感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
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93 巻, 2 号
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原著
  • 網野 かよ子, 遠藤 和夫, 河本 まゆみ, 植田 貴史, 中嶋 一彦, 一木 薫, 和田 恭直, 竹末 芳生
    原稿種別: 原著
    2019 年 93 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/12/11
    ジャーナル フリー

    【背景】阪神地区における薬剤耐性腸内細菌科細菌の検出状況と抗菌薬感受性の検討を行った.
    【方法】9病院におけるextended spectrum βlactamase(ESBL) 産生菌,Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae カルバペネム分解酵素産生腸内細菌科細菌(CPE)とCarbapenem-resistant Enterobacteriaceae カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE,ただし本検討ではカルバペネム分解酵素産生カルバペネム耐性腸内細菌科細菌を除いた細菌)の検出状況について2014年~2015年の分離株を,市中発生,市中医療関連発生,病院発生に分類し検討した.
    【結果】総グラム陰性桿菌22,241株中,ESBL産生菌検出率は7.1% で2010年~2011年に行った同様の調査の3.5%と比較すると倍増していた.CPEは0.4%,CREは1.0%であった.ESBL 産生菌全1,577株中Escherichia coliは1,278株でESBL産生菌全体の81%を占め,CPEは全78株中46株がKlebsiella pneumoniaeで59%を占めた.CREはEnterobacter属が高率であった.E.coliにおいてESBL産生菌の占める割合は20.6%,K. pneumoniaeにおいては8.9% がESBL産生菌であった.ESBL産生菌は,市中発生がCPE,CREと比較し有意に高率で,市中医療関連発生は,CPEより高率の傾向,CREより有意に高率であった.ESBL産生菌の感性率はmeropenem(MEPM),cefmetazole(CMZ),tazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC),amikacin (AMK)が高率であった.CPEはAMK,TAZ/PIPCに対し高い感性率を示し,CREではこれらに加えlevoloxacin(LVFX)にも高い感性率を示した.CPEのimipenem(IPM)に対する感性率は94.3%,MEPMに対しては15.5%,一方CREのIPMに対する感性率は15.0%,MEPMに対しては72.7% とCPEとは逆にIPMに低い感性率,MEPMに比較的高い感性率を示した.
    【結論】CPEの検出は未だ低率であったが,ESBL 産生菌はこの4年間で増加した.CREはほとんどEnterobacter属であり,複数の抗菌剤に比較的高い感性率を示した.CPEは使用可能な抗菌剤も限られ,院内感染対策上,より厳密な対策が必要であると考えられた.

  • 武藤 義和, 加藤 康幸, 早川 佳代子, 忽那 賢志, 片浪 雄一, 大曲 貴夫
    原稿種別: 原著
    2019 年 93 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/12/11
    ジャーナル フリー

    インフルエンザは地域毎に流行状況が異なり,渡航者によって国内に持ち込まれる輸入感染症としての側面も持ち合わせている.近年,パンデミックインフルエンザ対策の重要性が指摘されているが,渡航者による国外からのインフルエンザの持ち込みについては基礎的なデータが不足している.今回,2012年4月1日から2016年3月31日の期間に海外でインフルエンザに罹患し日本へ入国・帰国した患者の臨床的特徴を検討した.症例は56例(男性27例,女性29例),平均年齢は37.8歳(±17.7歳),A型インフルエンザと診断されたのは44例であった.49例が日本人,7例が外国人であった.推定感染地域は44例がアジアであり,うち半数が東南アジアであった.次いで,アフリカ(6例),中南米(3例)であった.観察期間中に我々の外来に発熱もしくは気道症状を呈して受診した渡航者の4.2%がインフルエンザであり,発熱もしくは気道症状を呈し受診する渡航者における地域別のインフルエンザ発生率は,アジア5.1%,中南米4.2%,ヨーロッパ2.6%,北米2.4%,アフリカ2.3%,オセアニア1.8%と,特にアジアからの入国者では高い傾向にあった.発症時期は8月が15例と最多であり,1~3月と6~8月の二峰性に患者数のピークを認めた.アジアでインフルエンザに罹患した渡航者がすべての月において半数以上を占めていた.鳥インフルエンザが疑われる接触歴を有する患者や重症の呼吸不全を認める患者は認めなかった.日本において非流行期であっても,発熱や気道症状などのインフルエンザ様症状を認める場合には,積極的に本疾患を疑い早期発見に努め,感染拡大を防止することが肝要であると考えられた.

症例
  • 日野 葵, 清水 秀文, 佐々木 篤志, 小島 弘, 堀江 美正, 溝尾 朗
    原稿種別: 症例
    2019 年 93 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/12/11
    ジャーナル フリー

    A 71-year-old woman who was being treated for dermatomyositis with a corticosteroid developed multiple lung nodules. A biopsy from the right middle lung lobe revealed a lung adenocarcinoma harboring the EGFR mutation. During chemotherapy with gefitinib, she suddenly presented with acute respiratory failure. Chest computed tomography did not reveal any abnormalities other than pulmonary nodules, which are signs of metastasis of lung cancer, so we could not determine the cause of respiratory failure. She died within four days after the onset of respiratory failure. An autopsy revealed pulmonary cryptococcosis consisting of multiple lung nodules and intracapillary cryptococci in multiple organs, in addition to the right middle lobe lung adenocarcinoma accompanied with bone metastasis. Intracapillary cryptococci are a rare pathological condition resulting from disseminated cryptococcosis. Intracapillary cryptococci could lead to acute respiratory failure by obstruction of pulmonary capillaries, and would be difficult to diagnose using computed tomography.

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