日本集中治療医学会雑誌
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6 巻, 4 号
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  • 稲田 捷也, 遠藤 重厚
    1999 年6 巻4 号 p. 337-345
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    エンドトキシン(LPS)に関する最新の報告を簡単にレビューし,さらにLPSに特異的なリムルステストとわれわれの開発した血漿前処理法(New PCA法)を駆使し,ここ十数年行ってきた研究の成果に基づいてLPSの病態における役割を考えた。1)LPS・LBP複合体は膜上のCD14と最近発見されたTLRとの複合体に結合し,シグナルが伝達される。2)感染を伴わない全身性炎症反応症候群(SIRS)ではLPSはほとんど基準値以下であった。3)重症の腹膜炎でもLPSの陽性率は決して高くなく,また血中濃度も高値でなかったことから,感染局所からのLPSの血中への侵入は無秩序には起こらない。4)敗血症や敗血症性ショックで病態と相関するのはLPSではなく炎症性サイトカインであった。5)抗LPSモノクローナル抗体(E5)の治験の成績のうち,血中LPS量と血液培養の結果から,菌血症でもLPS陰性(bacteremia but non-endotoxemia)の場合があり,リムルステストの検出感度が低いことが考えられた。6)LPSはむしろ感染局所で全身性の炎症反応に働いている。7)血漿蛋白に結合したLPSも多くの場合リムルステストで測定されている。8)保険適用測定法の一部にはまだ問題点がある。
  • 石原 弘規
    1999 年6 巻4 号 p. 347-355
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    血管内容量を評価し体液量を適正に保つ輸液管理は,重症患者の予後を左右するが,通常用いられている循環系パラメータでは適正に評価できない場合も決して少なくない。最近,開発されたパルス色素希釈法(pulse dye-densitometry)は,頻回の血液サンプリングを必要とせず,集中治療における体液量評価も新たな段階を迎えつつある。またわれわれが提唱しているブドウ糖初期分布容量は体中心部の細胞外液量を反映し,インドシアニングリーン(ICG)を用いた血漿量評価に比し,心拍出量と良好な正の相関関係がある。ICGは熱傷初期,敗血症,外傷などの蛋白質漏出時には血管外に洩れ,血漿量を過大に評価する可能性がある。さらに血管内容量が正常であっても,中心部の容量は低下している場合もみられるように,体液量評価は種々の問題を含んでいる。1つのパラメータのみでなく,患者の病態や他のパラメータをも含め,総合的に血管内容量を評価し,適正化を図らなければならない。
  • 清水 直樹, 中村 知夫, 鈴木 康之, 阪井 裕一, 宮坂 勝之
    1999 年6 巻4 号 p. 357-360
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    嚥下協調障害,胃食道逆流による慢性誤嚥を呈する患者群では,軽微な気道感染症から急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)への進展を経験することが少なくないが,その病態は十分には解明されていない。慢性誤嚥が小児ARDSの発症に関与している実態の把握を目的として後方視的検討を行った。小児集中治療室全収容患者570症例中ARDS症例は15症例であり,そのうち慢性誤嚥が発症,増悪に関与したと推定された症例は3症例(0.53%)であった。これら3症例では,従来のARDSの危険因子は関与しておらず,基礎疾患として慢性誤嚥を認め,軽微な気道感染症に伴って急激に悪化した。なお,こうした症例群ではARDS再発の危険性が残るため,遠隔期まで見込んだ治療計画が求められる。
  • 渡邊 仁美, 赤川 明美, 嘉本 賢哉, 福本 恵美子, 小村 裕美子, 仁科 幸枝
    1999 年6 巻4 号 p. 361-367
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    われわれは,ICU環境における患者行動をICUシンドロームで代表される概念で捉えるのではなく,ストレス-対処モデルにより捉え,患者の感覚-知覚行動を数量化することによって,ICU患者の気管内挿管チューブや動静脈カテーテル自己抜去危険度スコアの作成を試みた。患者行動は因子分析(累積寄与率56.4%)により不眠行動,認知的(自発)行動,情動的(興奮)行動,感覚的(せん妄)行動,焦燥・落ち着き行動の5大因子に分類できた。そのうち自己抜去に関連した患者行動は「診察に協力的でない」,「自発的行動がない」,「落ち着きがない」,「意味不明な言葉・筆談の有無」,「大声で叫ぶ」,「怒っている」の6行動であった。数量化で得た6つの行動のカテゴリースコアにより自己抜去危険度スコアを作成した。このスコアを臨床で使用した結果,抑制帯使用および自己抜去の件数は減少した。
  • 藤井 崇, 嶋岡 英輝, 安宅 一晃, 谷 仁介, 高木 治, 佐谷 誠
    1999 年6 巻4 号 p. 369-372
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    頸部血管腫の急速な増大により気道狭窄をきたしたKasabach-Merritt症候群の1症例を経験した。症例は2ヵ月の女児で,左側頭部から頸部にかけて広がる巨大血管腫,および血小板数減少・凝固因子低下を認め,Kasabach-Merritt症候群と診断した。診断確定後直ちにプレドニゾロンの投与を開始したが症状の改善を認めず,腫瘍はさらに増大して気道狭窄をきたしたため,ICUに収容し気道確保を行った。同日よりインターフェロン-α-2aの併用投与を開始するとともに全身麻酔下に動脈塞栓術を施行したところ,腫瘍は著明に縮小し,無事気管チューブを抜管することができた。術後6日目より血小板数も増加傾向を示し,腫瘍の再発や血小板数減少を認めることなく軽快退院することができた。本症例のように急速に増大する腫瘍により致死的な圧迫症状を呈する症例においては,従来の薬物療法とともに早期の動脈塞栓術の施行も有効であると考えられた。
  • 伊藤 誠, 又吉 康俊, 宮脇 宏, 森 由香, 福田 志朗, 川端 徹也
    1999 年6 巻4 号 p. 373-377
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    患者は41歳の女性。意識障害,四肢脱力感を主訴として来院した。来院時検査所見で高Na血症(185mEq・l-1),高浸透圧血症(388mOsm・kg-1)を呈していた。血糖は来院2日前には800mg・dl-1まで上昇していた。尿ケトン体が陰性であることから高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡と診断した。横紋筋融解(血清ミオグロビン240,000ng・ml-1)を併発したが,大量輸液と利尿薬投与により約5日間で改善した。高Na血症,高浸透圧血症も輸液療法とインスリン投与により数日で改善したが,意識障害と四肢麻痺は増悪した。意識が清明となった4週後には磁気共鳴検査でcentral pontine myelinolysis (CPM)と診断され,この所見は運動機能が改善した3ヵ月後まで継続した。一般にCPMは低Na血症の急激な補正時に認められるが,本症例は横紋筋融解と併せて血清浸透圧の急激な変化がその成因と考えられた。
  • 矢作 友保, 柳沼 厳弥, 荒木 隆夫, 後藤 敏和, 川島 祐彦, 赤井 健次郎, 宮本 貴庸, 横山 紘一
    1999 年6 巻4 号 p. 379-385
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    経皮的心嚢内凝固因子製剤注入療法(PICFIT)で救命した急性心筋梗塞(AMI)後の亜急性型心破裂(SCR)の4症例を詳述し,併せてAMI後SCR全体の治療成績につき検討した。PICFITの4症例は全例女性,平均年齢78歳,前壁/下壁梗塞2/2例,3症例は経皮的冠動脈形成術で再疏通に成功した。SCR発症は胸痛発症から平均18時間,来院から平均3.3時間であった。心タンポナーデによるショックに対し循環を保つ最低限の心嚢ドレナージ後,凝固因子製剤を注入,以後安静と左室内減圧に努めた結果,4症例全例が生存退院,2~4年後も生存中である。この4症例を含む自験SCR16症例の治療成績は手術/PICFIT/保存療法群(7/4/5例)のうち生存例が6/4/1例で,前2群は保存療法群に対し有意に生存率が高かった(P<0.025)。前2群間では有意差はなかった。すなわち,SCRのなかには手術を選択しえなくてもPICFITにより救命しうる亜群が存在する。
  • 笹野 信子, 笹野 寛, 馬場 瑛逸, 勝屋 弘忠
    1999 年6 巻4 号 p. 387-391
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    高齢者で多彩な精神・神経症状を示した甲状腺クリーゼの1症例を経験した。患者は69歳,女性。3ヵ月前より全身倦怠感があった。その後,悪心,嘔吐,食事摂取困難となり入院した。入院時より抑うつ症状が認められ,しだいに夜間せん妄,多弁,独語,妄想が出現し,不穏,錯乱状態となった。その後,突然の意識消失,呼吸停止をきたし,ICUへ収容した。収容時の意識レベルは,Japan Coma Scale (JCS) III-200,右方共同偏視,右半身不全麻痺が認められた。甲状腺の腫大および眼球突出より甲状腺クリーゼを疑い,チアマゾール,ヨードグリセリンを投与し,心臓交感神経抑制の目的で持続胸部硬膜外ブロックを施行した。3日後には意識レベルJCS I-1に回復し,同時に共同偏視,右半身不全麻痺も消失した。甲状腺クリーゼによる頻脈の改善に持続胸部硬膜外ブロックが有効であった。
  • 田中 博之, 大倉 史典, 多治見 公高, 山本 功, 遠藤 幸男, 小林 国男
    1999 年6 巻4 号 p. 393-398
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    32歳,男性。5日以上連続してシンナーを吸入していたと推定され,意識障害を主訴に搬入された。搬入時,ショック状態,アニオンギャップ(anion gap)の開大,著明な代謝性アシドーシス,腎機能低下,血中馬尿酸値の著増などを伴っていた。シンナーはトルエンを主成分とする混合有機溶剤であり,トルエンの代謝産物である馬尿酸の除去を目的として持続的血液濾過透析を施行した。トルエン中毒に対する特異的な治療法はない。腎機能障害がなければ,馬尿酸の蓄積による代謝性アシドーシスに対しても輸液のみで改善する。しかし腎機能の低下した症例では馬尿酸の蓄積は代謝性アシドーシスを遷延するだけでなく,腎機能をさらに増悪させる。本症例は腎機能障害を合併した急性シンナー中毒例において積極的な血液濾過透析の導入が馬尿酸の除去,遷延した代謝性アシドーシスの改善,腎機能の回復に有効であることを示唆した。
  • 渡海 裕文, 山下 幸一
    1999 年6 巻4 号 p. 399
    発行日: 1999/10/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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