本研究では,日本の経済空間に大きな変化がみられた1980年代を中心とし,中間財フローのフィードバック的作用による地域間相互依存の経済空間構造を明らかにする.分析方法は,Sonis and Hewingsなどによるフィードバックループ分析を踏まえた上で,国内地域経済圏の間でフィードバックループ分析を行う,また,地域経済圏間のフィードバックループの強さやその経路,およびその結果を解釈することによって経済空間構造を明らかにする.第1に,産業連関表の地域間交易フローの推移からみると,1980年代に各地域経済圏には,中間財による地域間相互依存関係が強化する傾向があった.さらに,地域間交易フローの強さに関する総移入の全国シェアは,地域別生産額の全国シェアと強い相関関係があった.第2に,地域のフィードバックループは,「自地域のフィードバックループ」と「地域間フィードバックループ」に分けて経済空間の影響力を考えると,前者の強さは72%であり,後者の強さは28%の割合を示した.特に後者に関する地域間フィードバックループの解釈では,地域間相互依存関係が大都市圏を中心とする階層的な経済空間であった.また,関東地域,近畿地域,九州地域を主体とする地域間フィードバックループの解釈では,各地域別の「フローの空間」の影響力を把握した.つまり,関東地域には地域間完結型フィードバックループの強さが62.9%程度関わっており,近畿地域の場合には50.8%,九州の場合には25.3%であった.
抄録全体を表示