オレオサイエンス
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10 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集総説
  • 珠玖 洋
    2010 年10 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    われわれはがん免疫療法のための新規で単純なタンパクデリバリーシステムをデザインした。すなわちHER2/neuやがん精巣抗原であるNY-ESO-1抗原タンパクと複合体を形成するコレステロール基を有した多糖類プルランである。このユニークな疎水化多糖類は可溶性抗原タンパクが, CD4+T細胞とCD8+T細胞両方の細胞性免疫を誘導するのを可能とする。それ故, がん治療に有用ながんワクチンを作り出すことができると考えられる。CHP-HER2およびCHP-NY-ESO-1複合体の第1相臨床試験を難治性がん患者を対象として多施設で実施した。安全性の確認とともに, CD8+T細胞およびCD4+T細胞免疫の誘導を認めると同時に臨床反応を提する被験者も認められた。
  • 馬場 一彦
    2010 年10 巻1 号 p. 15-18
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    抗がん剤新薬の開発が困難になっているなか, 既存の抗がん剤にドラッグデリバリー技術を適用して, 有効性を高め, 副作用を低減する開発研究が積極的になされている。すでにLHRHアナログやドキソルビシン塩酸塩リボソーム製剤はがん治療の標準的ガイドラインに採用されている。また, 既存の抗がん剤の利便性を改善した製剤として, アルブミン結合型パクリタキセルナノ粒子製剤も上市されている。本稿では, これらのDDS製剤の物理化学的および臨床面での特徴を紹介する。
  • 加藤 泰己
    2010 年10 巻1 号 p. 19-24
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    シスプラチンは肺がん, 胃がん, 膀胱がんの標準治療薬である。しかしながら, 腎毒性や神経毒性のような副作用のため治療を中断することがある。ドラッグデリバリーシステムにより副作用を抑制し, 腫瘍内のシスプラチン量を増加させることは価値あるアプローチといえる。NC-6004は片岡らにより新規なシスプラチンのデリバリーシステムとして考案された。活性を保持したままシスプラチンでみられる腎毒性と神経毒性を抑制したものである。NC-6004の臨床第1相試験は進行癌患者を対象に英国で実施された。
    片岡らが発明したドキソルビシン結合体と同様にエピルビシンをpH応答性ミセルとした。動物モデルにおいてpH応答性エピルビシンミセルの抗腫瘍活性はエピルビシン水溶液より優れていた。
    インターフェロン, インターロイキン, 穎粒球コロニー刺激因子 (G-CSF), 成長因子のような多くのタンパク質は治療効果を示すためには血中において安定であることが必要である。ブロック共重合体を修飾する技術によりタンパク質ミセルシステムを確立した。G-CSFミセルはPEG修飾G-CSFと同等の血中における徐放性を示した。タンパク質ミセル技術はバイオシミラー医薬品や血中半減期の短いタンパク質に適していると思われる。
  • 松村 保広
    2010 年10 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    DDS製剤の理論的支柱であるEPR効果の概念も世界にひろまりつつある。臨床においてもがん治療の分野を中心にナノテクノロジーを駆使したDDS系薬剤が次々と承認されてきている。本邦ではミセル製剤の臨床試験が始まり, ミセル製剤の臨床的な有用性が期待されている。
    本論文では, DDSの国内外の臨床開発の状況, ミセル製剤の基礎と臨床, そして新世代のDDSの開発について述べる。
  • 丸山 一雄
    2010 年10 巻1 号 p. 31-40
    発行日: 2010/01/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    リボソームは薬物, 抗原タンパク質, 核酸遺伝子などの運搬担体として有望視されてきた。近年, PEGで表面コーティングされた新しいタイプのリポソームが開発されている。PEG-リポソームは細網内皮系組織 (RES) に取り込まれにくく, 高い血中滞留特性を示す。その特性とEPR効果によって, PEG-リポソームは, がん組織に効率よく集積することができる (パッシブターゲティング) 。我々は, 固形がん組織にパッシブターゲティングされた後にアクティブターゲティングでがん細胞に結合できるトランスフェリン (TF) 修飾PEG一リポソームを開発した。TF-PEG-リポソームは, 血中滞留性と高いがん組織集積性を示し, TFレセプターを介してがん細胞内に取り込まれる。事実, オキサリプラチンをTF-PEG一リポソームに封入した製剤は, オキサリプラチン単独よりもより高い腫瘍内濃度と抗腫瘍効果を示した。リポソーム技術を基に超音波造影ガス (perfluoropropane) を封入したバブルリポソームを開発した。バブルリポソームは, 超音波照射によってキャビテーションを誘発し, その時生じるジェット流で薬物や核酸を種々の細胞に導入可能である。また, マウスにプラスミドDNAとバブルリポソームを尾静注し, 体外より肝臓に向けて超音波照射すると, 肝臓に効率良く遺伝子導入できることを示した。本法は, 非侵襲的な治療システムの構築が可能であり, 今後の発展が期待される。本解説では, TF-PEG-リポソームとバブルリポソームによるDDSについて紹介する。
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