経済地理学年報
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69 巻, 2 号
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表紙
研究ノート
  • 森川 洋
    2023 年 69 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2024/06/30
    ジャーナル フリー

        日本では人口20万人以上の地方都市は,広域中心都市を除くと,県庁都市と準県庁都市からなる.面積の広い県や特別な歴史的条件の下で発達した準県庁都市は県庁都市を補佐する位置にあるが,これら中核都市は東京特別区をはじめ旧五大都市,広域中心都市とともに,日本の都市システムの中心的な役割を担う存在である.中核都市の人口は緩やかな減少を示すものが多いが,中小都市や零細都市にみられるほど厳しくない.中核都市のもつ通勤通学圏や若年人口の移動圏には中小都市や零細都市におけるほど地理的位置による差異は少ない.しかし,東京特別区の人口吸引力は全国の中核都市に及び,東京近辺では県庁都市や準県庁都市の通勤通学圏に含まれる市町村の若者が東京特別区に流出するので,県庁都市の地域掌握力(自律性)は弱められ,圏域をもたない大都市圏内都市に移行する方向にある.政府は連携中枢都市圏構想や中枢中核都市構想に基づく中核都市の活性化に努力しているが,東京一極集中の抑制に効果を発揮しているとはいえない.

  • ―国連のグローバル目標に関する批判的考察―
    岩城 志紀
    2023 年 69 巻 2 号 p. 65-81
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2024/06/30
    ジャーナル フリー

        国連が「持続可能な開発目標」(SDGs) を設定してから大きな進展もなく数年が経過した.失効年までであれ,それ以降であれ,これらの目標を何らかの体制的変革なしに達成することはできるのだろうか.また,どのような体制を整えれば(失効年までに間に合わなくともそれ以降には) それらの目標を達成しうるのだろうか.これらは実践的に見て重要な疑問である.一方,哲学的に見て重要な次の疑問も忘れてはならない.すなわち,SDGsはそもそも正当化できる目標なのか,という疑問である.もしこの疑問を傍に追いやれば,SDGsは硬直した教義と化すだろう.本稿は,基本権,批判的経済地理学,ならびに市場社会主義に関する諸文献をもとに,これらの疑問に答えていく.具体的には,本稿は次の三点を主張する.第一に,SDGsには基本権を根拠に正当化できる目標が含まれるが,経済成長に関する目標については訂正が必要である.第二に,現行の経済システムはSDGsの達成を妨げるような内在的メカニズムを有している.第三に,SDGsを達成するには,おそらく体制的変革が必要である.

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