当院入院の摂食・嚥下障害患者は脳血管障害による機能的障害が主で,認知障害など複雑な要因が絡みあい,殊に難しいアプローチが要求されている.<br> 患者は食事ができないという現実から,生命維持への恐怖,疾患への不安,さらに人間の尊厳の喪失など心理的葛藤は,計り知れないものがある.そのうえ高次脳機能障害による影響が強く,誤嚥による危険性も増す.<br> 摂食・嚥下障害患者がもたらす問題として次の3点が考えられる.<br> ① 誤嚥性肺炎・感染・窒息<br> ② 脱水・低栄養<br> ③食べる楽しみの喪失によるストレス・患者,家族の不安や焦り<br>これらは相互に関連して,悪循環を繰り返すことが多い.<br> リハビリテーション領域においても,効率的なリハビリテーションを目指すうえから,摂食・嚥下障害は重要で課題も多い.<br> 摂食・嚥下障害におけるリスク管理,専門分化する他部門との連携,という視点からの看護の役割を考えたい.
高齢者における包括的呼吸リハビリテーション・プログラムを作成,施行し,実施上の問題点を検討した.対象は78例の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者(平均年齢73.8歳).4年間の施行の結果以下の点が明らかになった.1)実施により抑うつ状態,quality of life,呼吸困難の改善がみられた.2)プログラムの遂行ではスタッフ教育が重要である.3)プログラムの効率化により実施期間の短縮とこれによる医療費の節減が可能である.以上より,高齢者のCOPDに対する包括的呼吸リハビリテーションの有効性が明らかとなった.
呼吸器疾患,とくに慢性呼吸器疾患患者におけるQOL(quality of life)は,多くの因子physical(身体的),functional(機能的),social(社会的),psychological(心理的)などから成り立っている.本稿では,QOLの歴史的背景を述べた後,慢性呼吸器疾患に対して行われる諸種の治療が,そのQOLにどのように影響するか,またその評価法のいくつかを紹介した.代表的なものでは,CRDQやSF36(SGRQ)がしばしば用いられるが,わが国独自で開発されたものは少なく,その評価法の問題点や今後のこの研究の動向についても言及した.
OSASに対する治療の第1選択は,nasal CPAPであり,現在世界的に普及しているが,近年,その有効性に対し,evidence based medicineの面から疑義が呈され論議を呼んでいる.本稿では,われわれの経験したCPAP治療の成績と,最近の文献的考察を中心に述べた.その後の研究においても,nasal CPAPの有効性はさらに強固になった感があるが,厳密な無作為対照試験を要求する欧米の態度は見習う必要があると考えられる.