感染症学雑誌
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緑膿菌性呼吸器感染症の迅速診断に関する研究
モノクローナル抗体 (メイアッセイ緑膿菌) を用いた間接蛍光抗体法による喀痰内緑膿菌の証明
渋谷 直道河野 茂重野 芳輝山口 恵三斉藤 厚原 耕平餅田 親子菅原 和行
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1987 年 61 巻 12 号 p. 1406-1414

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抄録
早期病因診断法として, 緑膿菌群別用モノクローナル抗体を使用した間接蛍光抗体法 (以下, IFA) にて, 喀痰中の緑膿菌の検出を試みた.あらかじめ凝集反応により血清型を確認した緑膿菌を用いて, 対応する群別用モノクローナル抗体液 (メイアッセイ緑膿菌, 明治) の抗体価をIFAにより測定し, 更に, 緑膿菌陰性の喀痰に種々の濃度の菌液を混和してIFA染色を行い, 観察可能な喀痰中緑膿菌の菌量を求めた.次いで1986年3月に長崎大学附属病院検査部に提出された喀痰から, atrandomに131検体を抽出し, IFA染色を行い, 喀痰中の緑膿菌を観察した.
IFAにより測定した各群抗体液の抗体価は血清型により異なり, 4~200倍の間に分布した.また, IFAによる菌の検出には, 喀痰中に106CFU/ml以上の緑膿菌の存在が必要であるとの結果が得られた.喀出痰のIFA染色では, 通常の分離培養 (定量培養) にて1×106CFU/ml以上の緑膿菌が分離された36検体のうち27検体 (75%) がIFA陽性を示し, このうち1×107CFU/ml以上の18検体では15検体 (83%) が陽性となり, また, 分離された菌量とIFAにて観察された菌数とは相関がみられた.培養陰性の86検体中, 82検体 (95%) はIFAも陰性であった.
本検査法は, 数時間以内に喀痰中緑膿菌の存在と菌量の推定が可能であり, 緑膿菌性呼吸器感染症の疑われる症例に対し有力な迅速診断法として利用できる.
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© 日本感染症学会
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