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山村 仁, 高橋 誠, 仲村 光世, 溝端 康光, 西澤 聡, 李 栄柱
2011 年18 巻1 号 p.
63-66
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
麻酔導入後に用いた薬剤が原因と考えられるアナフィラキシーショックから心停止に至った症例を経験した。患者は55歳,男性で,食道癌根治術予定であった。麻酔導入後に抗菌薬とステロイドを投与した際に,アナフィラキシーショックを起こし血圧が低下した。心肺蘇生を行い約24分後に心拍が再開し,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS),大動脈内バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping, IABP)などを用いた全身管理の結果,第4病日にPCPSより離脱し,第8病日に抜管でき後遺症なく救命できた。心拍再開にアドレナリンは無効であり,バゾプレッシン投与が有効であった。麻酔中の心停止であったため,心拍再開まで絶え間ない心肺蘇生を行えたこと,心拍再開後に直ちにPCPSを開始できたこと,などが後遺症なく救命できた要因と考えられた。
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江田 陽一, 藤田 基, 金子 唯, 宮内 崇, 井上 健, 鶴田 良介, 笠岡 俊志, 前川 剛志
2011 年18 巻1 号 p.
67-72
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
肝疾患および糖尿病などの危険因子はないが,胃全摘・脾摘の既往がある患者に発症した
Vibrio vulnificusによる壊死性筋膜炎に対し,両側下腿切断術とエンドトキシン吸着療法を施行し救命し得た。症例は67歳,女性。両側下腿の蜂窩織炎・敗血症性ショックの診断で当センターに転院搬送された。9年前に胃癌に対し胃全摘と脾・膵尾部合併切除術が行われたが,再発はなかった。身体所見と魚介類の生食歴から本疾患を疑い,抗菌薬を開始した。血圧は輸液・昇圧薬に反応せず,皮膚所見の拡大と全身状態の悪化を認めたため,来院から8時間後,両側下腿切断術を施行した。術後にエンドトキシン吸着療法を2回施行し,ショックを離脱した。第12病日には全身状態良好となり転院となった。本疾患の危険因子の一つとして胃切除および脾摘の既往を考慮する必要があり,救命のためには早期の外科的治療の決断が重要であると考えられた。
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Junji Shiotsuka, Hidetaka Nishina, Masamitsu Sanui, Maya Ohashi, Alan ...
2011 年18 巻1 号 p.
73-76
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
A 66-year-old female presented with progressive left-sided chest pain. The electrocardiogram (ECG) showed changes typical of an anterior wall myocardial infarction. She immediately underwent coronary angiography which revealed normal coronary arteries. Cardiac MRI (CMR) was then performed, which showed diffuse high intensity on T2-weighted images and transmural late gadolinium enhancement (LGE) in the apical wall. While transmural LGE was not typical for myocarditis, the patient was diagnosed with acute myocarditis based on the clinical and angiographic findings in addition to the high intensity of T2-weighted image. During the course of the disease, the apical wall developed an aneurysm corresponding to the area of transmural LGE on CMR and an intraventricular thrombus formed in the aneurysm. She was given heparin and discharged after resolution of the thrombus. Further evaluation is warranted if this uncommon imaging finding is detected to prevent thromboembolic complications.
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長谷川 豊, 江連 雅彦, 佐藤 泰史, 岡田 修一, 小此木 修一, 金子 達夫, 河口 廉, 外山 卓二
2011 年18 巻1 号 p.
77-82
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
症例は37歳の女性。急性心筋炎の診断で他院に入院したが循環状態が悪化し,大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping, IABP)を挿入され,当院に搬送された。多臓器不全,ショックの状態で,気管内挿管,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入し,持続的血液濾過透析を開始した。PCPSを4日間続けたが心機能の回復がみられなかったため,第5病日に左心補助人工心臓(left ventricular assist device, LVAD)を装着した。右室の運動も不良で右心補助人工心臓(right ventricular assist device, RVAD)を追加した。その後,心機能は徐々に改善し,術後11日目にLVAD,RVADから離脱,術後14日目にIABPから離脱した。術後24日目に人工呼吸器から離脱し,間歇透析に移行,術後29日目にICUを退室,術後49日目に透析から離脱した。経過中に右脳梗塞を生じたが回復し,術後102日目に軽快退院した。IABPやPCPSでも治療に抵抗性の重症心不全に対し,補助人工心臓は有効な治療手段である。合併症や臓器障害が進行する前にその導入を検討するのが望ましい。
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小林 かおり, 吉田 暁, 宮島 衛, 広瀬 保夫, 野本 優二, 新國 公司, 高井 和江
2011 年18 巻1 号 p.
83-87
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
血球貪食症候群は,高サイトカイン血症により組織球が異常に活性化・増殖し,血球貪食像を呈する病態である。ウイルス性感染や悪性腫瘍に合併することが多いが,近年は他の様々な病態に合併することが明らかになってきている。症例は62歳,女性。発熱,下痢,嘔吐を主訴に受診し,来院時はショック状態であった。入院後も水様便を繰り返し,播種性血管内凝固症候群,急性腎不全,横紋筋融解症などに陥った。フェリチンが異常高値であり,骨髄生検で血球貪食像を認めたため,血球貪食症候群と診断した。ステロイド投与にて速やかに全身状態は改善した。後に便培養から
Aeromonas hydrophilaと
Bacillus cereus,
Staphyrococcus aureusが同定された。本症例では,細菌性腸炎の経過としては典型的ではなかった。フェリチン異常高値が血球貪食症候群と診断する端緒となった。細菌感染症においても,適切な全身管理・抗菌薬投与にかかわらず,状態の改善がみられない場合や汎血球減少を認めた場合では,血球貪食症候群も鑑別診断の候補として考慮する必要がある。
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向山 剛生, 守谷 俊, 宮下 直也, 櫻井 淳, 木下 浩作, 丹正 勝久
2011 年18 巻1 号 p.
89-93
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
急性硬膜下血腫により圧迫されていた血腫直下脳組織の脳虚血病態を評価する目的で,マイクロダイアリシス(microdialysis, MD)によりグルタミン酸濃度を経時的に測定した。【症例1】では,血腫除去後,圧迫されていた脳組織のグルタミン酸濃度は正常であった。対側のグルタミン酸や頭蓋内圧も同様に正常であった。測定開始から3時間後に損傷側のグルタミン酸濃度が上昇を始めた。さらに約2時間後には,対側のグルタミン酸濃度の上昇とともに頭蓋内圧が20 mmHg以上まで上昇した。頭部CTで圧迫されていた脳組織に脳浮腫が認められた。【症例2】は,圧迫されていた脳組織のグルタミン酸は測定開始時から高値であったが,測定開始から3時間以内に正常まで低下した。対側のグルタミン酸濃度や頭蓋内圧の上昇は認めなかった。MDは急性硬膜下血腫により圧迫されていた脳組織の脳虚血病態の評価に有用であった。今後,同様の臨床設定での症例の蓄積が必要である。
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菊池 忠, 垣花 泰之, 中原 真由美, 岡山 奈穂子, 今林 徹, 安田 智嗣, 上村 裕一
2011 年18 巻1 号 p.
95-99
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
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患者は5歳の男児。発熱,嘔吐,痙攣が出現したため近医へ救急搬送され,抗痙攣薬投与,気管挿管後に,新型インフルエンザ脳症の診断にて当院へ紹介搬送された。ICUにて鎮静下に人工呼吸管理,および脳浮腫に対する治療を開始した。その後痙攣はみられず,第7病日,デクスメデトミジンのみ投与しながら覚醒させ抜管した。しかし,抜管直後より上気道狭窄音,陥没呼吸,努力性呼吸,頻呼吸を認めたため,ヘルメット型マスクCASTER“R”小児用を装着し非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV)を開始したところ,呼吸状態はすぐに改善した。エア・リークはほとんど認めなかった。患児が嫌がる様子はなく,意志疎通も可能であり,声もはっきりと聞き取れた。翌日NPPVから離脱でき,再挿管を回避できた。ヘルメット型マスクは圧迫感がなく,小児でも受容性が高いため,小児にNPPVを施行する際に有用なデバイスとなることが示唆された。
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虎岩 知志, 斎藤 浩二, 吾妻 俊弘, 星 邦彦
2011 年18 巻1 号 p.
101-104
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
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成人型Still病は,全身性の炎症疾患で多臓器に合併症をきたす。合併症としては心外膜炎や胸膜炎が多く,心筋炎は稀である。今回,急性心筋炎の経過中に成人型Still病と診断された症例を経験した。症例は39歳,男性。下痢,嘔吐,倦怠感で発症した。翌日,心電図検査での広範なST上昇とトロポニンTの上昇を認めたが,冠動脈の有意な狭窄は認めなかった。胸水貯留,低酸素血症が進行し,人工呼吸管理,intra-aortic balloon pumping(IABP)を開始した。急性心筋炎の疑いでICUへ入室し,直ちにpercutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を装着した。心機能は早期に改善し,ICU入室3日目にPCPS,4日目にIABPから離脱できたが,頻呼吸のため人工呼吸を継続した。5日目に紅斑が全身に出現した。感染症や悪性疾患を除外後,成人型Still病と診断された。14日目の副腎皮質ステロイドの投与開始後,解熱し,頻呼吸は改善した。20日目に人工呼吸器から離脱し,23日目にICUを退室した。
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吉本 昭, 有元 秀樹, 松浦 康司, 宮市 功典, 林下 浩士, 韓 正訓, 鍜冶 有登, 宮本 覚
2011 年18 巻1 号 p.
105-109
発行日: 2011/01/01
公開日: 2011/07/20
ジャーナル
フリー
セレウス菌は通常,食中毒の原因菌としてよく知られているが,脳症の合併は非常に稀である。今回我々は,セレウス菌食中毒に合併した脳症を経験した。症例は5歳の男児。昼食に前日調理のチャーハンを食べたところ,1時間後から嘔吐し,意識レベルの低下がみられ入院となった。頭部CTと臨床症状から急性脳症と診断し,脳圧センサーを挿入して脳圧管理を行った。管理目標は脳圧(intracranial pressure,ICP)を20 mmHg以下とし,脳灌流圧(cerebral perfusion pressure, CPP)を45 mmHg以上に保つようにした。児は救命できたが,重度の神経学的後遺症を残した。今回の経験により,小児の脳炎・脳症に対するICPモニタリングは,脳浮腫の進行を速やかに把握し,その上昇に対し迅速に処置を行えたことから,非常に有用であると考えられた。
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