オレオサイエンス
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1 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総合論文
  • 大隅 隆
    2001 年1 巻11 号 p. 1049-1056,1046
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    核内レセプターPPARファミリーは, リガンドによって活性化される転写因子群である。その最初のメンバーPPARαは, 警歯類の肝臓においてペルオキシソームを増加させるという, 抗高脂血薬剤の作用を仲介する因子として見つかった。しかしその後, PPARは脂質代謝のホメオスタシスをはじめ, 炎症の調節, マクロファージの分化や機能調節など, きわめて多彩な機能を担っていると考えられるようになってきた。また糖尿病, 動脈硬化, 癌などの現代病との関連も注目され, 基礎生命科学のみならず, 医学, 薬学的観点からも活発な研究が行われている。PPARはおそらく種々の脂質代謝物をリガンドとし, 多くの組織において主として脂質代謝関連遺伝子の発現を調節していると考えられる。PPARの天然リガンドや真の機能については, 今後さらに吟味が必要であるが, その機能解明や新しいリガンドの開発によって, 疾患の治療への応用が進むことが期待される。
    この論文では, PPARの構造と機能に関する研究全般について, その発見の歴史から将来の応用に至るまでを述べる。
  • 渡辺 隆史, 須賀 哲弥
    2001 年1 巻11 号 p. 1057-1064,1046
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    ペルオキシソーム増殖薬活性化受容体, peroxisome prohferator-acdvated receptor (PPAR) は脂質代謝を含むエネルギーホメオスタシスに関わる核内ホルモン受容体スーパーファミリーのひとつである。リガンドの結合により活性化されると, このリガンドー受容体複合体は転写因子として標的遺伝子のプロモーターに結合し遺伝子発現を誘導する。PPARには構造的・機能的に異なるドメインがあり, それぞれ1) リガンドとの結合, 2) リン酸化, 3) コファクターとの相互作用という独自の機能を果たす。また3種類のアイソフォーム, α, β (δ), γが知られており, それぞれリガンド特異性, 組織分布が異なっている。PPARを活性化させるリガンドには脂肪酸, エイコサノイド, 脂質低下薬, チアゾリジンジオン類など構造的に極めて多岐にわたる化合物が含まれる。したがってPPARは脂質代謝の制御因子の一つとして細胞のエネルギーホメオスタシスに関わると考えられている。一方, PPARの名称の由来となったペルオキシソーム増殖薬とは非遺伝子毒性 (非変異原性) 発癌物質のなかで最大多数を占める一群の化学物質である。これらは細胞内穎粒ペルオキシソームを増殖させる作用があることからこのように呼ばれる。ペルオキシソーム増殖薬による発癌の機構として酸化的ストレスや細胞増殖/分化制御の破綻が重要視されてきたが, この発癌過程にPPARが必須の役割を果たすことが, ノックアウトマウスを用いた研究から明らかになっている。
  • 佐藤 隆一郎
    2001 年1 巻11 号 p. 1065-1072,1047
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    SREBPはコレステロール, 脂肪酸代謝に関与する遺伝子群の転写を制御する転写因子である。SREBPは互いに47%のアミノ酸相同性を有するSREBP1とSREBP2からなる。他のbHLH-Zip (basicHelix-LooP-Helix leucine Zipper) を持つ転写因子とは異なり, SREBPは小胞体膜あるいは核膜上の膜蛋白質として合成される。bHLH-Zip領域を含む転写因子活性部位は2段階の切断機構を介して膜から切り離される。SREBPファミリーの中で, SREBP1が主として脂肪酸代謝調節を行う。SREBP1にはalternativesplicingにより生成されるSREBPlaとSREBPlcが存在するが, 1cはN末端の転写活性化領域の24アミノ酸残基が欠損しており, 1aに比べて転写因子としての活性は低い。SREBPlの調節遺伝子として脂肪酸合成酵素, アセチルCoAカルボキシラーゼ, ATPクエン酸リアーゼ, ステアロイルCoAデサチュラーゼ, グリセロ3燐酸アシルトランスフェラーゼが挙げられる。最近の研究結果から, 多価不飽和脂肪酸がSREBP1の活性化を抑制することが明らかになり, その作用機序の詳細の解明が待たれる。SREBPの機能を介してコレステロール代謝と脂肪酸代謝が密接な関係を持ちつつ制御されている事実は特筆するに値する。
  • 病態との関連性を中心として
    小泉 恵子
    2001 年1 巻11 号 p. 1073-1082,1047
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    スフィンゴミエリン代謝酵素あるいはその産物と病態または細胞内情報伝達機構との関連性に関する報告はこの10年間でおびただしい数にのぼる。しかし,それらの報告の相互でかなりの相違や矛盾が見られ,その原因の一つとして,代謝酵素に関する基礎的研究の遅れがあげられる。そこで,今回はスフィンゴミエリン代謝酵素の構造に関する基礎的解析結果の現状と,それを基にした機能の解析結果を中心として述べる。スフィンゴミエリン代謝酵素の中で,合成系としてはその第一ステップを担うセリンパルミトイルトランスフェラーゼを,分解系からは同じくその第一ステップを担うスフィンゴミエリナーゼとその次のステップのセラミダーゼを主に取り上げた。
  • PLDを中心に
    野澤 義則
    2001 年1 巻11 号 p. 1083-1090,1048
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    生体酸素なしでは存在できない好気的生物は,それをエネルギー産生に利用する一方で,反応性の強い活性酸素分子種(reactive oxygen species, ROS)の産生を余儀なくされる。そして,酸素代謝で生じるROSが核酸をはじめタンパク質,脂質および糖質などの細胞成分に有害反応を惹起し,その程度によっては細胞死(ネクローシス,アポトーシス)をもたらす。したがって,これらの生物はROSによる有害反応に対して抗酸化的防御機構を獲得してきた。防御酵素系の主なものにスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)およびカタラーゼ(CAT)があり,非酵素的なものにα-トコフェロール,β-カロチン,フラボノイドなどがある。酸化反応と抗酸化反応のバランスの乱れに起因する酸化的ストレスは,細胞内シグナル伝達系にもさまざまな影響を与える。酸化的ストレスの実験に過酸化水素(H202)をよく用いるが,この物質は細胞膜を容易に透過して中に入り,細胞内の酸化的状態を操作できるからである。ここでは,主に神経細胞モデルのPC12細胞におけるH202刺激による脂質シグナリングをホスホリパーゼD(PLD)を中心に述べる。
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