背景:2008年度から暫定的に5年間,「第4期」麻疹風疹ワクチン接種が高校三年生(相当年齢)に対し実施された.本論文では,全国から抗体測定依頼の血清が集まる臨床検査センターの検査結果を使い,出生コホート別の抗体保有率の年次推移を調べて,接種対象群(1990~1994年度生まれ)の免疫状況の変化を知ろうとした. 方法:抗体データは主として医療系学生・医療従事者での免疫抗体測定検診のもので,採血日が2007年10月~2016年9月で年齢が17~35歳であった被検者のものである.風疹抗体は赤血球凝集抑制(hemagglutination―inhibition;HI)試験,麻疹抗体は酵素免疫測定法(enzyme immunoassay;EIA)で測定した.集計年度(前年10月1日から当年9月30日まで)ごとの年齢別抗体保有率を計算した. 結果:1)抗体データには生年月は記載されていないので,出生コホート別の抗体保有率は計算できない.しかし,ある年齢群の抗体データを上記の集計年度で算出した保有率は,その年度における特定出生コホートのデータの75%を反映する値である.これをその出生コホートの「近似」抗体保有率とし,出生コホート別の近似保有率の年次推移グラフを描いた.2)風疹HI抗体価≧8での近似保有率は接種対象群で90%以上へと上昇し,維持されていた.一方,HI価≧32での近似保有率は上昇後に経年低下した.しかし1987年の風疹全国流行を経験した出生コホートでは保有率は相対的に高く維持されていた.3)麻疹EIA抗体価≧4Uでの近似保有率は接種群で95%以上へと上昇したが,抗体価≧16Uでの近似保有率は上昇後に経年低下した. 結論:第4期ワクチン接種対象群の抗体保有率は上昇したが,産生された抗体価は高くなく,その減弱も短期間に起こっていた.一方,過去に自然感染を受けた出生コホートの抗体価は高く維持されていた.成人集団での免疫力の変化を追跡するのに,臨床検査会社の大量の検査データを使い,高低2つの抗体陽性カットオフ値での出生コホート別の近似抗体保有率を調べていくことは有用であろう.
2013年から2015年に収集した国内HIV-1陽性89検体と市販の抗HIV-1/2抗体陽性パネルに含まれる34検体を用いて,HIV-1とHIV-2それぞれのウエスタンブロット診断薬であるラブブロット1とラブブロット2の性能とHIV-1/2陽性検体に対する交差反応性について評価を行った.ラブブロット1を用いた国内HIV-1陽性検体の検出に大きな問題はなく,Envのバンドだけを用いるWHO基準に比べ,Envのバンドに加えGag p24のバンドも用いるCDC基準に従うと,HIV-1陽性と判定できる例が95.5%から98.9%に増加した.一方ラブブロット2との交差反応を検討した結果,添付文書に記載の判定基準では12検体がHIV-2陽性と判定されHIV-1/2鑑別不能となったが,WHO基準ではこれらはすべてHIV-2判定保留となった.抗HIV-1/2 抗体陽性パネル検討の結果,ラブブロット1で測定しWHO基準で判定した場合に比べ,CDC基準で判定した場合にHIV-1陽性検体の検出感度は46.2%から84.6%に高まったが,HIV-2陽性13検体中6検体(46.2%)がHIV-1も陽性と判定されたため,HIV-1/2鑑別不能となった.我が国におけるHIV流行の状況を考えると,確認検査法としてまずラブブロット1を用い,ラブブロット1陰性又は判定保留で,HIV1核酸増幅検査が陰性の場合,HIV-2感染リスクも考慮した上でラブブロット2を用いて確認検査を行うことが推奨されるが,ラブブロット1とラブブロット2を並行して使用する検査フローで,ラブブロット1/2 をHIV-1/2鑑別診断の目的で使用する場合は,WHO 基準を用いるのが望ましいと思われる.
We, herein, reported a case of travelerʼs diarrhea due to extended spectrum β―lactamase (ESBL) producing Shigella sonnei returning from Cambodia. A 28-year-old female, mild diarrhea without blood appeared on the final day of traveling for 8 days. Although physical findings and blood tests were normal, ESBL producing S. sonnei was detected from stool culture, and antibiotic therapy with MEPM (1g three times a day) was performed. ESBL producing bacteria seriously spread in Enterobacteriaceae, and the transfer of ESBL production to Shigellosis is also concerned. Clinical efficacy of antibiotic therapy for infections due to ESBLproducing Shigella spp. in Japan is insufficient and current case is considered to be meaningful.
We report herein on the case of a 54-year-old Japanese male diagnosed as having Rickettsia disease based on the detection of Rickettsia japonica in the blood crust from the biopsy scar of an eschar. In late September 2016, the patient suffered from a 39℃ fever and visited a hospital. He had an eschar on the right abdomen and a rash present over the whole body. Blood tests showed thrombocytopenia, severe inflammation,and mild liver dysfunction. A real-time PCR procedure detected Rickettsia japonica DNA in the blood crust from the biopsy scar of the eschar, suggesting Japanese spotted fever. He recovered well from the disease with the administration of minocycline and ciprofloxacin. The PCR detection of R. japonica DNA in the blood crust from a biopsy scar of an eschar can be a sensitive method for the early diagnosis of Rickettsia disease.