リボソームは, 構成脂質やサイズのコントロールによって, 膜の電荷・温度感受性・pH感受性・融合能など, 様々な性質を付加することが容易である。このような膜の性質はDDSキャリアーとしての特徴, つまりキャリアー自身の生体内挙動に加え, 薬物の保持性, 放出性を決定づける一因となっている。生体内挙動は血漿蛋白質などのオプソナイズに大きく左右され, 膜の流動性の変化やPEG修飾により, コントロール可能である。薬物の保持性や放出性に関しても, 膜の流動性に左右され, 温度感受性リポソームなどの放出制御に利用されている。さらに, リボソームはアンチセンスやプラスミドのベクターとしても広く用いられているが, 細胞への導入効率にも膜の性質が大きく関わっている。膜表面に正の電荷を持ったカチオニックリポソームは, DNAのパッキング, 細胞膜への付着性を高め, 遺伝子導入の効率化が行うことができる。リボソーム膜に機能性を付加したpH感受性リボソームや膜融合リボソームも導入効率の低さを改良する重要なベクターである。今後, 生体膜研究の進展とともに, より最適化されたリボソームの開発が行われていくものと思われる。
抄録全体を表示