抄録
ヒト免疫不全ウイルス感染による後天性免疫不全症候群に罹患した30歳男性が,ニューモシスチス肺炎発症を契機とした間質性肺炎による呼吸不全に陥った後,人工呼吸管理中に気胸を発症した。右気胸に対し持続胸腔ドレナージを実施したが,漏気が持続し,気管支胸膜瘻を呈するに至った。外科的治療が必要と思われたが,高度呼吸機能障害の状態にあり,免疫不全状態を合併しているため,手術侵襲が大きくなる可能性があることなどから手術は危険であると判断した。そこで経気管支鏡的に漏気の責任気管支を同定し,シリコン製の充填材を用いた気管支鏡下気管支充填術を実施した。その結果,十分な肺の拡張と呼吸機能の改善を得て人工呼吸器を離脱することに成功し,漏気の責任気管支が同定できたこともあり,外科的治療が可能となった。気管支鏡下気管支充填術は,本症例のような外科的手術が危険と考えられる気管支胸膜瘻に対する有効な選択肢の1つとなり得ると考える。