日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
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25 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
総説
  • 一二三 亨
    2018 年25 巻4 号 p. 235-242
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー
    血清療法とは,人工的に作られたポリクローナル抗体(ヒト,他の動物)を含む血清(抗毒素・抗血清とも呼ばれる)を投与して治療することと定義されている。その歴史は,1890年に北里柴三郎とエミール・ベーリングが,ジフテリアと破傷風の血清療法の発見を発表したことにより始まる。現在,本邦には国有品として,ガス壊疽抗毒素,ジフテリア抗毒素,ボツリヌス抗毒素があり,保険承認薬で通常医療機関ですぐに使用できるものとしてマムシ抗毒素,ハブ抗毒素,破傷風ヒト免疫グロブリンなどがある。さらに未承認薬で臨床研究として使用可能なものにヤマカガシ抗毒素,セアカゴケグモ抗毒素がある。本邦の代表的な救急・集中治療領域でのテキストで血清療法としてまとめて掲載しているものは存在しない。本稿では,実際の血清療法を患者に行うにあたって,どのようにすればよいのか? 注意は何か? について集中治療医にわかりやすい内容を提供する。
  • 海老島 宏典, 吉田 健史, 内山 昭則
    2018 年25 巻4 号 p. 243-248
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー
    人工呼吸中に自発呼吸を温存することは,背側肺領域優位の換気を促し,低い気道内圧(プラトー圧)でも呼気終末肺容量が比較的保たれ,酸素感も改善することから,最も侵襲性の低い肺リクルートメント療法であると考えられている。しかし,急性呼吸窮迫症候群の重症例など呼吸努力の特に強い症例では,肺保護換気戦略に則ってプラトー圧を制限したとしても経肺圧が増加し,人工呼吸器関連肺傷害の危険因子となり得ることが多数報告されている。また,そのような症例に対し,肺保護換気戦略に従って1回換気量を制限したとしても,pendelluft現象により肺局所の過伸展から肺損傷を引き起こす可能性がある。呼吸努力を最小限に抑えた自発呼吸の温存または,筋弛緩によるfull supportは症例ごとの呼吸状態を慎重に見極めることで,一連の管理方法となり得ると考える。
  • 小林 聖典, 山田 純生, 碓氷 章彦
    2018 年25 巻4 号 p. 249-254
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,左心補助人工心臓治療は重症心不全患者の生命予後・QOLを著明に改善することが実証され,使用が増加している。しかし,本邦では欧米に比して心移植ドナー数が少ないことから,心移植待機者の増加に伴い心移植待機期間は長期化している。したがって,重症心不全患者は長期にわたり補助人工心臓を装着し,心移植待機期間中の合併症予防に努めると同時に,身体機能を良好な状態に保つ必要がある。心臓外科術後は骨格筋蛋白異化が著明に亢進することが明らかとなり,術後早期の蛋白異化への予防策として神経筋電気刺激療法を用いた報告が出てきている。左心補助人工心臓装着周術期においても,身体機能を維持するには骨格筋蛋白異化の抑制が重要であると思われるが,エビデンスが十分ではない。本稿では,左心補助人工心臓装着患者を対象とした神経筋電気刺激療法を用いたリハビリテーション介入について,これまで我々が実践してきた経験を含め概説する。
症例報告
  • 宮﨑 勇輔, 小尾口 邦彦, 福井 道彦, 加藤 之紀, 和田 亨, 横峯 辰生, 小田 裕太, 大手 裕之
    2018 年25 巻4 号 p. 255-258
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓症による心停止に対し,機械的胸部圧迫装置が有用であったが,外傷性肝・脾損傷を併発し,開腹手術が必要となった症例を経験した。症例は73歳女性で,呼吸困難感を主訴に救急搬送され,来院後に心停止となった。直ちに心肺蘇生を開始,機械的胸部圧迫装置AutoPulse®(旭化成ゾールメディカル)を使用した。気管挿管・アドレナリン投与を行い自己心拍再開が得られた。心停止は肺血栓塞栓症によるものと診断した。ICU入室後は,血行動態は比較的保たれていたが,約15時間後から不安定となり,貧血の進行も認めた。腹部超音波検査・CTを実施し,多発肋骨骨折に伴う外傷性肝・脾損傷による出血性ショックと診断した。開腹し,脾臓摘出術と肝裂創部凝固止血術を実施した。症例は肥満(BMI 38 kg/m2)だったこともあり,AutoPulse®のバンド位置が尾側にずれ,合併症を生じたものと推測された。機械的胸部圧迫装置の使用では特性を十分理解し,合併症に注意する必要がある。
短報
委員会報告
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会
    2018 年25 巻4 号 p. 271-277
    発行日: 2018/07/01
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー
    日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2016作成特別委員会は,J-SSCG2016の普及状況をモニタリングすることと,今後のガイドライン改訂における改善点を明らかにすることを目的に,日本集中治療医学会,日本救急医学会の両学会員を対象とし,J-SSCG2016の使用に関する実態調査を実施した。610名から回答を得た。回答者の86%でJ-SSCG2016が活用されており,50~75%程度の敗血症患者でガイドラインに準じた治療が行われていた。また,回答者の83%が診療の標準化,51%が教育の向上にJ-SSCG2016が役立つと評価した。一方,ガイドラインの存在意義,作成工程や発行・公開方法,両学会員以外の一般医療従事者における普及に関する問題を指摘する意見もあった。本調査結果を今後のJ-SSCG改訂に活かし,より実用的なガイドラインとして発展させていくことが重要と考えられる。
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