情報技術の革新によって, 空間的な制約が消失し, 特定都市への諸機能の集中, 交通渋滞, 女性就業の困難さ, といった問題は解決に向かうのであろうか.本稿は, 情報化の進展が, こうした今日的な問題に与える影響を, 都市, 交通, 女性, の3つの側面から検討する.都市システムは, 情報化に対応できる高度な専門家の集積地が極度に限られるため, 工業化時代にくらべてより一極集中型になるであろう.そうした中で, 都市は生き残りを懸け, 少しでも多くの人と投資を引き寄せるため, 都市の魅力の象徴として都心地区の整備を行う.本稿では, 都心のテーマパーク化, 自動車の都心地区への流入規制, 街頭への監視カメラの設置, といった問題に着目するが, これらはすべて都心の「公共空間」と呼ばれる場所での問題である.情報化時代になって, 「公共空間」は, 排除と監視をめぐっての新たな闘争の場となるであろう.
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