本研究では,日本の有機農家の農場実践に関する聞き取り結果を,欧州の農業社会学のプルフ小農論の概念である共同-生産と自立/自律性の視点から分析と考察を行った.
その結果,有機農家らの農場実践が共同-生産の要素である農業生産における社会的関係が鍵となり展開し,自然資源と社会資源の活用において均衡し,相互作用・変換し,それぞれの有機農業を形成していることが確認された.
有機農業現場を担う有機農家らが農場実践の中で,小農や家族農業という形態を自らの農業と自然資源,社会資源の維持・保全の側面から評価していることが観察された.その有様からは有機農業の再定義の方向性が示された.また農業の大規模・企業化による影響や農業資源の維持・保全という観点から批判的意見が形成されており,それに対する小農や家族農業への評価が同時的に観察された.
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