前号(Vol.13,No.5)では,高温液体から低温液体への急速な熱伝達による過熱液体の生成が引金となる蒸気爆発について述べたが,今号では相平衡の破壊による過熱液体の生成が引金となる蒸気爆発について述べる.
管中を伝ぱする爆ごう波を阻止するには,爆ごう波を一時的に中断させ,衝撃波から分離した火炎を消炎させる方法が考えられる.本報では管路に挿入した多孔板により爆ごう波の中断が生ずることを明らかにし,デトネーション・アレスタヘの応用が可能であることを示した.実験は1インチ管中の水索-空気当量混合物の爆ごうについて行ない,多孔板前後の火炎伝ぱ速度を測定し,これにより爆ごう波中断の度合を相対的に比較した.中心単一孔板では,孔径と中断の度合の関係は容易に求まり,孔径の小なるほど中断効果は大きい.孔径D0,孔数Nの多孔板では,D=√ND0で算出されるDなる径をもつ中心単一孔板の中断効果との比較により興味ある結果をえたほか,多孔板の流量抵抗と爆ごう波中断効果の関係についても考察した.
前報と同じ方法により,トランス-2-ブテンと酸素または空気との混合ガスの爆発限界を高温,減圧下 において,決定した. 酸素系の場合,T2Bの組成が30~50vol%において,温度に関して3つの限界をもつ領域が出見され た.この爆発反応に熱爆発の理論を適用して,見かけの活性化エネルギを求めた.その結果,酸索系に関しては,T2Bの組成が5~50vol%の場合,活性化エネルギの差により,高温領域と低温領域に区別され,各領域ては反応機構が異なると推定される.
接触燃焼法熱線形可燃性ガス検知器の検知原理は一種の簡単な熱量測定であるが,動作特性の系統的な解析結果は発表されていない.そこで,基本的な動作特性と周囲条件の影響について実験を行なった.その結果,次の事柄が明らかになった.検知素子の温度抵抗変化は補償素子にも影響し,両者の抵抗変化は加算されて出力に現われる.素子固有の定数(熱容量,消費電力,熱損失,固有抵抗など)と検知感度との関係から小形で,しかも固有抵抗の大きいものでブリッジを構成するほど高感度が得られる.周囲条件の検知感度への影響を温度,湿度,電源電圧変動,試料ガス流量変動などについて調べた結果,1. 周囲温度の上昇とともに感度は低下する.また湿度の増加とともにわずかであるが増加する.2. 電源電圧変動の影響は検知対象ガスにより異なるが,メタンなど特殊なものを除けばあまり問題ではない.3. 試料ガス流量変動の影響は検知室の構造により決まる.
食品添加物の有害性が注目されているが,本研究ではリングオブン法(一般法および呈色剤リング法)に基づく清酒中のサリチル酸の簡易分析法について検討した.一般法ではNo.51A炉紙を使用し,展開濃縮溶液に0.028%アンモニア水,呈色剤に0.3wt%塩化第2鉄アセトン溶液および0.3wt%塩化第2銅アルコール溶液を使用し,90℃で分析操作を行ない,サリチル酸を約5%内の誤差で短時間に分析できた.また,あらかじめ各濃度の塩化第2鉄,塩化第2銅の各リングを作成したのち行なう呈色剤リング法は,サリチル酸の検出紙として使用できることがわかった.
発火温度は安全工学上重要な数値であるが,可燃性物質全般についてはデーダがまだ不備であり,現状では適切な予測方法がないので,今後も実測に頼らざるをえないと考えられる.著者は発火温度データを整備し,さらにはその推算法を探求するため,基礎的物質について一連の実測を行なっている.その測定結果の今回は15回の報告で,芳香族化合物についてである.
ねじ部を十分潤滑して,ボルト・ナットを量産用プレセット形トルクレンチで一定トルクでもって締付けても,人によって締付け力が±30%異なることがあきらかにされている.本研究においては,特別な装置を試作して,締付ける場合のトルクレンチの回転速度,回転加速度を測定したところ,未熟練者が締付けると,締付けるたびごとに速度・加速度が異なっていて,最終速度,最終加速度が高くなるほど締付け力が大きくなることがわかった.このことによって締付速度によってねじ部の摩擦係数が異なってくる こと,最終加速度によって慣性による締付け力が異なってくることが指摘されている.
現在,世に出ている数多くの含油廃水処理装置の大部分は,油のみを除去する装置である.これは水と油を結びつけている界面活性剤を除去することがむずかしいためでもあるが,含油廃水による環境汚染というと,油そのものの害ばかり強調される傾向のためでもあると思われる.環境汚染の強度からいえば,油よりむしろ界面活性剤に目を向けなければならないはずである.本報文は水と油が界面活性剤により全く均一に混合し,合った廃水を処理するため,日本酸素(株)が東芝機械(株)と共同で開発した,吸着,酸化,中和処理を組合せた装置について述べるものである.
本誌では咋年から日本産業衛生学会の許容濃度などの勧告のうち,許容濃度について紹介を始めたが,今年も日本産業衛生学会許容濃度等に関する委員会の委員長外山敏夫教授のおゆるしを得て,許容濃度について紹介する.今年新しく許容濃度を決定したものはジメチルホルムアミドおよび二酸化炭素で,従来の数値を改訂したのが二硫化炭素ゼある.また付録に石綿粉じん測定法が追加になっている.