国際市場に多大の影響を及ぼしているリスクベースド・アプローチ型の米国連邦法の29 CFR OSHA が規定するPSM(Process Safety Management)の底流にある“Safety through design”の概念に基づく“Layers of protection for plant”の考え方を紹介するとともに,今後のプロセスプラントの安全に関わるエンジニアリングとマネジメントに必要とする課題について述べる.
Augmented Reality とは,視野における現実世界をより強化する技術であり,具体的には,コンピュータと透過型ヘッドマウントディスプレイ等の表示装置を用いて,作業者が,現実世界にある対象を実際に見ながら,同時にその対象に関する別の情報を重ねて見ることを可能にする技術である. 本稿ではまず,このAugmented Reality の種々の分野への応用に関する提案と,それに対して残されている課題について概説する.さらに,これまで著者らが行ってきた研究の紹介を通して,Augmented Reality のヒューマンファクター分野への応用,すなわち,ヒューマンエラーの防止や作業者の知的支援を狙いとした応用の可能性について述べる.
共通の危険に直面したときでも,人はそれぞれの対応を示す.対応によっては,大きな事故の発生の要因になる.本文では,コンピュータによるリスクコミュニケーションの支援の方法を提案する.支援の方法の一つは,コミュニケーションのテキスト文をキーワードで表すことである.しかし,立場によってキーワードの意味が異なる.この問題を解決するために,複数のクラスで立場の多様性を表し,メッセージの意図も立場の遷移によって現れるという仮説をたてる.複数のクラスに対して2 クラスの分類学習を提案しキーワードの洗練化を行い,実験によってこの方法の有効性を示す.
本研究は,企業における環境リスク・マネジメントの構築にあたり,特に環境リスクコストに着目し,新たなフレームワークを提案する.生産流通システムの決定における延期-投機原理には,投機と延期の二つの側面があり,これらを環境リスクコストの決定に変換した場合,防止と対処に相当する点を検討する.さらに,これらは,環境リスク・マネジメントにおけるコントロールコスト,ファイナンシングコスト,という二つの費用に相当しており,これらの費用概念が,環境リスクコストの決定に重要な要素であることを主張する.本研究では,このような流れを新たなフレームワークで表現し,本フレームワークを用い,企業の環境活動を整理・検討することにより,企業における環境リスク・マネジメントのコスト配分の評価を容易にするものである.
大型の研究用の掘削機シミュレータを開発し,その運転者の挙動の研究を行ったが,これをもとに小型化・費用削減が可能なようにPC ベースの小型の危険体験シミュレータを開発した.投影方式や動揺装置等について大型機との比較でその性能を評価した.映像が主体であるため動揺については,自由度を削減できた.また,スクリーン形状や配置の工夫で視野についても遜色ない.また,同種のものの導入に関して,システム構成の縮小の可能性について検討し,プロジェクタの4 台から3 台への削減が可能と判断した.可搬性については,分解して運ぶことは困難であるが,小型化できたので,全体を車載することは可能と思われる.
大規模地震災害が発生した場合には,社会インフラに被害が発生し,社会・経済活動における諸機能に被害が波及する.被害全体の軽減対策を検討する場合には,被害の波及部分まで考慮に入れる必要があるが,被害を受ける諸要素は相互依存性を持つことから被害の全体像を推定することは容易でない.本稿では,大規模地震災害時における被害波及について説明し,被害全体の推定を支援する手法として,相互依存性解析のためのモデル化手法の一つであるインフルエンスダイアグラムの適用について検討した結果を報告する.
今回は,化学工場,石油貯蔵設備等で問題となる液体および粉体に関連した静電気現象を明解に再現する方法を紹介する.液体の噴霧,流動および撹拌,ならびに粉体の投入に関連した静電気現象を災害事例と関連づけて解説している.