日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
15 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 小久保 醇
    1971 年 15 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    茨城県鹿島地方において恒常的に出現しているマツカレハの第2回成虫について,その出現にもっとも密接に関連している第1回成虫(越冬世代成虫)の羽化時期,体の大きさ,出現率などを調べた。その結果,
    1) 第1回成虫の羽化時期は年によって大きく変動することはなく,例年7月5日頃を中心とするほぼ1か月の期間内に集中していた。
    2) 一般に,第2回成虫は第1回成虫に比較して体が小さく,たとえばこれを蛹の体重でみると,前者は後者の約1/2であった。
    3) 平常年には第1世代個体群のほとんどすべてが第2回成虫になるとみてよいが,1966年にみられたように,その出現率が25%にみたない年もあった。
    4) 第2回成虫の出現は主として気象条件によるが,一方,個体のもつ質的なちがいも大きな影響を及ぼすと考えられる。
  • 大久保 宣雄, 岸本 良一
    1971 年 15 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ジョンソン・テイラー式サクショントラップを使って,トビイロウンカの第4, 5回成虫期の飛しょう行動の日周期性を調査した。個体数の多かったツマグロヨコバイの飛しょう行動についても調べ,比較した。
    トビイロウンカ成虫は第4回成虫期には夜明け前後と日没前後に飛び立ち,薄明飛しょう,二山型の日周期性を示した。飛び立ち時刻の明るさは朝夕ともに約1ルックスから200ルックスの狭い範囲であった。第5回成虫期には主に低温による飛び立ち行動の抑制によって朝夕の二山型,夕方だけの一山型,昼間型の3種類の日周期性の型がみられた。飛び立ち行動の温度閾値は17.0°C前後であった。また11km/hr以上の風速も飛び立ち行動を抑制した。
    一般的に飛び立ち行動には移動飛しょう行動の特徴がみられた。また飛び立った雌成虫は未交尾であって,移動飛しょうは性的未成熟期に起こるものと思われる。
    両成虫期とも,前半には雌が多く,後半には雌が多く飛び立つ傾向であったが,全体では性比は44.1%で雄の方が多かった。
    ツマグロヨコバイは日没後のみ飛び立ち,その時刻の明るさは0.1から20ルックスの範囲であって,トビイロウンカの薄明飛しょう型と比較して,むしろ夜行型に近かった。また12km/hr以上の風速も飛び立ち行動を抑制した。
  • とくに令を周期とした,致死率の変動
    中島 誠, 吉田 治男
    1971 年 15 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    数品種のカイコ幼虫,主として金色の幼虫を供試して,紫外線致死に対する一つの令中の感受性の変動を明らかにするために実験を行ない,次の結果を得た。
    第1令∼第3令の紫外線致死に対する感受性には,一つの令を周期とした変動がみられ,令の前半および末期の感受性は極めて低く,令の約60%経過時に最高の感受性を示した。
    この感受性の最も高い時期は致死障害のcritical organと考えられる真皮細胞のDNA合成後期にあたっていた。
    また紫外線による致死障害には,部分的ではあるが顕著な光回復がみとめられた。
    以上の結果にもとずき,カイコの紫外線による致死障害を微生物などのそれと比較検討し,光回復性の障害は真皮細胞の核ないしDNAの障害に起因するものであろうと考察した。
  • 内田 俊郎
    1971 年 15 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Influences of temperature on the number of eggs deposited, egg mortality, larval and pupal mortality, number of adults emerged, duration of developmental period and adult longevity of six different species of Bruchid infesting stored beans were studied under laboratory conditions. Callosobruchus maculatus was most resistant to high temperature, not only in oviposition but also in egg mortality and larval mortality. C. analis was the next. C. rhodesianus and C. phaseoli showed high mortality in the high temperature range. Zabrotes subfasciatus and C. chinensis were intermediate. The optimum range of temperature for oviposition, survival of egg and of the larvae was different for different species and different geographical strains, and showed the same order of differences with respect to high temperature resistance. Based upon the law of total effective temperature, point of developmental zero was estimated. It was 18°C or 17°C for C. maculatus and 13°C or 12°C for C. chinensis and C. phaseoli. C. rhodesianus, C. analis and Z. subfasciatus took intermediate temperatures. This order was almost the same with that of high temperature resistance.
  • 第4報 長日照処理が繁殖に及ぼす影響
    大津 正英
    1971 年 15 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    トウホクノウサギは,一般野生哺乳類のごとく,比較的明瞭な繁殖周期を持っており,卵巣重量は,11月から1月にかけて最小となり,2月下旬から3月には大きくなり始める。繁殖期は春から夏にわたるが,この頃の卵巣は大きく,肉眼的にも組織的にも活動的である。そして9月から10月には急速に退行する。
    本種の繁殖期に対する長日照効果を明らかにするため,1968年12月11日から成獣,雌25頭雄10頭に対して長日照処理を行なった。これらの動物には,日の出から午前9時までは自然光線により,その後日の入までは自然光と螢光燈により,また日の入から午後9時までは螢光燈によって照射を行なった。
    長日照処理動物の卵巣重量は,処理開始後50日経過した1月30日には急速に増大していた。自然状態における動物の卵巣が,これと同じように発育するのは,2月下旬から3月にかけてである。長日照処理は3月6日に終了したが,4月12日において,処理動物の卵巣重量に退化はみられなかった。
    対照動物では2月26日に最初の妊娠個体が認められ,また最初の出産は4月5日で産児数は3頭であった。処理動物の最初の妊娠個体は1月30日に認められ,最初の出産は2月22日で産児数は1頭であった。処理動物の繁殖は2月22日から4月10日まで続き,その後4月11日から6月29日まで中断したが,6月30日に再開し,8月22日まで繁殖を続けた。
    長日照処理動物と対照動物の卵巣組織には,周年成熟しているか,それに近い濾胞が存在しているのがみられた。
  • 高橋 史樹, 水田 国康
    1971 年 15 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 1971/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    モウソウチクの小枝にゴールを作るモウソウタマコバチとその寄生蜂3種についての生活環と寄生の経過を京都市西部の竹林において調査した。適当な間隔でいろいろの時期にゴールを採集し,ゴールの中の種を判別し,発育の程度をみて,4種の蜂の発育経過をしらべた。また適当な時期に竹の主枝全体あるいはゴール1個ずつに袋をかける方法によって寄生関係と寄生時期を検討した。その結果,
    モウソウタマコバチは5月上旬に羽化し竹の新芽に産卵し,ゴールを作る。1個のゴールに1頭の幼虫が9月まで生長を続け,蛹化して越冬する。
    モウソウタマオナガコバチは5月中・下旬に羽化し,モウソウタマコバチの作った若いゴールに産卵する。しかし,モウソウタマコバチ幼虫に寄生するのではなく,客生の生活様式をもち,ゴールを横取りし,モウソウタマコバチ幼虫と同じようにゴールの内壁を食ってすみやかに生長する。8月には体の大きさは最大値に達し,幼虫のまま越冬する。翌春4月に蛹化する。1個のゴールに数個産卵されるが,1頭のみ羽化する。
    ナガコバチ科のEupelmus sp.はモウソウタマコバチ幼虫に寄生し,幼虫越冬して5月下旬から6月上旬にかけて羽化する。1個のゴールから1頭羽化する。
    モンコガネコバチは多化性で,第1回目の羽化は6月に行なわれる。第2回目以後の羽化は8月から10月まで続く。1年に3化する個体があるが,2化か3化のいずれが主要であるかは確認できなかった。数頭の幼虫がモウソウタマコバチ幼虫に寄生し,幼虫で越冬する。ゴール1個から平均約4.4頭羽化する。
    羽化成虫の性比は,モウソウタマコバチの雌は雄の約3倍,モウソウタマオナガコバチは雌雄ほぼ同数,ナガコバチの1種は雌が雄よりやや多い。モンコガネコバチの雌は雄の約2.4倍である。
feedback
Top