の高抗体価抗体保有者の割合は, 若年者では0%で, 30歳以上で徐々に上昇する傾向を示し, 70歳代で最も高くなった.しかし40歳代のみは, 低抗体価抗体保有者の割合が高く, また高抗体価抗体保有者の割合が低い傾向を示し, 前後の年齢層と異なっていた.また抗体価の幾何平均値も, 30歳以上はそれ以下に比して有意に高値であった.
    低抗体価抗体保有者の特徴的な年齢分布は, 各年齢層の抗体価の変化とともに重要な所見であると思われた.
  • キャリアー血清抗体のRIP, SDS-PAGEによる解析
    岡山 昭彦, 橘 宣祥, 横田 勉, 石崎 淳三, 志々目 栄一, 津田 和矩
    1987 年61 巻12 号 p. 1369-1375
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトT細胞白血病ウイルスI型 (HTLV-I) に対する免疫応答, とくに抗体の産生状態を明らかにする目的で,[35S] システイン標識HUT102細胞を抗原とし, radioimmunoprecipitation, SDS-polyacrylamide gel electropheresisを用いて, 抗体価の異なる抗HTLV-I抗体陽性血清について検討した結果, 以下の成績をえた.
    抗体陽性血清で特異抗体の産生が確認されたウイルス蛋白は, 主として, gp61, p55, gp45, p42, p24, p19であった.これらに対する抗体の反応の程度を泳動パターンの濃さで比較すると, gp61>gp45>p55, p24>p19の順で強かった.
    ウイルス蛋白別に抗体の検出頻度をみると, 抗体価の低い血清では, gp61やgp45などのエンベローブ蛋白に対する抗体が主に検出され, 抗体価の高い血清では, これらに加えてp55, p24, p19などのコア蛋白に対する抗体が検出された.特に抗gp61抗体は, ほとんどすべての血清に検出され, そのバンドの濃さは各血清の抗体価によく平行していた.
    一方pX遺伝子産物であるp42に対する抗体では, そのバンドの検出頻度や濃さと抗体価の間に一定の傾向が認められず, 抗体産生の過程において上記のウイルス構成蛋白の場合とは異なる要因の関与が推測された.
  • 所 光男, 長野 功, 後藤 喜一, 渡辺 実
    1987 年61 巻12 号 p. 1376-1381
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌を培養時間24時間でより選択的に検出できる選択分離培地を改良するための基礎実験を黄色ブドウ球菌33株, その他22菌種51株を用いて行った.その結果, 塩化ナトリウムの濃度を5%に下げ, 選択剤としてグリシン0.3%, 塩化リチウム0.5%, 硫酸ポリミキシンB0.001%を加え改良したEPGS培地は, 従来我が国で常用されている卵黄加マンニット食塩 (MSEY) 培地, エッグヨーク食塩寒天培地に比べ, Bacillus subtilisの抑制力が強く, 黄色ブドウ球菌に対する発育支持力も優れていた.健康者糞便, 食中毒患者糞便からの黄色ブドウ球菌の検出をEPGS培地, MSEY培地を用い比較した結果, EPGS培地では健康者糞便の27.4%(146/533), 食中毒患者糞便の100%(10/10) から黄色ブドウ球菌が検出された.しかしながら, MSEY培地では健康者糞便の11.8%(63/533), 食中毒患者糞便の80%(8/10) から検出されただけであった.しかも, 24時間の培養の時点で比較すると, EPGS培地では食中毒患老糞便10検体総てに卵黄反応が形成され黄色ブドウ球菌として鑑別できたが, MSEY培地では全く卵黄反応が形成されず鑑別できなかった.
  • 林 泉, 大沼 菊夫, 庭田 寧, 平井 敬二, 鈴江 清吾, 入倉 勉
    1987 年61 巻12 号 p. 1382-1394
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    呼吸器科領域におけるNorfoxacinとFosfomycinの併用について基礎的, 臨床的に検討した.
    1. 呼吸器由来P.aeruginosaでは76.5%(26/34), メチシリン耐性ブドウ球菌では60.9%(14/23) に相乗効果がみられた.
    2. NFLXに100μg/ml, FOMに600μg/mlのMICを示したP.aemginosa1株のFIC indexは0.06であった.
    3. 臨床効果は有効15例, やや有効1例で有効率は93.8%であった.
    4. 16例から分離された25株中24株が併用により消失した.P.aeruginosaは9株中8株が消失し, 他のH. influenzae (6株), S. aureus (6株), S. pneumoniae, S. pyogenes, K. pneumoniae, Flavobacterium sp.各々1株は全て消失した.
    5. 副作用および臨床検査値異常はみられなかった.
    呼吸器科領域において, NFLXとFOMの併用は有用と考える.
  • 子宮内膜の微細構造の変化について
    関口 和夫, 岡田 淳, 野崎 清恵, 松田 静治
    1987 年61 巻12 号 p. 1395-1400
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Bacteroides fragilisにごよる子宮内感染症の家兎モデルにおいて, 子宮内膜の微細構造の変化を電顕で検討した.
    透過型電顕像では菌接種後2日ですでに, 内宮内膜の微絨毛の配列が乱れ, 内膜上皮細胞に接して多数のマクロファージや多核白血球が出現し, 菌を貪食しているのが観察された.菌接種後6~7日には子宮内膜は変性し壊死状になり, 破壊された内膜上皮細胞の間に菌が散在していた.さらに菌接種後10日になると炎症は子宮筋層にまで進展し, 子宮内膜や筋層では多核白血球やリンパ球を主体にした細胞浸潤が著明であった.透過型電顕像では子宮内膜や筋層中に菌の存在を証明することはできなかったが, 螢光抗体染色法により子宮内膜組織内部に菌の存在を確認した.
    走査電顕像では子宮内膜表面への菌の定着の様子が観察された.菌体表面の構成成分であるグライコカリックスが菌体どうしを結びつけてマイクロコロニーの形成を促し, また子宮内膜表面に菌が定着するのに寄与していることが観察された.
  • MDCK凍結保存細胞を用いたインフルエンザウイルスの分離
    中村 和幸, 西沢 修一, 松岡 伊津夫
    1987 年61 巻12 号 p. 1401-1405
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウイルス分離の省力化と即時対応を容易にするため, 凍結保存細胞へ直接検体を接種する方法を検討し, 以下の成績を得た.
    1) MDCK細胞は, 低温保護剤としてDMSOを使用した場合,-80℃保存で6ヵ月後も95%以上の生存率を示した.
    2) MDCK凍結保存細胞はインフルエンザウイルス標準株に対して高い感受性を示した.
    3) 患者検体からのウイルス分離においてMDCK凍結保存細胞は単層培養細胞に劣らない成績を示した.
    4) 凍結保存細胞をウイルス分離に用いることにより, 即時対応が可能となると同時に, 細胞培養の設備や経験のない検査室でも容易にインフルエンザウイルスの分離を行うことができる.
  • モノクローナル抗体 (メイアッセイ緑膿菌) を用いた間接蛍光抗体法による喀痰内緑膿菌の証明
    渋谷 直道, 河野 茂, 重野 芳輝, 山口 恵三, 斉藤 厚, 原 耕平, 餅田 親子, 菅原 和行
    1987 年61 巻12 号 p. 1406-1414
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    早期病因診断法として, 緑膿菌群別用モノクローナル抗体を使用した間接蛍光抗体法 (以下, IFA) にて, 喀痰中の緑膿菌の検出を試みた.あらかじめ凝集反応により血清型を確認した緑膿菌を用いて, 対応する群別用モノクローナル抗体液 (メイアッセイ緑膿菌, 明治) の抗体価をIFAにより測定し, 更に, 緑膿菌陰性の喀痰に種々の濃度の菌液を混和してIFA染色を行い, 観察可能な喀痰中緑膿菌の菌量を求めた.次いで1986年3月に長崎大学附属病院検査部に提出された喀痰から, atrandomに131検体を抽出し, IFA染色を行い, 喀痰中の緑膿菌を観察した.
    IFAにより測定した各群抗体液の抗体価は血清型により異なり, 4~200倍の間に分布した.また, IFAによる菌の検出には, 喀痰中に106CFU/ml以上の緑膿菌の存在が必要であるとの結果が得られた.喀出痰のIFA染色では, 通常の分離培養 (定量培養) にて1×106CFU/ml以上の緑膿菌が分離された36検体のうち27検体 (75%) がIFA陽性を示し, このうち1×107CFU/ml以上の18検体では15検体 (83%) が陽性となり, また, 分離された菌量とIFAにて観察された菌数とは相関がみられた.培養陰性の86検体中, 82検体 (95%) はIFAも陰性であった.
    本検査法は, 数時間以内に喀痰中緑膿菌の存在と菌量の推定が可能であり, 緑膿菌性呼吸器感染症の疑われる症例に対し有力な迅速診断法として利用できる.
  • 升田 隆雄
    1987 年61 巻12 号 p. 1415-1419
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    医療従事者におけるHBV感染について長期観察を行った.昭和50年から昭和60年までの当院職員のHBs抗原・抗体定期検査の成績を分析すると, 前年度陰性者のHBs抗体・抗原の自然陽転率 (感染率) は昭和51年医療職3.3%, 非医療職2.5%であったが, 昭和60年には1.0%, 0%と共に著明な低下傾向がみられた.これは院内感染防止対策の成果のみならず抗HBグロブリン投与の影響, および一般社会生活における感染機会の減少によると考えられる.年間平均感染率は職種別には外科系医師が最も高く1.9%, 内科系医師0.9%, 看護婦・看護助手1.7%, 検査科職員1.0%, 事務職員1.0%であった.看護婦の配置別では外来4.8%, 手術室2.9%, 産科病棟2.2%, 外科系病棟1.2%, 内科系病棟1.1%であり, carrier患者の認識困難な外来勤務が有意にhigh riskであった.またこれらの傾向は感染率の低下した最近の2年間においても変らなかった.
  • 稲積 温子, 村井 貞子
    1987 年61 巻12 号 p. 1420-1428
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    愛媛県松山市内にある小児科医院に来院し, 溶連菌感染症の診断を受けた患者より分離された菌株のうち, 2298菌株 (全分離菌株の98.5%) を用い, T型別, M型別, OFテストと, PCG, AMPC, CEX, TC, EMのMICの測定をした結果, 次の結論を得た.
    1) T型別結果より同一菌型のMを推定する場合, 1, 4型菌についてはT1, 4型菌の5%がM1, 4型菌として型別できないのに対し, T12型菌の20%がM12型菌でない結果であった.
    2) MutであるT12型菌株のうち, 30%はOF (+) の菌株であり, 明らかに異質の菌型と考えられた.
    3) T12-28型を示す松山2166菌株を用いた免疫実験で, 松山2166菌型に特異的な抗体を検出し, それはM12, M28のいずれにも該当しなかった.
    4) PCG, AMPC, CEXに対しては全菌株共感受性であったが, T4菌株はTC耐性, T12菌株はTC単独或いはTC-EMに耐性を示していた.
    5) 1982年までEM耐性菌とされていた菌株は主としてM12型菌であり, この年の分離菌株数の減少を境として, EM感受性M12型菌株が増加した.
    以上より共通抗原であるT抗原を指標としてA群溶連菌の型別を行う場合には, 常に他のM型菌のとり込みを予想し, 一定のリスクを考えて結果を考慮すべきであり, このリスクを減少させる為にOFテストを加えることも有効である.
  • 斎藤 厚, 朝長 昭光, 門田 淳一, 平谷 一人, 福島 喜代康, 森 賢治, 重野 芳輝, 河野 茂, 広田 正毅, 原 耕平, 朝野 ...
    1987 年61 巻12 号 p. 1429-1442
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    食細胞内増殖菌であるLegionella pneumophilaの特性をヒト好中球および単球を用いて検討した.L.pneumophila serogroup 1 (80-045株) は, E.coliに比較して, 好中球, 単球に貪食されにくく, 抗体と補体の両者の存在下ではじめて良好な貪食能がみられるようになった.しかし, 殺菌されにくく, 特にモルモットを通過せしめたvirulent株は人工培地で継代したavirulent株よりも抵抗性であった.E.coli貪食時にみられるような活性酸素産生は, Legionella貪食時にはほとんどみられなかった.接種菌量の増加や抗体の添加によっても活性酸素の産生量の増加は, Legionellaの場合はほとんどみられず, avirulent株の大量接種の場合のみ活性酸素の産生量がわずかに増加した.特異抗体存在下に好中球が貪食した上記三種の菌株の電顕的観察では, いずれの菌もphagosome内にとりこまれていたが, E.coliやavirulent株の場合はphagosome膜と菌との間隙は広く, 中に1~数個の菌を認め, またphagosome膜に密着して, multivesicular typeのlysosomeが明瞭に観察された.Virulent株ではphagosome膜と菌との間隙は狭く, ほとんど1個の菌しかみられず, またphagosome周辺にはミトコンドリアや種々の形のlysosome穎粒が観察された.Phagosomeとlysosomeのfusionを示唆する像はE.coliの場合が最も良く観察され, 次いでavirulent株でも頻度は少なかったが, 同様の所見がみられた.しかし, virulentの株ではこのような像をほとんどみることができなかった.以上の成績をまとめると, Legionellaは食細胞に貪食されにくいが, 抗体と補体の存在下では貪食されるようになる.好中球に極めてわずか殺菌されるものの単球では全く殺菌されず, E.coli貪食時にみられる活性酸素の産生もほとんどみられない.貪食後のphagosomeとlysosomeのfusionも抑制されていた.このように, 食細胞の殺菌構造の作動をLegiomllaが抑制している現象が観察されたが, その詳細なメカニズムについては今後の検討が必要である.
  • 渡辺 邦友, 金沢 照子, 加藤 直樹, 上野 一恵, 石井 康夫, 永井 英男, 野末 源一, 石井 美代, 村上 康弘, 田所 一郎
    1987 年61 巻12 号 p. 1443-1446
    発行日: 1987/12/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    膣Candida症の治療, 経過中に近年Bacterial Vaginosisとの関連が問題視されているAnaerobic curved rodsが腟内容物からCandida albicansとともに分離された1例を報告した.症例は24歳, 女性, Intrauterine Device使用歴がある.昭和61年6月帯下増量のため受診してきた.帯下の細菌学的検査では, Neisseria gonorrhoea, Chlamydia陰性で, Candida albicansGardnerella vaginalisが分離された.9月に膀胱炎のFollow upのための受診時の腟内容物からC.albicansとともにAnaerobic curvedrodsすなわちMobiluncus curtisii subsp. holmesiiが分離された.
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