気管支喘息は,時に重症発作により喘息死をきたす可能性がある.本来,適切な治療により喘息死は避けることのできる病態である.本稿では,喘息発作の急性期の薬物療法,呼吸管理,理学療法などを中心に述べる.さらに,退院前教育の必要性を強調したい.
長期NPPV症例の終末期呼吸管理では,侵襲的人工呼吸に移行する症例と移行しない症例がある.後者では,最終段階で,NPPVを中止し酸素療法に変更する症例とNPPVのマスクを装着したまま死亡する症例がある.慢性呼吸不全の終末期にどこまでの呼吸管理を行うかに関しては,患者・家族の希望を最大限尊重する必要がある.
肺移植待機患者は呼吸器疾患の終末期であると同時に,肺移植の術前期間でもあるという二面性をもっている.移植施設では移植に備え待機患者の病状をリアルタイムに把握しておく必要がある.待機患者は移植施設から離れて待機療養生活を行っていることが多いため,かかりつけ医療機関と移植施設,日本臓器移植ネットワークとの情報交換が大切であり,移植コーディネーターが窓口となってこれらの連携を行うことが重要である.
COPDにおける終末期の定義は,明確に示されていない.一般に,終末期とは「疾患の進行に伴う症状に対して治療は可能であるが,原疾患に対しては治療による効果が期待できない状態」と定義され,およそ余命6ヵ月と予測される時期である.COPDの終末期では,高度な呼吸困難や運動耐容能の低下がみられ,医学的のみならず社会的問題をも含有することが多い.本稿では,こうした諸問題と終末期医療や緩和ケアの重要性について述べたい.
小児神経筋疾患については,近年の非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation=NPPV)により,生命予後とQOLの維持が可能になりつつある.非侵襲的な気道クリアランスを含めたスタンダード医療も提唱されている.一方,延命に伴い,医師らも未知の医学的・社会的・倫理的問題に直面している.本人と家族,介護者のQOL低下を長期化させない非侵襲的呼吸ケアを取り入れた環境整備が求められる.そのために,本人や家族への早期からのNPPVに関する情報提供と教育を行う専門多職種を育てることが重要である.
4学会合同で編集された患者教育マニュアルは包括的,実践的で優れた内容をもっている.しかし内容に患者のニーズとの乖離がみられ,また教育を支える基本理念に対する言及も不足している.また患者教育の内容,方法などについては科学的検証が遅れているが,科学性の確立にはヘルスプロモーションのアプローチが必要と思われ,それについても踏み込んだ議論が今後必要であると思われる.
患者教育においては行動変容のステージに合わせて指導を行うことが原則である.それぞれの段階において適切な介入をするためには,看護師がコーディネーターとなり,変化ステージを評価し,教育プログラムを設定することが有用である.特に行動期におけるアクションプランを含む自己管理指導や,維持期における自己効力感・アドヒアランスの維持向上においては,看護師の果たす役割は大きい.「呼吸リハビリテーションマニュアル─患者教育の考え方と実践─」を参考にして,当院で実際の現場で取り組んでいる内容を例に報告する.
理学療法士における患者教育とは,単に知識を与えるのみの教育プログラムではなく,運動療法を長期的に継続し,その効果を実際の日常生活に反映するための最も重要な方法である.また,その目標は患者自身が自分の病態を知り,呼吸困難が生じる原因やADL低下の要因について理解し,これに対抗する方法や生活の工夫を積極的に取り入れるようになることである.さらにわれわれは,患者自身が実際の日常生活において,運動療法の効果を体感し,納得してみずから実践できるような環境を提供していかなければならない.これらを可能とするためには,患者の取り組む姿勢が最も重要であるが,それにもましてスタッフの創意と工夫,時間を惜しまない熱意が必要不可欠である.理学療法士は,患者に最も身近な立場であることから,積極的な介入が期待される.
過去10年間に呼吸リハビリ目的で入院した安定期のCOPD患者289名(平均年齢71.3歳,BMI19.9,%FEV1.039.4%)における食事療法と呼吸リハビリの効果について検討した.1日摂取エネルギーは荷重平均1614kcalに運動量を考慮した282kcalを加え1896kcalとした.体重変化をみると,BMI18.5以下群では体重増加,BMI18.6~24.9群は変化なく,BMI25以上群は低下,またBMI18.5以下群で除脂肪量と血清アルブミンが増加した.呼吸リハビリ前後で肺機能,呼吸困難感,6分間歩行,ADL評価の改善も認められた.栄養改善は呼吸リハビリ効果の重要な要素である.
2007年9月3日~2009年12月31日の23ヵ月でNPPVを施行した29名の疾患の内訳はCOPD11名,神経筋疾患8名,結核後遺症4名,心不全4名,気管支拡張症1名,間質性肺炎1名であった.このうち,在宅でNPPVを導入したのは17名であった.訪問診療の必要な方は重症で急性増悪を起こしやすい.さらに急性増悪を回避することは生命予後の改善にもつながる.安定した質の高い在宅生活を支えるためには,急性増悪の原因に関するアセスメントを行い,慢性安定期の呼吸ケアの再検討をしていく必要がある.急性増悪予防のための一般的な感染予防,心不全の管理は当然のこと,NPPVの導入,より良いNPPVの設定が必要不可欠となる.
人工呼吸器依存高位頸髄損傷患者が在宅療養へ移行するにあたり,発声能力と呼吸器離脱能力の獲得はQOL,安全性向上のために重要である.また,呼吸器合併症予防のための気道クリアランス,緊急時対応のための危機管理体制の整備も必要である.在宅療養は患者自身と家族にQOL向上をもたらすが,一方で介護負担,経済的負担の問題もあり,それらを支援するためリハビリテーション医療,在宅支援システムの確立が急務である.
筋萎縮性側索硬化症療養者への在宅人工呼吸療法では,単なる長期の生存だけではなく,地域社会生活により,自分らしく生きるための支援が求められている.それには,1.生命維持,2.日常生活支援,3.非日常の生活支援の各過程があるといえる.これらの支援を基盤としたうえで,対象の希望を高める,社会参加環境の整備,日常の訪問看護などによるきっかけづくりなど社会参加推進のための支援に向けた取り組みが求められている.
ゼリーを嚥下することで,うがいと同様の効果を得るか,健常高齢者を対象にうがいの種類を変え比較検討した.結果嚥下ゼリーを投与された群は,介入のなかった群より感冒罹患率が低下した.この比率は,うがい群とほぼ同等であった.したがって,嚥下ゼリーの使用は,風邪の予防に効果を発揮する可能性があることを示唆した.今後,水やイソジン希釈液によるうがいが困難な場合に,嚥下ゼリーの使用は,それに代わる一つの手段となる可能性がある.
本研究の目的はCOPD患者の食事動作に伴う身体への負担を明らかにすることである.入院中の15名の患者に対し,食事場面への参加観察,生体学的測定と面接を行った.結果,COPD患者の食事動作に伴う身体へ負担は食べることに伴う咀嚼や嚥下による呼吸への影響,食事が消化管に入ることによる呼吸への影響,食べるために姿勢を整えたり,手や腕を動かすことによる呼吸運動や全身への影響などが明らかになった.これらの結果より,COPD患者の食事動作への支援として咀嚼や嚥下機能,栄養状態の評価に加え,酸素飽和度や呼吸回数以外の呼吸の変化,体勢や全身への影響などを包括的に評価し支援へとつなげていく必要性が示唆された.
呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)目的にて入院した重症例を含む特発性間質性肺炎患者49例,69エピソードを対象に呼吸リハの継続状況とその効果を検討した.呼吸リハ完遂群ではMRC息切れスケール,運動耐容能,ADL,呼吸機能で有意な改善を認めた.一方,死亡や病態悪化により継続困難であった脱落群は完遂群より重症例が多かった.特発性間質性肺炎患者の呼吸リハは病態が進行した重症例では継続困難となることがあるため,呼吸リハの早期導入や重症度に応じたプログラムの検討が重要である.
本症例はCOPDに起因する肺炎から入退院を繰り返し,退院後の在宅生活にて運動耐容能低下と意欲減退よりADL低下が懸念されていた.今回訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)にて自覚症状と運動量を評価しながら家庭菜園を実施することで,運動耐容能および活動性の改善が認められた.直接生活場面に介入する訪問リハは在宅ADL改善,生活空間拡大において有効な手段であると考える.
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