抄録
口腔外科領域の感染症として閉鎖性膿瘍に関する細菌学的検討は多く見られるが, 臨床的に少なからず経験される瘻孔形成性の開放性膿瘍に関する検討はほとんどない.我々は唾液の混入に細心の注意を払って検体を採取し, 2時間以内に培養に供した開放性の口腔外科領域感染症3例において詳細な細菌学的検索を行った.その結果, 全例好気性菌と嫌気性菌の混合感染で, 特にStreptococcusとPrevotellaintermediaを含むPrevotellaは3例全例から検出された.以上のことから, 開放性膿瘍であっても閉鎖性膿瘍と同じく嫌気性菌を中心とした多菌種による混合感染であることを念頭においた細菌検査が必要であると思われた.また検査法によっては見逃されることが多いPrevotellaの6株すべてがβ-ラクタメース産生菌で, セフェム系抗菌薬に低感受性を示したことは, 注目に値すると思われる.