日本集中治療医学会雑誌
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22 巻, 5 号
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編集委員会より
今号のハイライト
原著
  • 椎野 泰和, 宮本 聡美, 杉浦 潤, 竹原 延治, 高橋 治郎, 堀田 敏弘, 井上 貴博, 鈴木 幸一郎
    2015 年22 巻5 号 p. 405-410
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】岡山県における小児重症外傷の疫学情報,治療成績を調査し,小児外傷医療の最適化に資すること。【方法】対象は2008年1月1日から2010年12月31日までの3年間に,外傷を原因としてICUへ入院した14歳以下の患者。県内で特定集中治療室管理料または救命救急入院料を算定している13病院中,小児重症外傷を受け入れていると回答を得た9病院に後方視的調査を行った。【結果】対象患者は149人で,全体の79.9%が救命救急センターに収容されていた。県全域での在室患者数は2人/day以下が全体の97.1%(1,064 day/1,096 day)であった。これにより,小児外傷ICU(pediatric trauma ICU, PT-ICU)の必要病床数は14歳以下人口10万人当たり1床程度と推測された。【結論】岡山県では小児重症外傷患者は集約的に収容されており,その治療成績も妥当であった。必要病床数を救命救急センターに整備し,さらなる治療成績の向上を計るべきである。
  • 田中 愛子, 澤野 宏隆, 吉永 雄一, 伊藤 裕介, 夏川 知輝, 林 靖之, 甲斐 達朗
    2015 年22 巻5 号 p. 411-416
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】重症救急患者を対象に,蛋白含有量の異なる2種類の濃厚流動食の効果を検討した。【方法】非蛋白カロリー/窒素比(non-protein calorie/nitrogen ratio, NPC/N)76のA群13例とNPC/N 132のS群15例について,前向き無作為比較試験を行った。【結果】患者背景に差はなく,蛋白投与量はA群で有意に多かった(P=0.02)。血清アルブミン,プレアルブミン値の推移はA群で高い傾向を示した(P=0.13,P=0.10)。Ventilator-free daysは中央値(四分位範囲)でA群17(15~20)日,S群9(2~15)日とA群で長い傾向にあった(P=0.10)が,SOFA scoreの推移や28日死亡率は両群間に有意差を認めなかった。【結論】蛋白含有量の多い濃厚流動食により,人工呼吸管理期間の短縮と中期的な栄養状態の改善が期待できる。
  • 伊藤 雄介, 川崎 達也, 松井 亨, 起塚 庸, 菊地 斉, 南野 初香, 金沢 貴保, 植田 育也
    2015 年22 巻5 号 p. 417-420
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】小児集中治療室(PICU)における人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia, VAP)の現状と人工呼吸器関連事象(ventilator-associated events, VAE)サーベイランスの評価を行う。【方法】侵襲的人工呼吸管理を48時間以上施行した患者を対象とした,前方視VAPサーベイランスおよび同時期の後方視VAEサーベイランスを行った。【結果】対象患者200名のうち,VAPは12件, 7.1件/1,000呼吸器管理日数,VAEは16件, 9.4件/1,000呼吸器管理日数であった。人工呼吸器装着期間・ICU入室日数に関してVAPとVAEサーベイランスともに陽性群と陰性群で差が見られたが,ICU死亡率は両サーベイランスともに差が見られなかった。VAP 12例のうちVAE基準を満たしたものは3例のみであった。【結論】成人の基準を用いたVAEサーベイランスは,小児においてもVAPに代わり人工呼吸器使用管理の指標となる可能性がある。
症例報告
  • 斉藤 仁志, 品川 尚文, 石川 岳彦, 丸藤 哲, 森本 裕二
    2015 年22 巻5 号 p. 421-424
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫不全ウイルス感染による後天性免疫不全症候群に罹患した30歳男性が,ニューモシスチス肺炎発症を契機とした間質性肺炎による呼吸不全に陥った後,人工呼吸管理中に気胸を発症した。右気胸に対し持続胸腔ドレナージを実施したが,漏気が持続し,気管支胸膜瘻を呈するに至った。外科的治療が必要と思われたが,高度呼吸機能障害の状態にあり,免疫不全状態を合併しているため,手術侵襲が大きくなる可能性があることなどから手術は危険であると判断した。そこで経気管支鏡的に漏気の責任気管支を同定し,シリコン製の充填材を用いた気管支鏡下気管支充填術を実施した。その結果,十分な肺の拡張と呼吸機能の改善を得て人工呼吸器を離脱することに成功し,漏気の責任気管支が同定できたこともあり,外科的治療が可能となった。気管支鏡下気管支充填術は,本症例のような外科的手術が危険と考えられる気管支胸膜瘻に対する有効な選択肢の1つとなり得ると考える。
  • 橘 一也, 竹内 宗之, 清水 義之, 簱智 武志, 津田 雅世, 文 一恵, 井坂 華奈子, 木内 恵子
    2015 年22 巻5 号 p. 425-429
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】小児集中治療室(PICU)での神経筋遮断薬持続投与の状況を調査する。【方法】2010年1月~2012年12月に当院PICUで人工呼吸管理を要した症例のうち,臭化ベクロニウム(vecuronium bromide, Vb)の持続投与を要した症例を対象とした。持続Vb投与理由で群分けをし,投与期間,総投与量,投与終了から抜管までの時間などを後ろ向きに調査した。【結果】対象は84例(月齢中央値2ヵ月)で,人工呼吸管理を要した全症例(799例)の10.5%であった。投与理由は肺高血圧発作予防(33例,投与期間中央値;43時間),肺保護換気補助(16例,72時間),術創部安静(12例,112時間),腹圧軽減(9例,63時間),低体温療法(5例,116時間),気道出血(5例,93時間),その他(4例,133時間)であった。【結論】各群で投与開始や終了に明確な基準はなく,今後投与目的別に神経筋遮断薬が患児予後に及ぼす影響を検討していく必要がある。
  • 奥野 英雄, 安宅 一晃, 制野 勇介, 梅井 菜央, 大塚 康義, 宇城 敦司, 嶋岡 英輝
    2015 年22 巻5 号 p. 430-434
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    百日咳罹患後,非定型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome, aHUS)を発症した一例を報告する。症例は生後2ヵ月女児。百日咳で前医入院中に溶血性貧血,血小板数減少,腎機能悪化を認め,当院に転院した(第1病日)。ICUで持続血液透析(continuous hemodialysis, CHD)を行いつつ,血漿交換(plasma exchange, PE)を7日間連日施行した。入院後尿量は減少し,第6病日から3日間無尿となったが第9病日から利尿期に入り,血小板数も増加に転じた。第9病日にPEを中止し,新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma, FFP)輸注に変更するも,尿量低下や血小板数減少など症状再燃はなかった。第14病日にCHDを離脱し,第25病日FFP輸注を終了した。第42病日に腎機能正常化を確認し退院した。ベロ毒素産生大腸菌の関与はなく,a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs, number 13(ADAMTS13)活性も正常で血栓性血小板減少性紫斑病も否定的であり,aHUSと診断した。百日咳の経過中に腎機能低下,溶血性貧血,血小板数低下が認められた時には,aHUSの合併を考慮する必要がある。
  • 吉田 恵, 桑原 由佳, 木村 康宏, 七尾 大観, 菅原 陽, 西澤 英雄
    2015 年22 巻5 号 p. 435-438
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性。腹痛と悪心嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した。血液生化学検査と腹部造影CT検査から重症急性膵炎の診断で入院した。入院時,急性膵炎の重症度判定基準による予後因子1点であったが,入院2日目に5点に悪化したため,翌日ICU入室となった。入院時の血清トリグリセリド(triglyceride, TG)値12,815 mg/dlと異常高値を認め,著明な高TG血症が急性膵炎の原因と考えられたが,ICU入室時のTG値は1,990 mg/dlまで低下していたため血漿交換は施行せず,インスリンとヘパリンの持続静脈内投与にてTG値の低下を図った。ICU入室後TG値は順調に低下し,輸液,経腸栄養などの支持療法によって急性膵炎は改善,入室14日目にICU退室となった。本症例は糖尿病,肥満,薬剤など複合的要因によって著明な高TG血症をきたしたと考えられた。
  • 木村 翔, 本田 隆文, 平井 希, 保科 しほ, 浜田 洋通, 川村 美朋子, 堀江 稔, 寺井 勝
    2015 年22 巻5 号 p. 439-442
    発行日: 2015/09/01
    公開日: 2015/09/12
    ジャーナル フリー
    症例は4歳,男児。既往歴や家族歴は特にない。外出しようとした玄関先で失神し,9分後救急隊車内収容時に心肺停止であったため蘇生が開始された。心停止から30分で自己心拍が再開した。蘇生時の頻回の多形性心室頻拍と,それに続く心室細動からカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia, CPVT)を疑い,遺伝子検査で常染色体劣性遺伝のcalsequestrin 2CASQ2)遺伝子異常を2ヵ所認め,確定診断に至った。神経学的後遺症を残したものの,現在β遮断薬内服で再発作を認めず管理している。診断や薬効評価に関して,幼児では運動負荷検査の実施が難しいため,ホルター心電計装着下で家族と共に運動させるなどの工夫が必要である。
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