抄録
1994年10月から1996年12月までに本院内科および外科病棟に入院中の患者の各種臨床材料からの多剤耐性緑膿菌の分離頻度は, 11.9%(471株中56株) であった.この内, 本菌が高頻度に分離された内科A病棟における多剤耐性菌18株のO血清型とピオシアニン, ピオベルジン, ヘモリシン, エラスターゼ, およびカゼイナーゼ産生性を多剤感受性株と比較した結果, 多剤耐性株のO血清型は, C型が16株 (88.9%) を占め, 2株 (11.1%) が型別不能であった.そして, 全ての菌株がピオベルジンのみを産生し, その他の菌体外物質の産生性を示さなかった.それに対して, 多剤感受性株の0血清型はB型が5/13株 (38.4%), G型が4/13株 (30.8%), C型が2/13株 (15.4%), E型および型別不能がそれぞれ1/13株 (7.7%) と多様であり, これらの全ての菌株は, ヘモリシンおよびピオベルジンの産生性を, 8/13株 (61.5%) はピオシアニンの産生性を, 9/13株 (69.2%) はエラスターゼおよびカゼイナーゼの産生性を示した.
以上の結果から, 本病棟において分離されたC型を示す多剤耐性緑膿菌は, 同一菌株の可能性があり, 本菌による院内流行が推定された.