実験社会心理学研究
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21 巻, 2 号
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  • 三隅 二不二, 藤田 正
    1982 年 21 巻 2 号 p. 93-111
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    This study attempted to investigate the effects of PM organizational development (PMOD) in super market organization.
    The main results were as follows:
    (1) Two stores were facilitated by PMOD (Experimental stores), and experimental stores produced more effectiveness than control stores (35 stores)
    (2) There were two groups of supervisors; those who participated in PM sensitivity traning course (PMST groups) and the others who did not (non-PMST groups). So in PMST-groups was shown more effectiveness than in non-PMST-groups.
    (3) The effects of PM survey feedback and PMST were also examined on the leadership scores and the cognitive discrepency scores between selfrating and rating by surbordinates. PMST groups were higher in the score of leadrship P and lower in the score of the cognitive discrepancy of leadership M. But PM survey feedback effect was not clear.
    (4) There was a difference of organizational leadership structure between two experimental stores. One was P-type leadership structure andother was M-type leadership structure. But after PMOD, two stores had become to PM-type leadership structure equally.
  • 三者関係の認知におけるバランス傾向と認知的複雑性
    林 文俊
    1982 年 21 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 三者関係の認知 (p-o-q系) におけるバランス傾向の強弱の個人差を, 認知複雑性の高低から分析することを目的とした. pのoに対する関係をR1, pのqに対する関係をR2, oのqに対する関係のpによる認知をR3と表わした場合, 本研究では, R1が 〔+〕 となっている三者関係事態のみに限定して, バランス傾向を捉えた.
    被験者は, 女子高校2年生153名で, 認知的複雑性の高低によって, L群 (53名), M群 (48名), H群 (52名) に分けられた.
    主な結果は, 次のとおりである.
    1. 仮想場面においては, M群の被験者が, 〔R1 R2〕 が 〔+-〕 となっている事態で有意なバランスへの傾向を示さなかった. しかし, これ以外では, いずれもHeiderの所説から予想されるR3反応が有意に多く出現した.
    2. また, 仮想場面においては, 認知的複雑性の低い者の方が, バランス傾向が強い傾向にあった.
    3. 現実のoq関係 (R03) が「好きでも嫌いでもない」という関係にある事態では, いずれの被験者群においても, バランス理論から予測されるR3反応が有意に多く出現した.
    4. また, 現実場面においては, 仮想場面とは逆に, 認知的複雑性の高いH群のバランス傾向が, 他の2群よりも有意に強いことが知られた. このような結果については, 現実の対人認知事態でバランス図式がもつ意味の点から討論がなされた.
    5. バランス傾向と認知的複雑性との関係は, 必ずしも直線的なものでない可能性が示唆された.
  • 被験者の発達段階およびStimulus Personによる次元の変動性について
    内田 敏夫, 松原 敏浩
    1982 年 21 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は, パーソナリティ認知における次元の一般性を研究することにある. 特に, 被験者の発達段階および用いられた種々な刺激人物 (SP) を通じての次元の安定性を分析することを狙いとした. 被験者としては小学校5年生, 中学校2年生, 高校2年生, 大学2年生であった. 4種の年令群の各々の被験者数は, ほぼ100名から200名位であった. 8種の刺激人物が呈示された. 即ち, 父・母・きょうだい・友達・教師などである. 予備実験の結果から選択された45語のパーソナリティ特性語が用いられた. すべての特性語対間の類似性データが距離データに変換された後, Carroll & Chang (1970) の多次元尺度構成法 (INDSCAL) が適用された. 5次元解が採用された.
    得られた結果は, 次の通りであった.
    (1) 5次元の内容は “社会的評価” , “強靱性” , “個人的親しみ易さ” , “快適さ” , “明るさ” と解釈された. 後者の二つの次元の布置に部分的に特異なパターンが見られた.
    (2) 各次元は実質的には相互に独立であった. (1) で述べられた五つの次元の順序は, ウェイト値から見た相対的重要度と正の単調関係にあった.
    (3) ウェイトを分析すると, すべての年令段階において “社会的評価” が最も重要であることが見出された. そして, “強靱性” , “個人的親しみ易さ” および “明るさ” , の三つは, 年令段階の増加に伴ってウェイトを増加させたが, “快適さ”はウェイトを減少させた.
    (4) 刺激人物 (SP) のすべての種類についてもまた, “社会的評価” が最も重要であり, 次いで “強靱性” , さらに “個人的親しみ易さ” となった. “快適さ” と “明るさ” においては, 刺激人物 (SP) の問で重要度に関して少なからぬ差異が認められた.
  • 確信反応閾の検出
    小野 浩一
    1982 年 21 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は特定の対象-属性関係の観察頻度と信念形成の関係を実験的に検討したものである. すなわち, ある対象の個々の刺激事象を直接観察することによって形成された記述的信念から, その対象の属性についての推論的信念が形成されるには, 一貫した刺激事象が少なくとも何回観察されなければならないか, ということが本研究の主要なテーマである. そこで, 対象の属性についての推論的信念が形成されるのに必要な最少限度の刺激事象の観察頻度を確信反応閾と名づけた.
    実験は箱の中に白い石だけが入っていることを, 時系列的なランダム・サンプリングの結果から推定するもので, 判断に要する抽出個数が確信反応閾の値とされた. 実験条件は2つあり, Constant条件は箱の中の石の数が判明しているが, Variant条件は未知である. いずれも集団実験として行なわれ, Constant条件は石の数によってConstant 10, Constant 20 (同一被験者で153名), Constant 30 (62名) の3回, Variant条件は被験者を変えて2回 (Variant I: 64名, Variant II: 255名) にわたって測定が行なわれた.
    主な結果は次の通りであった.
    (1) Constant条件の確信反応閾は石の数のほぼ1/2である.
    (2) Variant条件の確信反応閾はVariant I: 6.571, Variant II: 8.717と2回の測定間で有意な差が生じたが, ともにConstant 20よりは小さかった.
    (3) 確信反応閾の値は正規分布に従う.
    (4) 確信反応閾の値は試行によって大きく変動する.
    (5) 確信反応閾の値には個人差がある.
    以上の結果から, 推論的信念が形成される際には, それ以前に一定の量の事実観察が必要であり, それを説明するために閾の概念を導入することが有効であることが示唆された. また, 確信反応閾には相対的確信反応閾と絶対的確信反応閾があり, 人は状況に応じてそれぞれのプロセスを使い分けている可能性が示唆された. さらに, 中期的な確信反応のパターンの理論モデルとしてロジスティック曲線がよく適合するという知見が得られた.
  • 佐古 秀一, 三隅 二不二
    1982 年 21 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 実験室的に構成された集合的緊急事態において, 被験者によって認知された脱出成功率が, 脱出行動に伴う混雑発生の程度や, 実際の脱出成功率に及ぼす効果を吟味したものである.
    被験者は, 制限時間 (24秒) 以内に, 脱出しなければ, 電気ショックが与えられるという緊急事態に置かれた. しかも, 脱出口は1つしかなく, 1度に1人ずつしか脱出口を通過できない隘路状況が設定されていた. すなわち, 1人の被験者だけが, 3秒間脱出スイッチを押すと, その被験者は脱出できるが, 2~4人の被験者が, 同時に脱出スイッチを押すと, 混雑が発生し, 脱出口を通過できなくなる, という実験事態を構成した.
    脱出成功確率の操作は, 試行前の教示によって行なった. 実験条件は, 脱出成功確率-大, 中, 小の3条件と, 脱出成功確率について操作を加えない統制条件であった.
    4名の被験者 (男子大学生) を1つの実験集団とする, 40集団を用いた.
    実験結果は, 次のとおりであった.
    (1) 脱出成功確率が大きいと教示された条件ほど, 被験者によって認知された脱出成功確率も大きくなり, かつ脱出行動に伴う混雑度が減少し, 脱出成功率が増加した.
    (2) 統制条件において被験者の認知した脱出成功確率は, 脱出成功確率-小の条件よりも大きく, 中の条件よりも小さかった. また, 統制条件における混雑度と脱出成功率の大きさは, 認知された脱出成功確率の大きさにほぼ対応し, 脱出成功確率-小の条件と, 中の条件の間であった.
  • 窪田 由紀
    1982 年 21 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は現在の職業生活への適応の度合に及ぼすキャリア目標設定の効果を検討することであった.
    回答者は390名の民間企業組織体の従業員であった.
    本研究で検討した仮説は次の通りであった.
    (1) 将来の職業生活に主体的に目標を設定している者 (目標設定群) は目標を設定していない者 (無目標群) に較べて現在の職業生活によりよい適応を示すであろう.
    (2) 目標設定群のうち, 現在の職務遂行が目標達成に結びついていると認知している者はそうでない者に較べてより適応的であろう.
    (3) 現在の職場環境条件と現在の職業生活適応度の関係は目標設定群よりも無目標群についてより強いであろう.
    得られた結果は次の通りであった.
    仮説1, 2はおおむね支持された. すなわち, 人は職業生活に目標を設定している時, そして現在の職務遂行に高い道具性を認知している時, 現在の職業生活によりよい適応を示した. 職場環境条件と職業生活適応度の関係の強さに関する結果は明確でなかった. 仮説3については更なる検討が必要とされた.
    次の段階としては, 以下の3つの要因による目標設定効果のちがいに関する条件分析的研究が必要であることが論じられた. 目標設定する課題の複雑さの程度, 目標の困難度, 目標の時間的広がりがその要因である. さらに目標設定を促す要因についての検討の必要性が述べられた.
  • 緊急事態のリーダーシップの研究
    釘原 直樹, 三隅 二不二, 佐藤 静一, 重岡 和信
    1982 年 21 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は模擬被災状況におけるリーダーシップ行動が避難行動, 即ち, 脱出成功率や混雑発生の度合, 並びに攻撃, 譲歩反応に及ぼす効果について実験的に検討したものである.
    被験者は大学生132名で, 同性からなる6名集団が22集団構成された. 6名中, 1名がリーダーとして, くじ引きにより選出された. リーダーは他の5名のメンバーに対して, 自由に発言, 指示をおこなうことが可能であった. 実験条件として 「非隔離リーダー条件」 と 「隔離リーダー条件」 とが設定された. 「非隔離リーダー条件」 はリーダーとメンバーが同室にいて, リーダーがメンバーの配置構造を直接観察できる条件である. 一方 「隔離リーダー条件」 はリーダーがメンバーとは異なる別室にいて, メンバーの配置構造等についての手がかりがほとんど得られない条件である.
    結果は, 次の通りである.
    1. 脱出成功率は 「非隔離リーダー条件」 , 「隔離リーダー条件」 そしてリーダーがいない 「対照群」 の順で低くなる結果が見出された. 一方, 混雑度については 「非隔離リーダー条件」 , 「隔離リーダー条件」 そして 「対照群」 の順で高くなる結果が見出された.
    2. リーダーが脱出者を明確に指定 (IND) し, 順序づけ (ORD), そして脱出を支持 (SUP) し促進する (FAC) ような, 具体的かつ強力な指示, 発言をおこなう場合に, 脱出効率が高くなる結果が見出された. これに対し, リーダーが独言 (MUM) を言ったり, 一方的に譲歩を強制する (CON) ような発言, 指示をおこなう場合には, 脱出効率が悪くなる結果が見出された.
  • 上野 徳美, 横川 和章
    1982 年 21 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 集団極化現象の生起するメカニズムについて, 社会的比較説の立場から検討することであった. 特に, 能力比較を基礎とした意見の比較が極化現象のメカニズムとして意味あるものか否かを検討した. 被験者は大学生女子125名で, 彼女らは, 比較の対象となる他者の能力が自分より高い条件 (H条件), 類似した条件 (M条件), 低い条件 (L条件), および統制条件に無作為に割り当てられ, 実験条件の被験者は, 比較の対象となる他者の意見 (実験前調査で得られた各事例のアドバイスの平均値) に接触した. CDQ (Choice Di-lemma Questionnaire) が材料として用いられた. なお, 能力に関して, M条件とL条件に有意な差がみられなかったので, 分析の対象はH条件, M条件, および統制条件であった.
    主な結果は次の通りであった.
    1. 明確ではなかったが, 比較対象の他者の能力が自分より高い条件よりも類似した条件において, よりriskyな方向への意見の変化, すなわち, 極化現象が生じやすかった.
    2. 被験者の初期態度の位置によって, 極化の程度が異なる傾向にあった.
    3. 他者の意見との比較自体は, 能力が類似している場合よりむしろ高い場合により生じた. すなわち, 意見の変化とは逆の傾向であった.
    4. 意見の変化が大きいほど, その意見に対する確信の度合が高くなる傾向がみられた. すなわち, 意見・判断の極化が大きいほど, 極化の強度も大であった. 以上の結果は, 集団極化現象のメカニズムとして, 能力比較を基礎とした意見の比較が起こり得ることを示唆している.
    付記 実験の実施にあたり, 快くご協力いただきました広島文化女子短期大学古矢千雪先生に, 厚く感謝致します. また, 実験を進めるにあたり, 終始ご協力いただいた森永康子さんに感謝の意を表します.
  • 大渕 憲一
    1982 年 21 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 1982/02/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    被害の大きさが等しい事態で, 欲求不満の帰因情報を操作することによって, 被害者の攻撃反応が変化するかどうかが欲求不満物語を使って検討された. 男女80名の大学生に対して2種類の状況を描いた欲求不満物語が呈示され, 5質問測度によって被害者の欲求不満行動が評定された. 測度毎に, 性別 (2) ×帰因情報 (攻撃意図, 過失, 利他的動機, 事故) ×物語状況 (2) の分散分析が行われ, 次のような結果を得た. (1) 攻撃意図が最も被害者の攻撃反応を強く誘起し, 次いで過失, 利他的動機, 事故の順となった. この順序は不合理判断次元に対応すると思われる. (2) 内面的情緒反応 (怒り) にも同様の条件差が観察され, 欲求不満の不合理性と攻撃反応の関係については, 反応抑制説よりも動因低減説が有力視された. (3) 欲求不満反応を帰属過程が媒介する仕組について, 阻止者への自由の帰属と態度推測のふたつの見解に関する証拠が提出されて議論された. いずれも肯定的に結論付けられた. (4) 男女差は利他的動機による阻止行動をどれくらい合理的とみなすかに関して生じた. 女性は個人の行動が家族に制約されることを受け入れ傾向があると推論された.
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