本研究では,荒廃林地にブタを放牧し,林内の植生管理を図ると同時に,自給飼料給与による小規模養豚の可能性を検討するため,去勢バークシャー種3頭(20週齢,平均体重35kg)をスギ(Cryptomeria japonica D. Don) およびタイワンアサマツゲ(Buxus microphylla Siebold et Zucc. var. sinica Rehder et E.H. Wilson)主体の林地(10a)に2011年8月から翌年1月にかけて放牧した.放牧期間中,ブタには飼料用籾米を主体とする発酵飼料,トウフ粕サイレージ,生トウフ粕および飼料用玄米の炊飯を不断給与し,ブタの行動や林床植生などを調べた.得られた結果は以下のとおりである.
放牧したブタは日中約半分の時間をルーティング(鼻先を土中に潜り込ませて,上へ突き上げるようにして掘り返す行動)に費やした.供試した林園にはクズ(Pueraria lobata(Willd.)Ohwi)が優占していたものの,ブタ放牧区(試験区)では放牧開始後32日目にはすべて消失し,裸地率は禁牧区(対照区:2a)に比べ試験区で有意に大きかった(P<0.05).放牧開始後32日目の植物現存量についても,対照区に比べ試験区で有意に低い値を示した(P<0.05).その一方で,試験区ではスズタケ(Sasamorpha borealis(Hack.) Nakai)およびメダケ(Pleioblastus Simonii(Carrière)Nakai)が残存した.放牧開始から1ヵ月間,ブタ2頭の発育は停滞し,うち1頭は退牧した.しかしながら,残り2頭はその後約4ヵ月間にわたり順調に発育し,41週齢の体重は105および84kgであった.
以上より,放牧直後におけるブタの放牧環境への馴致方法に課題が残されたものの,その後,飼料用米を主体とした自給飼料を給与したブタが順調な発育を示し,荒廃林地の植生管理におけるブタ放牧の有効性が示されたことから,荒廃林地を用いた小規模養豚は可能であることが示唆された.
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