抄録
経皮的心嚢内凝固因子製剤注入療法(PICFIT)で救命した急性心筋梗塞(AMI)後の亜急性型心破裂(SCR)の4症例を詳述し,併せてAMI後SCR全体の治療成績につき検討した。PICFITの4症例は全例女性,平均年齢78歳,前壁/下壁梗塞2/2例,3症例は経皮的冠動脈形成術で再疏通に成功した。SCR発症は胸痛発症から平均18時間,来院から平均3.3時間であった。心タンポナーデによるショックに対し循環を保つ最低限の心嚢ドレナージ後,凝固因子製剤を注入,以後安静と左室内減圧に努めた結果,4症例全例が生存退院,2~4年後も生存中である。この4症例を含む自験SCR16症例の治療成績は手術/PICFIT/保存療法群(7/4/5例)のうち生存例が6/4/1例で,前2群は保存療法群に対し有意に生存率が高かった(P<0.025)。前2群間では有意差はなかった。すなわち,SCRのなかには手術を選択しえなくてもPICFITにより救命しうる亜群が存在する。