感染症学雑誌
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66 巻, 3 号
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  • 小林 真澄
    1992 年66 巻3 号 p. 297-301
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B群溶連菌 (以下GBSと略) 感染症は, 一般に生後6日までに発症した早発型と, 生後7日以後に発症した遅発型に分類され, 早発型は周産期の垂直感染, 遅発型は水平感染によるものではないかといわれている. しかし遅発型においても垂直感染後の持続保菌により遅発型発症となる可能性が十分考えられる. この持続保菌について, マウス新生仔を用いた実験を行った. 日齢1日のマウス新生仔の腹腔にGBSIa型, およびGBSIII型菌をLD50に相当する103CFU/m1接種し, その後2日, 5日, 8日, 10日の各日数毎にマウスの肝, 脾, 肺, 脳の各臓器10mgあたりの生菌数を測定した. III型菌では各臓器ともに102~103CFU/mlの生菌数が確認されたが, Ia型では72検体中, 肝で1検体, 脳で1検体検出されたのみであった. 以上のことより, GBSIII型菌による新生児GBS感染症では, マウスによる実験で持続保菌の見られたことから, 出生時の垂直感染であっても, ある期間を経過してhostparasiteのバランスの関係から, 遅発型発症する可能性が示唆された.
  • 正木 孝幸, 永田 邦昭, 中村 信一
    1992 年66 巻3 号 p. 302-305
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床材料より分離されたC. absonumの2株と標準株の芽胞耐熱性, 生化学的性状, 本菌産生レシチナーゼに対する抗C. perfringens α毒素抗血清による中和反応ならびに本菌の同定に市販簡易キットが使用できうるか検討し以下の知見を得た.
    1. 臨床材料より分離されたC. absonumは70℃10分間加熱に耐性で, 標準株は85℃10分間加熱までは耐性であったが, 対照のC. perfringensより弱かった.
    2. C. absonumはトレハロース, メリビオースおよびラフィノースの発酵性ならびにエスクリンおよびスターチの加水分解性でC. perfringensと鑑別可能であった.
    3. C. absonumのレシチナーゼは抗C. perfringens α毒素抗血清で完全な中和はできなかった.
    4.RapID ANA並びにANIDENTの簡易同定キットはC. absonumの同定には使用出来なかった.
  • その臨床および発生パターンの検討
    宇都木 敏浩, 太田 直樹, 中野 正幸, 笠原 浩一郎, 高田 伸弘
    1992 年66 巻3 号 p. 306-313
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    群馬県のツッガムシ病は従来から榛名山北面で多発が知られていたが, 1990年11~12月に同榛名山南面の烏川流域の河岸段丘に広がる農地で7例のツッガムシ病患者を確認した. 当地域での発生報告はそれまで知られないため, その臨床面に加え疫学的な分析も試みた.
    症例は男6名, 女1名, 年齢は25~81歳にわたる. 全例とも農作業の後に発症し入院となる. 初診時に, 全例でリンパ節腫脹と刺口を認め, 発疹は6例に認めた. 検査では, 軽度の肝障害, 好酸球の消失と異型リンパ球出現を認めた. 治療では, ミノサイクリンが奏効した. リケッチア特異抗体は, 免疫ペルオキシダーゼ法にて早期に検出できKarp株抗原に最もよく反応した. 患者1例より分離されたリケッチア株もKarp型に近似した.
    これを契機に, 県内住民における本病罹患率を各自治体別の人工10万人当たり, あるいは農林業人口密度への比例で試算してみると, 榛名山麓の全域はもとより, 県内の農山村部全般において本病の潜在的な発生が示唆された. そして, 県内では秋に患者が集中し, 特に10・11月の平均気温と患者発生数に高い相関が認められたが, 1990年秋の平均気温は最近6年間で最高であって, 患者数も最多を示したものであった. 当地域で本病が集中発生した理由はこれらの点にあると思われた.
  • 柴田 宏, 住 勝実, 三村 幸一, 松岡 瑛, Shiba K RAI, 中西 守
    1992 年66 巻3 号 p. 314-318
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Immune status of apparently healthy Nepalese against hemolytic streptococci was studied by measuring antibodies to various streptococcal antigens such as streptolysin-O (SO), streptokinase (SK), deoxyribonuclease-B (DN-B) and streptococcal polysaccharide (SP). The normal range of anti-streptolysin-0 (ASO), anti-streptokinase (ASK), anti-deoxyribonuclease-B (ADN-B) and anti-Streptococcus polysaccharide (ASP) was 60-480 (T. U.), 40-1024 (titer), 60-1280 (titer) and<2-128 (Unit), respectively. No difference was observed between the two sexes. ASO and ADN-B were measured by the neutralization method. Passive hemagglutination (PHA) was used to measure ASK and ASP. These values were 2-3 fold higher than those obtained on the Japanese subjects.
  • III. ヒト呼吸器コロナウイルス
    松本 一郎, 川名 林治
    1992 年66 巻3 号 p. 319-326
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児急性呼吸器感染症の病原ウイルス学的サーベイランスにおいて, 5株のヒト呼吸器コロナウイルス (HRCV) が, L132細胞で, 分離された. これらの5株中3株は, 1979年3月29日に久慈市で採取されたインフルエンザ様疾患患者の鼻咽頭ぬぐい液から分離され, HRCVがインフルエンザ様疾患の一因となっている可能性を示した.
    他の2株は同年3月16日と4月27日に盛岡市で採取した無熱性上気道炎患者の鼻咽頭ぬぐい液から分離された.
    これらの5株は, 形態, BUDR耐性, chloroform感受性, またL132細胞での電顕的増殖像など, 典型的なHRCVの性状を示した. また抗HRCV (229E) 血清を用いた蛍光抗体法により, これらを229E関連HRCVと同定した. これらは, 本邦初の, HRCV分離例と思われる.
    各株に対する抗血清の中和抗体価を50%plaquereductiontestで比較した. 分離株に対する抗HRCV (229E) 血清の中和抗体価は, HRCV (229E) に対する値よりも40~100倍低値であった. 分離株間には著しい抗原性の差は見られなかった. またplaque形成能においても, 5株の分離株はHRCV (229E) と異なっており, HRCV (229E) 関連ウイルスは, 抗原性においても, plaque形成能においても, 多様な株が侵襲していることを示した.
  • 松下 秀, 山田 澄夫, 稲葉 美佐子, 楠 淳, 工藤 泰雄, 大橋 誠
    1992 年66 巻3 号 p. 327-339
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980~1989年の最近10年間に, 東京においてヒトから分離された輸入症例よりの海外由来, 及び国内由来のサルモネラ計6,816株について, その血清型と薬剤耐性の面から比較検討した.
    血清型別の結果, 供試サルモネラは22の0群, 156種の血清型 (海外由来125, 国内由来112血清型) に分類された. 主要血清型は, 海外由来株ではAnatum, Derby, Blockley, Agona, Typhimuriumなど, また国内由来株ではLitchfield, Typhimurium, Hadar, Infantis, Thompsonなどであった.
    CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM, NFLXの9種薬剤に対する耐性試験の結果, 海外由来株で2,628株中739株 (28.1%), 国内由来株で4,188株中1,047株 (25.0%) が供試薬剤のいずれかに耐性であった. 年次別に耐性菌の出現頻度をみると, 両由来株とも1980~1983年までは20%以下と低率で推移したが, 以後, 毎年上昇傾向を示し, 1989年には40%以上が耐性であった.
    10年間に30株以上検出された主要血清型別に薬剤耐性菌の出現状況をみると, 海外由来株ではHadar (96.3%), Blockley (92.0%), Typhimurium (75.7%), Kentucky (64.1%), Krefeld (59.3%), Panama (58.3%), 国内由来株ではHadar (97.5%), Blockley (57.4%), Litchfield (44.6%), Enteritidis (44.4%), Muenchen (42.2%), Typhimurium (40.9%) の順で高率であった.
    薬剤耐性菌の耐性パターンは, 50パターンと多彩であったが, その主要なものは海外由来株でTC・SM, CP・TC・SM・KM, TC単剤, CP・TC・SM・KM・ABPC, SM単剤, 国内由来株でTC・SM, TC単剤, TC・SM・KM, SM単剤, CP・TCであった.
    1988~1989年に分離された海外由来の薬剤耐性菌の170株を対象に検討した接合伝達性Rプラスミドの保有率は12.4%であった.
  • 斉藤 香彦, 新垣 正夫, 高橋 正樹, 工藤 泰雄, 伊藤 武, 大橋 誠, 森田 盛大, 斉藤 志保子, 船橋 満, 石原 政光, 小林 ...
    1992 年66 巻3 号 p. 340-348
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    国際カンピロバクター血清委員会が統一法の基礎とすると決めたLiorの型別法の標準菌株26種を選び, これらにLiorの型別法には含まれない4種のTCKシステムの標準株を加え30種の型の型別用因子血清とスクリーニング用プール血清を作成した. そしてそれらを用い下痢症由来分離株の型別を行った.
    C. jejuniによる集団下痢症23事例由来の654株については, 603株 (92.2%) が型別され, 51株 (7.8%) が型別不能であった. 型別された603菌株の内570菌株は単一の因子血清と反応したが, 2事例から検出された27菌株は2種の因子血清と, 1事例由来株の6菌株は3種の因子血清と反応した.
    散発下痢患者から検出された1,198菌株を対象に型別を行ったところ, 883菌株 (73.7%) が型別され, 298菌株 (24.9%) が型別不能, 17菌株がR型でスライド凝集反応に供試できなかった. 型別された菌株の内113菌株は2種以上の因子血清と反応した. 高頻度にみられた血清型はLIO4, TCK1, LIO2, LIO11, TCK12, LIO1などであった.
    今回作成した30種の抗血清は充分実用価値があると考えられた.
  • 根ケ山 清, 寺田 総一郎, 木内 洋之, 稲岡 義宣, 河西 浩一
    1992 年66 巻3 号 p. 349-353
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    著者らは, 内視鏡自動洗浄消毒装置を介しての非定型抗酸菌による内視鏡ファイバースコープの汚染を経験した. そこで, 内視鏡及び自動洗浄消毒装置の抗酸菌汚染に関する検査と分離抗酸菌に対する消毒剤の殺菌効果について検討した.
    1. 各種内視鏡ファイバースコープや自動洗浄消毒装置の抗酸菌検査により非定型抗酸菌Mycobacterium chelonae subsp. abscessusが高率に検出された.
    2. 分離抗酸菌に対するグルタルアルデヒドの感受性試験から常用濃度の2%溶液では十分な殺菌効果が得られなかった.
    3.3%グルタルアルデヒド溶液を使用した洗浄消毒法に変更し, 自動洗浄消毒装置自体の消毒過程を加えることにより抗酸菌の汚染は消失した. 内視鏡の洗浄に自動洗浄消毒装置を使用する場合, 抗酸菌の汚染に十分注意する必要があることを示した.
  • 志喜屋 孝伸, 座覇 修, 新村 政昇, 池間 稔, 中村 博, 仲吉 朝邦, 上地 博之, 金城 福則, 斎藤 厚, 大湾 朝尚, 山城 ...
    1992 年66 巻3 号 p. 354-359
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mebendazole (MBZ) による糞線虫症治療の長期の駆虫結果は下記のとおりであった. なお, 1と2は治療終了2年後, 3から7までは8~15ヵ月後の駆虫率である. MBZ (100mg) は1から5までは錠剤を粉末にし, 6と7は錠剤のままで, 1回1錠, 1日2回経口投与した.
    1. MBZの28日間連続投与群: 93.8%(15/16).
    2. Thiabendazole (500mg) を1回1錠, 1日3回の5日間投与後, MBZを9日間投与し, その2コース繰り返し群: 100.0%(16/16).
    以下同様に,
    3. MBZ5日間の4コース投与群: 87.1%(27/31).
    4. MBZ5日間の3コース投与群: 100.0%(7/7).
    5. MBZ4日間の4コース投与群: 96.3%(26/27).
    6. MBZ4日間の4コース投与群: 89.6%(43/48).
    7. MBZ4日間の2コース投与群: 69.2%(9/13).
    本研究施行中に肝障害が出現したため, 上記のように投与量を減上じた方法へと変更していったが, 3日間の休薬期間を置いた4日間の2コース投与でも25%に肝障害が出現した. 長期駆虫効果については1~6まではほぼ満足すべき成績であったが, 7はやや劣る成績であった.
    副作用, 検査値異常を勘案すると, 本剤で糞線虫症治療を行う場合には, 4日間の3コースあるいは3日間の3~4コースを各コース間に1~2週間の休薬期間を置き, 肝機能に注意しながら投薬する必要があると思われる.
  • わが国での最初の報告及び文献的考察
    滝上 正, 丸山 光雄
    1992 年66 巻3 号 p. 360-366
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    緑膿菌による毛包炎はwhirlpoolなどの水施設の利用を契機として多発することにより認められた新しい疾病単位で, 緑膿菌のなかでも血清型0-11によることが多いといわれている. 又, 本症は日和見原因菌としての緑膿菌のほかに, 免疫能の正常な健康人に多発する本菌の原発性原因菌としての意義をあらためて問い直させる事実でもある.
    我々は0-11 (E群) による幼少児の緑膿菌性毛包炎の小多発例, 及び0-6 (G群) による幼児の単発例を確定しえたので, ここにその疫学, 臨床像などの概要を報告したい. 本報告は本邦における緑膿菌性毛包炎の最初の報告であり, あわせて文献的考察をも試みた.
  • 臨床例, 家兎実験例について
    稲垣 正義
    1992 年66 巻3 号 p. 367-375
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    全身性カンジダ症6例と, カテーテル誘起性一過性カンジダ血症2例の計8例のカンジダ血症例につき4種の血清学的または生化学的補助診断法であるHAテスト, カンジテック, D-アラビニトール測定, EndospecyとToxicolorを測定して用いたFungal Index (F. I.) を行い比較検討した. また, 家兎にCandida albicans type Aを1.0×106CFU (1ml) 静注し, 経時的に血液培養ならびに上記の4種の補助診断法を行った. 全身性カンジダ症の臨床例では, 4種の診断法は抗真菌剤投与前では, ほぼ同様の陽性率を示したが, 抗真菌剤投与後, 治療によく反応した例でもHAテストは, カンジテックやD-アラビニトールに比べ陰性化がやや遅れる傾向がみられ, retrospectiveな診断には役立つと考えられた. カンジテック, D-アラビニトール, F. I. が治療開始後, 早期に正常化しない例は, 難治性であった. それゆえ経過観察, 予後判定に役立つものと思われた. カンジテックでは, 治療前より治療後に抗原価が4倍になるものが1例みられた.
    一方, 一過性カンジダ血症2例では, 全身性カンジダ症と区別する上には, カンジデックやF. I. よりもHAテストおよびD-アラビニトールの方が優れていると考えられた. また, 家兎実験例では, 血液培養が陽性にもかかわらず, カンジテックは全て陰性であった.
  • 荻野 純, 村上 嘉彦, 山田 俊彦
    1992 年66 巻3 号 p. 376-381
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    山梨医科大学付属病院では, 1987年後半以降入院患者より検出される黄色ブドウ球菌中に, MRSAが占める割合は70~80%に達するに至り, 1988年より院内感染対策として, 医療従事者の鼻前庭部細菌検査を例年施行し, 処置を行ってきた. 鼻前庭部保菌者に対する処置としては, オフロキサシンの点鼻, ポビドンヨード剤の鼻前庭部塗布を行ってきたが, 1991年ポピドンヨード剤による処置では除菌不能であった8名の保菌者に対し, 塩化メチルロザニリンによる処置を試みた. 塩化メチルロザニリンは, 親水ポロイドを基剤として0.01%軟膏を作製し, 1日1回の鼻前庭部塗布を2週間継続した. その結果6名のMRSA鼻前庭部保菌者よりMRSAが消失した.塩化メチルロザニリンのMRSA, MSSAに対するMIC値は平板希釈法にて測定した.その結果100%MIC値は1.0μg/mlと優れた結果を得た. また, 5%アルブミン存在下のMIC値でも1楊0%MIC値4.0μg/mlと十分なMIC値が得られた.
    塩化メチルβザニリンの皮膚, 粘膜に対する作用の検討には, 3グループのハートレー系モルモットを用いて, 0.1及び0.01%塩化メチルロザニリン軟膏, 親水ポロイドを剃毛した皮膚, 鼻腔に1日1回2週間継続塗布し光学顕微鏡下に観察したが, 障害性は認められなかった.
  • 金子 隆弘, 久保田 武美, 高田 道夫, 小栗 豊子
    1992 年66 巻3 号 p. 382-389
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    女性下部性器における, Mobiluncusの検出状況を, 非妊婦, 妊婦, 細菌性腟症患者の3群について検索した. 健常婦人におけるMobiluncusの検出率は非妊婦腟では3.2%, 頸管では2.9%であり, 妊婦腟で0.7%, 頸管で1.1%であった. 非妊婦において, 検出率はやや高く, 腟・頸管における差は認められなかった. 細菌性腔症症例でのMobiluncusの検出頻度は27.3%であり, 健常婦人群にくらべ有意に高値を示した.
    細菌性腟症と関係が深いと考えられているMobiluncus, G. vaginalisならびに他の嫌気性菌群が細菌性腟症症例に占める割合をみると, Mobiluncus単独は9.1%, G. vaginalis単独は21.2%, Mobiluncus, あるいはG. vaginalisが検出されない嫌気性菌群は21.1%であった. さらに, これら2種あるいは3種の併存例は39.3%であり, これらはすべて嫌気性菌群との併存であり, MobiluncusG. vaginalis 2種のみの併存例は無かった. 一方これらの3種のいずれも検出されなかった症例は9%にすぎなかった.
    薬剤感受性試験では, MobiluncusはTC, OFLXに対しては, 耐性を示したがPCG, EM, CLDMには感性を示し, これらの薬剤による治療効果が期待された. しかし, 多くのSTDに対して, 効果を示すTC, OFLX がMobiluncusに対して, 有効でないことはSTDの治療上注意する必要があると考えられた.
  • 柏木 征三郎, 林 純, 野口 晶教, 中島 孝哉, 平田 美樹, 梶山 渉
    1992 年66 巻3 号 p. 390-399
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近開発されたHBs抗体の測定法としては初めての全自動免疫測定装置 (IMxアナライザー) を使用し, Micro Particle Enzyme Immunoassay (MEIA) を利用したIMxオーサブ・ダイナパック (Abbott社) と従来のRIA (オーサブ, Abbott社), EIA (オーサブ・EIA, Abbott社) およびPHA (ニューセロクリットー抗HBs, 化血研製) とを比較検討した.
    HBワクチン接種群および非接種群の合計642検体のHBs抗体は, IMxが495例 (77.1%), RIAが502例 (78.2%) およびEIAが461例 (71.8%) に検出された. IMxと他の2法との一致率はRIAが98.0%, EIAが94.7%であった.
    定量性に関しては, IMxとRIAおよびEIAとに良好な直線関係を得られたが, 特にrecombinantワクチン接種群でRIAおよびEIAでの低領域でIMxの抗体価がRIAおよびEIAより高値を示す傾向がみられ, 注意が必要と思われた.
    PHAのHBs抗体価とIMxの抗体価 (mIU/ml) とはほぼ直線的傾向がみられた.
    IMxは定性および0~1000mIU/mlの定量を同時に測定する.また, 操作も簡単で測定時間も45分と短時間であった.
    以上の成績から, 本法はRIAおよびEIAとほぼ同程度の感度を有し, 操作法も他の2法よりはるかに簡便で, 測定時間も短く, 有用な検査方法と考えられた.
  • 三笠 桂一, 澤木 政好, 古西 満, 前田 光一, 竹内 章治, 浜田 薫, 増谷 喬之, 佐野 麗子, 国松 幹和, 成田 亘啓
    1992 年66 巻3 号 p. 400-406
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    TTA検出Saums呼吸器感染症24例について臨床的検討を行った.1) S.aurmsの検出頻度はTTA細菌検出524回中24回 (4.6%) と比較的少なかった. そのうちMRSAは3回検出された. 2) 疾患は肺炎が主体であった. 3) 約半数に抗菌薬が前投与されていた. 4) 複数菌検出例が多く, 特に院内発症例にその傾向が強くみられた. また同時検出菌ではH. influenzaeが最も多かった. 5) 喀痰検査では検査可能であった21例にいずれも20ml前後の膿性痰が多く, 20例に喀痰検査からもS. aurusが検出された. 6) 発症時期は年度別にみると1987年をピークとし, 季節では秋から春にかけて多かった. 7) 宿主側の要因として低栄養例が多かった. 8) 予後は治癒が17例, 死因と関連すると思われた症例は7例でいずれもMSSAの肺炎で重篤な基礎疾患を有していた.
    以上から, S. sureus感染症の病態は複雑でより正確に診断することの重要性が示唆された
  • 大野 章, 宮崎 修一, 舘田 一博, 金子 康子, 古谷 信彦, 辻 明良, 山口 恵三, 五島 瑳智子
    1992 年66 巻3 号 p. 407-415
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cystic fibrosisおよびびまん性汎細気管支炎患者は, 呼吸細気管支領域に持続性緑膿菌感染を起こしやすい. また慢性に経過した患者からはムコイド型緑膿菌の分離頻度が高く, 慢性呼吸器感染症へのムコイド型緑膿菌の関与が示唆されている. 著者らはムコイド株と非ムコイド株を用いて正常マウスに対する経気管呼吸器感染実験, マウス胎児肺細胞への付着実験, 血清感受性試験等を行い, ムコイド株の呼吸器感染メカニズムについて解析を加え, 以下の成績を得た.
    1) 経気管呼吸器感染における死亡率はムコイド株, 非ムコイド株で同率であった. しかし死亡直後のマウス血中菌数は非ムコイド株で106~108CFU/mlと高く, 敗血症死が認められたのに対し, ムコイド株ではく102~104CFU/mlと非ムコイド株より検出菌数は明らかに少なかった.
    2) 経気管感染15時間後の血中菌数に対する臓器内菌数の比率は, ムコイド株の方が著明に高かった. 一方尾静脈感染では, ムコイド株の方が血液中から急速にクリアランスされた.
    3) マウス腹腔内感染のLD50値は, ムコイド株の方が高く, 非ムコイド株に比べ全身感染では菌力は弱い傾向を示した.
    4) 人血清の殺菌作用に対してムコイド株は9株中7株が感受性を示したが, 非ムコイド株では11株中2株だけが感受性であった. しかしマウス血清の殺菌作用に対しては, ムコイド株, 非ムコイド株ともにすべての菌株が耐性を示した.
    5) マウス胎児肺初代分離細胞に対する緑膿菌の付着能はムコイド株の方が有意に高かった.
    以上の成績からムコイド株は, 非ムコイド株よりも網内系細胞に貧食されやすく, 血液中において急速にクリアランスされるため, 菌力が弱いことが明らかとなった. 緑膿菌ムコイド株による慢性呼吸器感染症には, 通常敗血症併発例が見られない. これには, ムコイド株が示す血清殺菌に対する感受性よりも, 血液からのクリアランスされやすい性質が敗血症発症の抑制に強く関与するものと示唆された. また呼吸器細胞に対する付着能はムコイド株群の方が高いことが確認され, 呼吸器感染では, ムコイドが感染発症とその持続性に関与する重要な因子の一つとなると考えられた.
  • 薛 博仁, 黄 情川, 巌 高彬, 林 茂, 楊 振典
    1992 年66 巻3 号 p. 416-420
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 山崎 堅一郎, 村山 踪明, 木村 貞夫
    1992 年66 巻3 号 p. 421-425
    発行日: 1992/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Moraxella subgenus Moraxella sp. was isolated in pure culture from the sputum of a 43-year-old male with pneumonia and congestive heart failure due to idiopathic dilated cardiomyopathy. In this case, we concluded that the patient's bacterial pneumonia was caused by M. (M.) sp. based on a Gram stain of the sputum smear and bacterial findings, increased WBC count, and elevated CRP. A chest X-ray revealed right middle, and left upper and middle lobe infiltrates.
    This Moraxella strain produced a BRO-type β-lactamase, a carbenicillinase-type enzyme.
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