日本の茶園に重大な被害を及ぼす害虫であるカンザワハダニは,チャへの窒素の施用にともなって寄生虫数・被害葉率ともに高くなるとされているが,このときの窒素肥料,茶葉内窒素化合物およびハダニの発育との関係については明らかにされていない.本研究では形態の異なる窒素肥料である堆肥と化学肥料さらにそれらの窒素施用量の違いによってチャの葉内窒素含量およびカンザワハダニの発育にどのような影響があるか調べた.
チャ幼木の化学肥料ポット栽培においては,窒素施肥量の増加に伴って新葉の全窒素量は増加し,新葉に接種したカンザワハダニの発育が早まった.一方,チャ幼木の窒素施肥量を等しくした堆肥あるいは化学肥料圃場栽培においては,堆肥区および化学肥料区ともに土壌の酸性化(pH 低下),および養分量の増加(EC 増加)が認められたが,その変化量は化学肥料区の方が堆肥区よりも大きかった.葉の全窒素量は全炭素量と同様に無施肥区<化学肥料区<堆肥区の順に増加していたが,葉に接種したカンザワハダニの発育は堆肥区で遅れることが観察された.
これらの結果から,化学肥料,堆肥ともに窒素施肥量の増加に伴って茶葉の全窒素量を増加させるが化学肥料はカンザワハダニの発育期間の短縮を,堆肥はその発育速度を低減させる可能性が示唆された.
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