土壤中における
Bacillus thuringiensis菌数の消長と在来微生物との競合関係の有無を明らかにするために,土性および土質の異なる3桑園から採取した土壤(A:沖積層壤土,B:洪積層火山灰土埴壤土,C:沖積層砂土)とA試験区内の9地点から採取した土壤について,滅菌処理した条件下における
B.t.菌数の消長をしらべた。
無処理土壤へ混入された2種類の
B.t. (AF101とvar.
kurstaki)は,供試したいずれの土壤においても時間の経過とともに減少した。これに対し,滅菌処理したA試験区土壤では実験開始後5日目にAF101で100倍,var.
kurstakiで10倍ほどの増加が認められた。その後,菌数はAF101で80日間,var.
kurstakiで60日間ほぼ一定に保たれていた。こうした増加はBおよびC試験区土壤ではみられず,混入時の値を保持していた。しかし試験区によっては対照区と同様に次第に減少した。A試験区内の9地点から採取した土壤を滅菌処理したあと,AF101を混入してこの土壤での
B.t.の消長をしらべた。9地点から採取した土壤のうち3地点の土壤において,AF101は10∼100倍程度増加した。残る6地点からの土壤では増加はみられなかった。増加がみられた3地点の土壤における
B.t.は,いずれも発芽,増殖,芽胞形成,安定化という共通のパターンを示し,芽胞化した
B.t.は実験期間内では再発芽せず,2次的増殖も認められなかった。
これらの実験事実は,土壤へ導入された
B.t.は土壤中に存在する在来微生物との競合によってその消長が左右されることを示している。
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