マーシャル的集積について活発な議論が繰り広げられる中で,中間組織の役割に対する関心が高まりつつある.戦前期の中小企業政策は同業組合政策が根幹をなしており,工業組合政策によって一大転換が図られたとされる.しかし,目下のところ同業組合に関心が集中し,産業組合や工業組合にまで関心が及んでいない.そこで,本稿では,輸出部門である羽二重産業を例に,それぞれの組織の制度的特徴と関係性とについて検討した.
同業組合は自由主義経済の象徴であり,市場メカニズムの円滑な機能を通じて粗製濫造を抑制し,取引市場を拡大させるための組織であった.ただし,組合員による共同事業は禁じられており,この点を補ったのが産業組合という協同組合であった.これに対して,工業組合は統制経済の象徴であった.工業組合も協同組合であり,産業組合と事業内容に大きな違いはなかったが,基本的な目的は生産統制によって市場を崩壊から防ぐことにあった.
本稿では,中心市街地活性化・商店街振興・まちなか再生の隘路を明らかにするために,土地の活用段階を所有や管理の状態に応じて網羅的に類型化し,これを基準に関連法令・要綱・答申等の政策文書,行政調査及び先行研究の対象を分類することで,現行制度や政策論の射程を検証した.
結果として,現在の政策や議論は「空き店舗」,「空洞化」又は「スポンジ化」といった外観を課題としているものの,遊休状態や事業放棄された低利用状態,すなわち,外観と異なり,利用者にとっては空かない状態の土地への対策が見落とされ,隘路と化してきたことが明らかになった.
背景として指摘できるのは,現行政策における都市中心部の土地の利用と所有・管理状態とを区別した分析概念の不足,外観重視の都市計画思想,積極的な開発主体や既存組織向けの施策への偏重,市街地開発事業・取引仲介者のインセンティブ低下,及び過少利用土地対策における経済面・地理面の目的を総合する方針の不在である.
これらにより,都市中心部の遊休土地・低利用土地の問題性や専門的な施策の必要性・公共性が見落とされてきたと考えられる.その解決には,言わばスポンジの目詰まりを解消するような,自律的に不動産を再流通させ,人々が自然に凝集する都市像を目指す政策論が求められる.