水田の有機栽培が生物多様性保全に与える影響を検証するため,二種類の研究を行った.まず全国規模の野外調査では,延べ1000ほ場の水田において,植物,無脊椎動物,両生類,魚類および鳥類の種数または個体数を計測した.その結果,有機栽培では慣行栽培と比較して,多くの生物群の種数または個体数が多いことが明らかとなった.次に,水田の有機栽培と生物多様性の関係について,国内の文献を収集するためのシステマティックレビューを行った.その結果,48件の事例を特定した,有機栽培は植物,無脊椎動物,鳥類の種数や個体数を高める効果が一貫して報告されていることが分かった.これらの成果は,水田の有機栽培が生物多様性を高める有力な方法の一つであることを示している.今後,有機栽培における農業生産性と生物多様性の両立のためのさらなる研究が必要である.
北海道名寄市内で2009年から2016年にわたって開催された家族参加型有機菜園プログラム(以下,本プログラム)を調査対象とし,その効果について知見を得る目的で,懇談の場における親からのスピーチを計量テキスト分析で解析した.参加動機に関するスピーチは58人の親から64回発せられた(複数年度参加者については初年度分のみを対象).分析の結果,募集案内が園と学校において配布されたことが参加の切っ掛けであること,子どもが農作業をすることで野菜を食べるようになって欲しいこと,本プログラムでの体験がポジティブ感情につながって欲しいことが読み取れた.感想に関するスピーチは79人の親から172回発せられた.分析の結果,畑で野菜の生長を感じながら農作業をしたことにより子どもが嫌いだった野菜を食べるようになったこと,美味しい野菜を収穫できて満足だったこと,このような機会は好評価に値すること,これらのことがポジティブ感情につながっていること,そして指導者と交流できて良かったことが読み取れた.しかしながら,有機菜園に特有の「無農薬」,「無化学肥料」および「自然農法」といったコードが付与されたスピーチは,参加動機においてそれぞれわずか1つずつ存在したのみであった.
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