オレオサイエンス
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17 巻, 8 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集総説論文
  • -骨再生用バイオマテリアルからの薬物放出速度論と細胞活性応答性薬物放出-
    大塚 誠
    2017 年17 巻8 号 p. 349-357
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    アパタイト骨セメントは,準安定形リン酸カルシウムからなりヒドロキシアパタイト(HAP)への転移により自己硬化する。このセメントに種々の薬剤を練合して薬剤徐放性人工骨セメントを調製した。 アパタイト骨セメントからのin vitro薬物放出速度はHiguchi式に従ったことから,薬物濃度,空隙率,セメント粒子径,拡散係数などにより薬物放出制御が可能であった。In vitroin vivo実験の結果から,アパタイト骨セメントからのin vivo薬物放出特性は,生体液中のカルシウム濃度に依存する薬物放出であることを証明した。このことからアパタイト骨セメントは,骨親和性の高い低結晶性HAPに転移して自己硬化し,骨粗鬆症病態に応答する薬物放出性をもつ高機能性デバイスであることが示された。さらに,HAP・コラーゲン複合化セメントに骨粗しょう症薬を適用し,完全連通孔をもつ細胞スキャホールドを調製した。 この高機能人工骨は,骨再生治療に適していることが示された。

  • 福田 達也, 浅井 知浩, 奥 直人
    2017 年17 巻8 号 p. 359-366
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    脳梗塞は本邦において死因別死亡率第4位,要介護に至る原因疾患の第1位である脳血管疾患の約6割を占め,世界的にも克服が望まれている。臨床では,唯一の世界的な治療薬である組織プラスミノーゲン活性化因子(Tissue plasminogen activator;t-PA)製剤を用いた血栓溶解療法が,標準治療として行われている。しかし,t-PAは脳出血や脳細胞傷害を惹起する危険性に加え,有効な治療可能時間(Therapeutic time window;TTW)が発症4.5時間以内とされていることから,適応患者が限定されている。また血流再開後に生じる二次的な障害,脳虚血/再灌流障害も患者予後不良に至る一因として問題とされている。ゆえに,上記問題の改善を可能とする新たな脳保護薬の開発が切望されている。脳梗塞時の特徴的な現象として,虚血巣周辺における血液脳関門(Blood-brain barrier;BBB)の透過性亢進が挙げられる。我々はこれまでに,脳梗塞により生じたBBBの間隙に着目し,ナノサイズのリポソームが脳虚血時,および再灌流後の早期から病巣部位へ移行することを見出してきた。また,再灌流後早期からのリポソームDDSによる脳保護薬デリバリーが,脳虚血/再灌流障害の治療に有用であることを,ラット脳梗塞モデルにおける検討から明らかとしてきた。さらに,t-PAによる血流再開を再現することが可能なモデルを用い,リポソームDDS製剤の血流再開前投与によって,脳出血への関与が知られるt-PAの有害効果を軽減,そしてTTWを延長できる可能性を示してきた。本稿では,我々が見出してきたリポソームDDS製剤を用いた脳梗塞治療の有用性について概説させて頂く。

  • 河野 弥生, 花輪 剛久
    2017 年17 巻8 号 p. 367-372
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    「院内製剤」は医療現場における様々なニーズをもとに調製され,薬物治療を支えている。こ のような院内製剤を臨床応用するには医療や現場の薬剤師は医師とともに薬学的見地から有効性,安全性評価を行い,その臨床使用成績をフィードバックする事によりエビデンスを構築する必要がある。特に使用期限の設定と保存条件の設定は院内製剤の品質保証に重要な役割を果たす。本稿では炎症後色素沈着症や老人性色素斑に対し,高い治療効果を示すレチノイン酸含有水性ゲル(RAgel)を調製し,その物理化学的性質および種々の環境下で保存した際の安定性評価から院内製剤の使用期限,保存条件を設定した事例について述べる。

  • 森部 久仁一, 植田 圭祐, 東 顕二郎
    2017 年17 巻8 号 p. 373-378
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    難水溶性薬物の経口吸収性を改善する目的で,固体分散体を用いた薬物の溶解性改善が20世紀後半から検討されてきた。薬物の溶解性改善が必ずしも吸収性改善に結びつかないケースも存在することから,製剤からの薬物溶出挙動及び溶解状態を考慮した製剤設計が重要である。本稿では,固体分散体からの薬物溶出挙動および薬物の溶解状態に焦点をあて,添加剤の種類及び組成が薬物溶出に及ぼす影響について検討した結果を紹介する。

  • 米持 悦生
    2017 年17 巻8 号 p. 379-385
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    ラマン分光法は,測定対象試料に光を照射した際に発生する,照射光とは異なる波長の非常に弱い散乱光を分光して得たスペクトルを解析することにより,測定試料の定性的又は定量的評価を行う分光学的方法であり,前処理なしに迅速で非破壊的に試料を測定できる利点をもつ。医薬品分野における本法の応用としては,原薬及び製剤中の有効成分,添加物について定性的又は定量的評価を行うことができる。また,結晶形・結晶化度などの物理的状態の評価に用いることもできる。また,顕微手法を用いることにより製剤中の有効成分・添加物の分布評価を行うことができる。さらに光ファイバーを用いることにより,装置本体から離れた場所にある試料について,サンプリングを行うことなくスペクトル測定が可能であることから,医薬品の製造工程管理をオンライン(又はインライン)で行うための有力な手段としても活用することができる。本稿では,ラマン分光法を利用した製剤評価の応用例について解説する。

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