界面活性剤などの両親媒性物質が形成する自己組織体は学術的にも工業的にも利用価値が高く、多くの研究がなされている。近年、従来は不安定であると考えられていたαゲルが多くの注目を集め、様々な研究が行われている。 我々も新たにαゲルを構築しうる素材の開発を進め、その結果、モノアルキル純度を高めたアルキルリン酸が中和剤の選択により非常に安定なαゲルを構築することを見出した。 本稿では特に化粧品分野で行われてきたαゲルの研究例を示しながら、我々が見出したαゲル形成素材について述べる。
触覚を客観的に計測したり,遠隔で提示したり再現したりする触覚技術が進歩しつつある。この技術の実現のためには,触感がどのような物理的メカニズムによって引き起こされるかを明らかにする必要がある。触感は一般に形容詞やオノマトペで表されるが,触った時にどのような物理現象が起こっているのかを感覚的な言葉のみから推測することは難しい。そこで,それぞれの感覚がどのような巨視的な物理現象,さらにはどのような皮膚と材料の間の微視的な相互作用によって引き起こされるのかを明らかにすることで,材料の触感デザインの可能性を見出そうとしている。ここでは繊維製品やスキンケア製品の具体的な触感の物理モデルの基礎的な検討例を取り上げ,触感の物理モデルの基本的な考え方,および材料設計への展開の可能性について述べる。
化粧品・医薬品の肌への効果を詳細に検証する上では,皮膚解析技術による客観的な情報の取得が必要不可欠である。そのアプローチとしては,肌表面から観察される現象にとどまらず,肌内部状態を皮膚の層別にあるいは皮膚構成成分特異的に評価できることが望まれている。近年の光学技術の進歩は,非侵襲で肌内部の構造情報の取得,分子レベルの解析,物性評価を可能にしつつある。そこで,本稿では我々が取り組んでいる光学技術を用いた新しい皮膚の評価法について概説したい。