基準法2項目,2.4.14-2016および2.4.5-2016,および参考法1項目,参2.2.2.2-2016が2016年に新たに基準油脂分析試験法に登録された。また,さらに推奨法1項目が2017年に新たに登録される予定である。これらは2018年に2013年版の増補・改訂版として試験法ユーザーに有償で頒布されることになっている。これらの試験法のアウトラインを紹介する。
食用油脂,食品中の2-/3-MCPD脂肪酸エステル,グリシドール脂肪酸エステルの分析法が各国で開発されている。個々のエステルをLC-MSで測定する直接法,加水分解された遊離型である2-/3-MCPD,グリシドールをGC-MSで測定する間接法がある。間接法は,2-/3-MCPD,グリシドールエステルについて,それらの遊離型相当量として同時に定量できる利点がある。加水分解にCandida rugosa由来リパーゼを用いる酵素法は,エステルの加水分解は0.5時間で完了し,かつ,分析試料や検量線の調製が簡便であるため,現在ある間接法の中で最も迅速な方法である。日本油化学会は,13機関による合同試験を実施し,良好な室間再現性を得た。本法は,基準油脂分析試験法に基準法2.4.14として2016年に登録された。
トリアシルグリセリン(TAG)の2(β)位脂肪酸組成を分析する,膵リパーゼ等の加水分解による従来法ISO 6800:1997や基準油脂分析試験法推奨法2-2013では,リパーゼの性質から短鎖や高度不飽和脂肪酸を含むTAGは適用対象外である。これらも適用範囲に含むCandida antarcticaリパーゼB(CALB)のα位選択的なエステル交換反応を利用した方法が基準油脂分析試験法2.4.5-2016として規定されたので,その原理や手法を解説する。また,短鎖脂肪酸含量を再現性良く測定するためのプロピルエステル化法,参考法2.2.2.2-2016も紹介する。