安全工学
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45 巻, 5 号
安全工学_2006_5
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
会告
安全への提言
総説
  • 首藤 俊夫
    2006 年45 巻5 号 p. 288-295
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    20 世紀後半,わが国の労働,製品および設備分野の安全性確保制度は,国が提示する詳細な技術基準を含む安全規制に基づき,民間がその基準を忠実に満たし,人による安全管理を実現することで,おおむね1980 年ころまでに高い安全性を達成したと言える.一方,欧米では,1980 年ころから,民間が自主的なリスクアセスメントを推進し,その評価結果を国や第三者機関が認証する「安全性能評価」を基本とする新しい安全規制の研究・導入が進められ,グローバルスタンダードとなりつつある.わが国でも2000 年前後から,建築や電気用品の分野で安全性能評価に基づく安全規制が開始されたが,その取組みは十分とは言えない. 欧米では安全性能評価の導入により市場原理に従って安全性を向上させる仕組みを確立したが,わが国では逆にさまざまな安全上の問題が顕在化してきた.この理由がどこにあるのかを,わが国と欧米の安全規制の変遷について歴史的検証を行い,世界一安全性の高い日本の実現に向けての課題と展望を考察する1)

  • 土屋 正春
    2006 年45 巻5 号 p. 296-303
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    工業製品の生産に使用されている機械設備の安全に関しては,体系化された国際標準の体系が構築されている.ISO 12100 を頂点するこの規格体系では,リスクアセスメントをベースとして,機械により安全性を確保することを基本とする考え方が貫かれており,機械安全を進めるうえでの国際的な共通認識になっている.ヨーロッパをはじめとして,国際市場における機械製品の流通の際には,機械安全国際標準への対応が,今まで以上に強く求められるようになっていくと考えられる. 日本でも労働安全衛生法の改正により,2006 年4 月から機械設備に対するリスクアセスメントが努力義務とされ,それを実施するための厚生労働省の指針には,この国際機械安全標準の考え方が取り入れられている.機械安全国際標準への対応は,産業事故を減少させると同時に,国際的な産業競争力の維持につながるものである.確実に効果的に効率よく対応していくため,規格の体系と,その背景について考察する.

  • ―ステークホルダーの安全の視点からの対応
    蟻生 俊夫
    2006 年45 巻5 号 p. 304-311
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    近年,CSR(corporate social responsibility,企業の社会的責任)への関心が急速に高まっている.CSR とは,「企業組織と社会の健全な成長を保護し,促進することを目的として,不祥事の発生を未然に防ぐとともに,社会に積極的に貢献していくために企業の内外に働きかける制度的義務と責任」と定義される.今日注目されているCSR においては,企業の持続的な発展を目的とすること,多様なステークホルダー(利害関係者)への対応を考慮すること,が特徴的と言える.CSR は,責任のレベルの観点から法的責任,経済的責任,倫理的責任,社会貢献的責任の四つに整理できる.2009 年には,ISO によるSR 規格(ISO 26000)が発行することになり,いずれの組織,企業にとってもSR(社会的責任)の実践・定着,特にステークホルダー・コミュニケーションが重要な経営課題になってくると見込まれる.本稿では,企業が実際にCSR を進めていくうえでの羅針盤ともなるCSR 経営理念・行動憲章・行動基準として「CSR イニシアチブ」の概念,考え方を紹介した.そして,企業にとってCSR イニシアチブとしての行動基準の開示がステークホルダー・コミュニケーションの有効な対策と期待されることを示した.さらに,消費者や従業員,地域社会・地球環境に対する安全の遂行は,CSR における法的責任や経済的責任,倫理的責任において重要な部分を占めており,CSR,もしくはSR を実践するうえで不可欠な要素となり得ることを指摘した.

  • 髙梨 啓和
    2006 年45 巻5 号 p. 312-318
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    水道水の変異原性を測定して安全性を評価することが研究されている.本稿では,関連する原著論文を調査して国内外の研究動向について整理し,今後のブレークスルーが期待される問題点の抽出を行った.研究初期には評価方法に関する研究や実態調査の研究が多く報告されていたが,近年では浄水処理による変異原性削減等の対策に関する研究が多く報告されていた.また,主要変異原性物質の探索に関する研究ではMX に着目した研究が多く報告されていたが,近年はその数が減少し,MX 以外の物質を探索した論文が多く報告されていた.最も多く用いられていた試験はAmes 試験であり,変異原性強度は10 000 net rev./l 程度以下とする報告が多く,同一の調査で10 倍程度以上の開きがあるとする報告が多かった.

  • 柏田 祥策
    2006 年45 巻5 号 p. 319-327
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    有史以前から化学物質を利用してきた人類は,今日までに2 000 万種を超える化学物質を合成している.経済流通している10 万種を超える化学物質の中には,ヒトおよび環境生物に有害な化学物質を多く含み,環境および生態系に悪影響を与えるリスクをもつものがある.Quality of Life の維持あるいは発展のためには,化学物質を有効に活用しながらそのようなリスクを回避して環境安全を保証する必要がある.化学物質の毒性を評価する手法として考案されたバイオアッセイは,化学物質登録といった規制のための毒性評価だけでなく,環境汚染による生態リスク評価のために,また工場排水および廃棄物処分場排水の環境安全を担保する環境監視ツールとして非常に有効である.バイオアッセイは,これまでの化学分析一辺倒な環境影響評価に生態影響情報を補完する重要な手法である.

資料
  • 小玉 剛
    2006 年45 巻5 号 p. 328-334
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    今後安全衛生を推進していくうえで,安全文化の醸成および定着を図っていくことが重要であることから,中央労働災害防止協会においては,安全文化の醸成および定着を図るための方策等について調査研究を行った. その結果,安全文化を醸成するためには,トップが安全衛生を重要視し,社是や事業所の方針等における安全衛生の重要性の明示,安全衛生の方針の表明等を行い,自ら安全衛生に関する指示や発言を積極的に行うとともに,安全衛生に関する人材や予算を確保すること,安全衛生スタッフと現場との間の双方向の情報伝達等をよく行うこと,また,このこと等により安全衛生スタッフが現場からよく協力を得られること,職場内のコミュニケーションが良好であること,安全衛生に関し事業所長,安全衛生スタッフ,現場が総合的に取り組むこと,その結果として,安全衛生管理体制がよく機能するとともに,現場は安全の確保と生産・業務効率との関係で安全の確保を優先すること等が必要であることが判明した.

  • ―その5:再び“変更管理について”と暴走反応の原因など
    小林 光夫
    2006 年45 巻5 号 p. 335-343
    発行日: 2006/10/15
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    今回が連載の最終回である.そこで前回の“変わる,変える”の補足を行う.それと以前に予告した暴走反応の原因になる温度上昇のいろいろ,そして“プロセス廃水の危険”“神は細部に宿る”について簡単に記す.

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