実験社会心理学研究
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32 巻, 1 号
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  • 大坊 郁夫, 瀧本 誓
    1992 年 32 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    対人関係が発展する各段階においては, 嘘をつくことが必要で重要な役割をもつことがある。真実を伝え合うことはのぞましいことではあるが, 対人関係の均衡を保つために欺瞞行為をとらなければならないこともある。
    この研究の目的は, 対面的な2者間の会話事態における欺瞞に伴うコミュニケーション特徴を明らかにすることである。被験者は男女各24名, 合計48名の大学生である。互いに未知の同性の被験者が組み合わせられるが, 一人は欺瞞者, 他は非欺瞞者に割り当てられる。あらかじめ実施してある態度調査の結果に基づき, 2人ともに態度の一致している項目を選択し, 一方の被験者には自分の態度とは反対の立場で発言するよう指示した。これが欺瞞者である。その相手についてはこの操作はせず, かつ, このような操作があることも伝えない。
    会話 (12分間) の前後には被験者は会話相手についてのパーソナリティ, 魅力評定を求めた。
    主な結果としては, 欺瞞者は非欺瞞者に比べて発言が活発であった。特に, この関係は女性で頻著である。視線行動については, 一般的な事態では女性>男性の関係があるが, 欺瞞者については, 男性の活動性が上昇し, 女性≒男性の関係になっていた。身体接触行動については, 欺瞞者は手・腕への接触が相手よりも多かった。この関係は, 男性で著明であった。これらの男女によって異なる特徴は, 欺瞞を導入しない一般的な会話事態での各チャネルの活動性の関係とは反するものであった。さらに, 女性の欺瞞者は, 会話後には特におしゃべりで, ユーモアがあり, 感じがよく, 魅力的と肯定的に評定されていた。
    これらの結果によると, 欺瞞の導入によって生じる心理的変化は, 一般的には抑制されているコミュニケーション・チャネルが活性化される形で示され, それが女性ではより意識的な行為として, 男性では無意識的な行為に強く反映されることがうかがわれる。
  • 能力の統制可能性と重要・有益性および自己能力予測
    沼崎 誠
    1992 年 32 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 評価する能力の特質により, その自己の能力に関する情報収集行動が異なることを検証することにあった。能力の統制可能性として能力の先天性-後天性を教示により操作した。また, 能力の重要性・有益性の知覚を独立変数とした。さらに, 自己の能力の高低を被験者に予測させた。成功時の診断性と失敗時の診断性を操作した4課題から課題を選択させ, さらに, 各課題のやりたさを回答させた。
    仮説は次の通りであった。1) 能力が先天的で改善不能であると教示された被験者は, 後天的で改善可能であると教示された被験者に比べ, 自己の能力が低いことを示す診断性の高い情報を選好しないであろう。2) 能力の重要性・有益性を高く知覚した被験者は, 自己査定動機が強く, 自己の能力が高い能力であることを示す情報であれ, 低いことを示す情報であれ選好するであろう。3) 自己の能力を高く予測した被験者は, 自己査定動機が強く, 自己の能力が高い能力であることを示す情報であれ, 低いことを示す情報であれ選好するであろう。
    重要性・有益性を高く知覚した被験者は, 低く知覚した被験者に比べ, 自己査定的行動を取り, 仮説2は支持された。また, 先天的能力であると教示された被験者は, 重要性・有益性を低く知覚した場合には, 自己高揚的行動を取り, 仮説1は部分的に支持された。また, 自己の能力を高く予測している被験者は, より自己査定的行動を取ることが示され, 仮説3は支持された。本研究の結果は, 評価する能力の特質により, 自己査定動機と自己高揚動機の強さが異なり, 自己の能力に関する情報収集行動が異なることを示唆している。
  • 小口 孝司
    1992 年 32 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究では, 音環境が自己開示に及ぼす効果を検討した。快適な音環境は自己開示を促進させるが, 不快な音環境は自己開示を抑制するだろうとの仮説が立てられた。被験者は大学生の男性17名, 女性16名であった。被験者は男女同数になるようにランダムに快適音条件, 不快音条件に割り振られた。結果, 被験者が自己開示をするのに好ましい音環境は性別により異なっていた。すなわち, 男性は快適な音環境を好んだのに対し, 女性は不快な音環境を好んだ。こうした選好に対応して, 男性は快適音環境で自己開示が多かったのに対し, 女性は不快音環境で自己開示が多かった。音環境の選好は男女で異なっていたが, 仮説は支持されたと言える。この結果は, 自己開示動機に基づく結果からも支持された。
  • SOCIAL ANXIETYについての実験的研究 (1)
    横山 博司, 坂田 桐子, 黒川 正流, 生和 秀敏
    1992 年 32 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 「自分が他者に注意を向け, 他者を自分の客体として意識している時には, 他者共在は不安を減少させる。逆に, 他者が自分に注意を向け, 自分を他者の客体として意識している時には, 他者共在は不安を増大させる」という仮説を実験的に検証することである。被験者は女子大学生110名である。不安喚起刺激には「ホラー・ビデオ」と「ポルノ・ビデオ」を用いた。被験者は「ホラー・ビデオ」あるいは「ポルノ・ビデオ」が呈示される条件のもとで, 次の立場の異なる4条件の中のいずれか一つの条件で実験を受けた。実験条件は不安喚起刺激に曝されている自分の表情がモニターテレビを通して他者に観察される「被観察条件」と, それをモニターテレビを通して観察することができる「観察条件」, および衝立で仕切られた部屋で2人の被験者がビデオを見る「共在条件」及び一人でビデオを見る「一人条件」である。不安の測度としては, 生理指標として心拍率と, 主観的指標としている簡易版AACLを用いた。
    本実験の結果, 以下の3点のことがわかった。1) 他者の不安反応に及ぼす影響は, 単に他者が共在していることではなく, 他者との共在様式に規定される両者の立場の相違によって影響される。2) 他者共在は, 自分が他者を「観察できる」という能動的立場にある場合には不安を低減させる効果を持つが, 「観察される」という受動的立場にある場合には逆に不安を高める。3) 脅威刺激や脅威事態の性質の違いによって引き起こされる主情動が異なり, その質的な違いが「観察される」状況下での不安反応の程度に影響を及ぼしている。
  • 実験的シミュレーションと調査
    坂元 章
    1992 年 32 巻 1 号 p. 45-59
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, (1) シミュレーション・ゲームを用いる実験によって, 同額を徴収された場合に, 直接税, 外税, 内税のいずれが最も負担感のあるもの「であるのか」を示すと同時に, (2) 社会調査によって, ちまたではいずれが負担感のあるもの「と思われているか」を調べ, (3) 実験による「実際の」負担感と調査による「考えられている」負担感とを比較することである。実験では, 25名の大学生の被験者は, 収入を得, 消費をし, 税金を払う経済場面を模擬したゲームに参加した。被験者は, 3つの条件 (直接税条件, 外税条件, 内税条件) のいずれかにランダムに分けられた。結果は, 外税条件, 直接税条件, 内税条件の前者の被験者ほど, 最も負担感を感じていた。一方, 調査では, 210名の成人の被験者に, 同額を徴収されたときに, 各々の税金のいずれが負担感の強いものと考えているかを質問した。70%の被験者が, 直接税は, 外税, 内税のいずれよりも負担感があると感じ, 40%の被験者が, 外税と内税の負担感には差がないと考えていた。実験と調査の負担感の差異が大きかったことから, これまで実証的な検討の乏しいままに論議されてきた消費税の問題に関し, 客観的事実を提供する実験的研究の重要性が主張された。他に, 価値関数の概形は, 税金の負担感を予測しないことが示された。
  • 親密な関係と親密でない関係の比較
    高木 浩人
    1992 年 32 巻 1 号 p. 60-70
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究では, 親密さの程度の異なる関係間で, 自己開示が対人認知に与える影響を比較検討するために, 開示内容の望ましさを3水準, 開示者-被開示者の親密さの程度を2水準に操作した実験を行った。従属変数は, 印象評定より抽出された対人魅力, 能力, 活動性及び, 対人魅力を媒介する形で大きな影響を持つと考えられる, 知覚された個人志向性, 知覚された取り入りの動機, 知覚された真正性, 知覚された迷惑さの4つの認知的変数であった。
    分散分析の結果, 対人魅力において交互作用は認められなかった。しかし, 知覚された個人志向性に交互作用の傾向が認められたことより, 関係の親密さの程度によって, 自己開示の内容の望ましさが知覚される個人志向性に与える影響の異なることが示唆された。
    各変数間の偏相関を求めて, 親密さの程度のHigh-Lowで比較した。その結果, 親密さの程度によらず, 個人志向的な開示を行うことは, 同時に取り入りの動機を高く知覚される危険性をはらんだ行為であるということが示唆された。また, 親密さの程度が高い関係に特徴的であったのは, 個人志向性と真正性との間の正の関係であった。これは, 親密な関係がお互いの信頼関係によって成り立っていることを反映しているものと解釈した。
    4変数と対人魅力との偏相関を求め, 関係の親密さのHigh-Lowで比較した。両条件に共通であったのは, 迷惑さとの負の相関関係であり, High条件では真正性との, Low条件では個人志向性との正の相関関係がそれぞれ認められた。したがって, 対人魅力について考える場合, 個人志向性は, 比較的親密さの程度の低い人間関係において重要な変数であることが示唆された。
  • 共感性・社会的スキル・外向性
    鈴木 隆子
    1992 年 32 巻 1 号 p. 71-84
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 共感性・社会的スキル・外向性, 及びこれらの下位次元に注目し, 各要因がどのようなメカニズムで向社会的行動を生起させるのかを検討する目的で実施された。女子大学生115名に対し, 共感性・社会的スキル・外向性・向社会的行動の各尺度を用いて質問紙調査を行った。
    分析の結果, 向社会的行動に強い正の影響を及ぼしていたのは, 共感性と外向性であった。また, 社会的スキルに強い影響があったのは外向性であった。これらは, 仮説を部分的に支持したため, 共感性と社会的スキルの下位概念に注目し, 因子分析を行った。その結果, 共感性においては, 冷静さ, 緊急時の不安, 感受性, 立場の理解と命名された4因子, 社会的スキルにおいては, 問題の処理, 積極性, 感情の表出, 周囲への配慮, 謝罪, 他者とのコミュニケーションと命名された6因子が抽出された。そこで, これら10因子に外向性を加え, 新たに向社会的行動との因果関係について解析した。その結果, 向社会的行動に直接強い正の影響を及ぼしていたのは, 他者とのコミュニケーション, 感受性, 冷静さの3つであった。立場の理解は冷静さを, また, 問題の処理や感情の表出, 外向性, 積極性の4つは, 他者とのコミュニケーションを媒介として正の影響を与えていた。ただし, 積極性の効果は弱いものであった。
    以上の結果から, 非緊急事態における向社会的行動をとりやすいのは, 相手の立場になって考えたり, 他者の意見を考慮できることに加え, 他人の不幸に冷静でいられる人, 或は, 映画や小説の登場人物に感情移入しやすい人, 他者との交流が上手な人が考えられた。また, 対人面でのトラブル処理が上手な人や, 外向的・積極的な人が, 他者との交流にも長けていた場合に, 向社会的行動をとりやすいものと考察された。
    また, 今後の課題として, 向社会的行動における場面ごとの検討, 向社会的行動と他の影響要因との関連, 女子大学生以外のサンプルについての検討等が挙げられた。
  • 桜井 茂男
    1992 年 32 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    This study was designed to construct a new self-consciousness scale for Japanese children, examine the reliability and validity of the scale, and investigate the relations between self-consciousness and seven personality traits: shyness, self-exhibition, loneliness, and four kinds of perceived competence. A questionnaire consisting of twenty-eight self-consciousness items, 90 items concerning the above ersonality traits, and 25 social desirability items was administered to 424 5th-and 6th-graders, and factor analysis concerning self-consciousness items revealed 2 solutions as predicted; one factor was nemed public self-consciousness and the other was named private self-consciousness. The reliability and validity was highly estimated. Public self-consciousness score was positively related to the scores of shyness, self-exhibition, and loneliness. Private self-consciousness score was negatively related to the scores of shyness and loneliness, and also positively related to the scores of self-exhibition and four kinds of perceived competence. Results concerning private self-consciousness were inconsistent with the previous studies. It was understood from the developmental point of view.
  • 1992 年 32 巻 1 号 p. 100
    発行日: 1992年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
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