総合健診
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41 巻, 3 号
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原著
  • 水野 秀一, 宮原 恵子, 小島 菜実絵, 小田 和人, 松尾 嘉代子, 飯出 一秀, 吉村 良孝, 田井 健太郎, 今村 裕行
    2014 年41 巻3 号 p. 411-417
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究の目的は、大学女子スポーツ選手の踵骨骨密度を対照群と比較し、さらに踵骨骨密度と身体的特徴、最大酸素摂取量、栄養素等摂取状況との関係について検討することである。対象はテニス選手16名、バレーボール(バレー)選手30名、運動習慣を有さない対照群45名である。踵骨骨密度は定量的超音波法を用いて測定した。
     テニスとバレー選手は、対照群と比較して踵骨骨密度が有意な高値を示した。また身長と体重の影響を補正しても同様の結果が得られた。
     踵骨骨密度は、体格や最大酸素摂取量と有意な相関を示したが、栄養素等摂取量とは有意な関係を示さなかった。よって本研究においては、踵骨骨密度は運動による影響がより顕著に表れていることが示唆された。
  • 岡山 明, 奥田 奈賀子, 中村 幸志, 三浦 克之, 安村 誠司, 坂田 清美, 日高 秀樹, 岡村 智教, 西村 邦宏
    2014 年41 巻3 号 p. 418-427
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】特定健診結果を用いて特定保健指導の指導効果を明らかにするには、指導を行った群と比較可能な対照の設定が重要である。通常は特定保健指導に参加しなかった者を対照とするが生活習慣や意欲が異なっている可能性がある。そこで本研究では傾向性スコアを用いた対照群設定の意義を検討する。また傾向性スコアに基づいた対照を簡単な手順で設定できる方法を開発する。
    【方法】保険者の協力を得て収集した特定健診・特定保健指導結果データセットから平成20年度に積極的支援に階層化された対象者のうち翌年の特定健診結果がありかつ22の標準問診票について全て回答した者を抽出して分析対象とした(33,009名)。特定保健指導結果があり1回以上の支援記録がある者を支援あり(1,114名)とし、それ以外を支援なし(31,895名)と分類した。支援あり群と支援なし群で平成20年度の健診成績および翌年の検査成績との差を比較した。対照は全ての支援なし群を用いる方法、ロジスティック回帰分析による傾向性スコアで選定する方法、線形回帰分析により選定する方法の3つを用いた。
    【結果】支援なし群全体を対照群として比較すると、支援あり群は問診結果において、喫煙率、朝食を取らない習慣が有意に低く(すべてP<0.001)、保健指導への意欲は有意に高かった(P<0.001)。翌年の検査成績では両群ともに腹囲・体重減少が観察されたが、支援あり群の方が有意に大きかった(P<0.001)。支援により翌年の最大、最小血圧、脂質、肝機能検査に有意な改善が見られた。傾向性スコアに基づき設定した対照群を用いると平成20年度の成績の差は少なくなった。翌年との差は腹囲、体重、最大血圧、およびHDLコレステロールで支援あり群で有意に改善したが支援なし群全体を対照とした場合より小さかった。
    【結論】特定保健指導の効果分析で非参加者全体を対照と設定するのは不適切であり、本論文で示した方法など特性の類似した対照を選択する必要があると考えられた。
  • 坂巻 浩二, 霞 利夫, 長嶋 起久雄, 阿久澤 まさ子, 中嶋 克行, 下村 洋之助, 田中 一平, 絹川 秀樹, 吉村 徹, 永野 伸郎 ...
    2014 年41 巻3 号 p. 428-433
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     人間ドック受診者において、新規開発された高感度測定系にて測定した血中心筋トロポニンI濃度の分布特性ならびに通常の健診項目との関連性を検討した。また、現病歴、既往歴および検査値に基づき非健常者基準を設け、健常者群および非健常者群間の血中心筋トロポニンI濃度を比較した。
     全対象者283例のうち、血中心筋トロポニンI濃度がバックグラウンド以下の濃度(ゼロ濃度)の例数は、従来法で279例であったのに対し、高感度測定系では9例であった。高感度測定系にて測定し得た血中心筋トロポニンI濃度は、女性に対して男性で、また年齢の増加とともに有意な高値を示した。重回帰分析の結果、年齢および性別が血中心筋トロポニンI濃度と独立した関連因子であった。
     健常者として分類された者は283例中166例(男性94例、女性72例)であった。一方、非健常者と分類された約7割が高血圧基準あるいは脂質異常症基準に該当し、非健常者における血中心筋トロポニンI濃度は、健常者に対して有意な高値を示した。また、非健常者基準のうち、高血圧、腎機能低下、脂質異常に該当する対象者の血中心筋トロポニンI濃度は、非該当者に比較して有意な高値を示した。
     以上より、高感度測定系を用いることにより、人間ドック受診者の低濃度の血中心筋トロポニンI濃度が測定可能となり、心筋障害の微細な変化を検出できる可能性が示された。今後は、性別および年齢を考慮した心筋マーカーとしての基準値の設定が課題である。
調査報告
  • 石川 雅彦, 斉藤 奈緒美
    2014 年41 巻3 号 p. 434-438
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】健診・人間ドック(以下、健診等)では、MRIによりさまざまな検査が実施されており、MRI検査におけるインシデント・アクシデント発生防止は、健診等における安全管理と質の向上に極めて重要である。今回、MRI検査に関連して発生したインシデント・アクシデント事例の発生要因と再発防止について検討した。
     【方法】日本医療機能評価機構のウェブサイト掲載の公開データ検索を用いて抽出された、MRI検査に関連して医療機関で発生した事例76例を対象として、発生要因と再発防止について検討した。
     【結果】事例発生内容は、MRI検査前では、転倒・転落、磁性体持ち込み、アナフィラキシーショック、検査中では、熱傷、転落、心停止、磁性体持ち込み、検査後では撮影部位・方法・タイミングの誤り、熱傷、検査未実施・重複実施、検査結果読影忘れ、心停止、輸液ポンプ未装着による状態変化、等が挙げられており、様々な改善策が策定されていた。
     【考察】MRI検査には複数の職種・職員が関与し、様々なエラー発生が懸念され、単一の職種や個人の努力のみでは再発防止が容易ではない。特に健診等におけるMRI検査に関わる職員間、患者(家族)との情報伝達、情報共有によるエラー防止は事故発生防止に極めて重要で、発生の根本原因を明らかにし、対策立案と実施を行うというMRI検査の業務プロセスのシステム整備が必要である。
大会講演
日本総合健診医学会 第42回大会
  • 日野原 重明
    2014 年41 巻3 号 p. 439-443
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • ―胃がん検診再考と国民総除菌、胃がん撲滅へ―
    鈴木 秀和
    2014 年41 巻3 号 p. 444-450
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     オーストラリアのWarrenとMarshallによるH. pylori(ピロリ菌)の発見で、胃・十二指腸疾患の自然史上、極めて大きなブレークスルーが起こった。今や、ピロリ菌除菌で慢性胃炎や消化性潰瘍を治療するだけでなく、胃がんの予防にまで言及されるようになった。過去40年以上にわたり、我が国では国民病ともいわれる「胃がん」に対する検診が行われてきたが、この「胃がん検診」についてもピロリ菌を制御するという局面からの新規アプローチの必要に迫られている。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌療法が、2013年2月から健康保険の適用となり、まさに国民総除菌時代を迎え、年間100万人規模の除菌療法が開始されており、数十年後に、胃がんを撲滅するために、よりきめ細かい診療がもとめられている。本稿では、ピロリ菌感染症の病態、胃がん検診、除菌療法について最新の知見をまとめたい。
  • 小川 聡
    2014 年41 巻3 号 p. 451-456
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     検診で不整脈が検出された場合に考慮すべきは、1)その不整脈が受診者にとって治療すべきものか放置して良いものか、2)将来的にその不整脈が原因で致死的転帰を取る可能性があるか否か、である。自覚症状の有無、不整脈自体の種類も判断材料になる。心室期外収縮に焦点を絞り、より重症な致死的不整脈発症のリスクをどう評価するかを論ずる。致死的転帰の可能性を判断する上で最も重要な要素は器質的心疾患の有無である。ST-T変化を伴う左室肥大、虚血性ST-T変化、陳旧性心筋梗塞所見などを12誘導心電図から判断し、さらに心エコー、負荷心電図、冠動脈CT等を勧める必要がある。以前は、Lown分類で心室期外収縮を重症度分類し、治療適応を推奨する考え方もあったが、CCU、あるいは重症心疾患例以外では役立たない。器質的心疾患が否定されれば、突然死リスクは低いと判断できる。一方、不整脈は検出されなくても12誘導心電図のみから診断できる突然死リスクの病態がある。V1~V3誘導でQRS波に遅れて記録されるε波は、催不整脈性右室心筋症(ARVC)に特異的である。QT延長症候群やBrugada症候群の他、器質的心疾患なしに心室細動を合併する「特発性心室細動」の範疇に早期再分極症候群、QT短縮症候群の概念が提唱されている。QT延長症候群は多形性心室頻拍により、失神、けいれん、突然死を生じる遺伝性疾患である。Brugada症候群は、V1~V3誘導での特徴的なST上昇と心室細動による突然死を主兆とする症候群で、ST波形から、coved型とsaddle back型に分類される。近年心電図自動診断で、この基準に準じて「Brugada症候群の疑い」と記載されるが、失神の既往歴、突然死の家族歴を問診の上、精査の要否を決める。検診での心電図上の僅かな異常に気付くかどうかで、その後の心血管事故を未然に防ぐことが可能である。
  • ~骨粗鬆症診療の現状を踏まえて~
    太田 博明
    2014 年41 巻3 号 p. 457-464
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     わが国は世界一の超高齢社会を構成しており、65歳以上の高齢者が年々増えている。このことは必然的に運動器疾患の1つである骨粗鬆症患者の増加をもたらし、脆弱性骨折は増加の一途を辿っている。骨粗鬆症の治療目的は骨折予防にあり、骨折リスクの高い患者は積極的に医療機関を受診してもらう必要がある。スターターとして、この受診勧奨の役割を果たしているのが人間ドックであり、骨検診である。
     しかし、わが国の人間ドックや検診施設の70%が超音波(QUS)を用いている。このQUSは簡便でX線被爆もなく安全であるが、使用する機種によりパラメーターが異なり、データに普遍性がない。このためQUSは確定診断に用いることができず、スクリーニングとして共通の指標で基準値を示すことができないので、スクリーニングへの使用も疑問視されている。
     そこでわが国で開発され、30年の歴史あるMD法を使用することを提案したい。このMD法はスクリーニングはもとより、直近の診断基準でも診断が可能な測定法であると認知されている。本法は短時間に多数例を測定でき、X線撮影装置さえあれば、特別な装置は必要としない。最近の改良型では従来の半分の線量になるなど、非侵襲性と即時報告が可能などの簡便性がある。さらにこの骨検診に運動機能を評価し得る「ロコチェック」を併用していただきたい。
     一方最近、ビタミンDの指標である25(OH)Dの欠乏や不足が問題となっており、低骨密度や転倒リスク、さらには高い骨折リスク要因となっている。現時点では保険適応はないが、低骨密度で骨折リスクの高い患者群の検出に適したマーカーであるので、骨検診に加えることを推奨したい。
     骨検診の意義は潜在患者を見つけ出し、治療へ導くことにあるので、加療に結びつく適切な検診というスタートがあってのゴールである。骨粗鬆症診療の現状を踏まえ、今後の骨検診のあり方を提案させていただいた。
  • 道場 信孝, 徳田 安春, 久代 登志男, 日野原 重明
    2014 年41 巻3 号 p. 465-471
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     医学の進歩がもたらした寿命の延長には老年症候群に対する喫緊の対応が求められている。中でもfrailtyとcognitive impairmentは多くの面で共通した課題を含む重要な分野であり、その相互関連、予測、そして予防的対応の方策などが問題解決への中心的役割を担っている。老年症候群には認知症、せん妄、転倒、失禁、褥瘡、全体的な機能低下などの諸徴候が含まれ、脆弱化はこれらの徴候や諸疾患の結果としてIADL、ADLが障害されるために自立した生活が行えない状態として定義される。脆弱化と認知機能障害との関わりについての研究は少なく高いレベルのエビデンスには欠けるが、frailtyに見られるdementiaとdementiaに見られるfrailtyの頻度にはほぼ同様の傾向が認められ、baselineをfrailtyにした場合、多くの研究ではfrailtyのレベルが高いほど認知機能の低下やdementia発症の傾向が示されており、baselineをcognitionにした場合、認知機能障害がfrailtyの発現に関与する可能性が示唆されている。これら二つのphenotypeはそれぞれに独立した臨床の実在であり、両者の背景のメカニズムを探ることによってこれらの進行を阻止し、ひいてはそれらへの予防的介入の道が開かれる可能性がある。健常高齢者のfrailtyの予測に関する5年間のprospective cohort studyによれば、多変量解析の結果、予測因子として(1)歩行速度、(2)脈圧、(2)記憶の減退、(3)主観的聴覚障害が抽出され、これらは全て認知機能障害の危険因子でもあることから、相互の関連が強く示唆され、また予防的対応の可能性も強く支持される。今後の課題としてはこれらの危険因子を総合健診のなかでどのように評価し、予防への戦略にどのようにつなげるかの具体的な対応についての検討が必要である。
  • 佐々木 淳
    2014 年41 巻3 号 p. 472-475
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」は、脂質異常症の管理が中心になっていると同時に脂質異常症以外の危険因子を包括的に管理することを推奨している。LDLコレステロール(LDL-C)値の厳格な管理が必要となる高リスク病態として、二次予防、糖尿病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎疾患を取り上げている。それ以外の一次予防には、NIPPON DATA80リスク評価チャートを用いた個人の絶対リスク(10年間の冠動脈疾患死亡率)に基づくLDL-C管理を推奨している。しかし、LDL-C目標値の設定にはエビデンスは無く、管理目標値は絶対値ではなく目安である。RCTやメタ解析の結果、スタチンによる30%の冠動脈疾患予防効果が確かめられていることからLDL-C低下率20~30%を目標とすることは重要である。わが国の冠動脈疾患発症率・死亡率は欧米に比べ低いにも関わらず、高LDL-C血症の診断基準値・管理基準値は厳しい基準となっている。その理由は、欧米に比べ低い絶対リスクを維持することを目標にしているからである。治療の基本は生活習慣の改善であり、抗動脈硬化作用が認められている伝統的な日本食「The Japan Diet」を推奨している。薬物治療は無作為化比較試験(RCT)で効果と安全性が確認されたスタチンが推奨される。リスクの重みづけや目標値はあくまでも目安であり、個々の患者の治療目標や手段の最終判断は主治医が行うべきである。
  • 竹中 恒夫
    2014 年41 巻3 号 p. 476-484
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     高血圧は非常に多く認められる疾患で、健診での指摘、介入から大きく予後改善が期待される疾患の一つである。日本高血圧学会は2014年に高血圧治療ガイドラインの改定を行った。高血圧診断の基準となる血圧値には手を加えていないが、家庭血圧の重要性が強調されている。実際に診察室血圧が正常でも家庭血圧を測定いただくことを推奨している。また、診察室血圧と家庭血圧に乖離がある場合は家庭血圧を優先させることが明記されている。特定健診結果の取り扱いについても改定案が出されている。血圧160/100mmHg以上はすべて受診勧奨、159-140/99-90mmHgでは糖尿病やCKDもしくは危険因子がある方は受診勧奨とし、他は健康増進事業などについての情報提供としている。血圧139-130/85-89mmHgでは糖尿病やCKD合併者のみ受診勧奨、腹囲やBMIから肥満と考えられる方は保健指導として、いずれでもない方には情報提供のみで可としている。CKD診療ガイドラインは2013年に改定された。改定ガイドラインでは糖尿病性腎症を別扱いとしている。糖尿病性腎症では微量アルブミン尿を重視しているが、非糖尿病性腎症ではアルブミン尿でなく従来通り蛋白尿を使用して重症度分類を行っている。また、eGFRによる病期分類にも変化を加えてeGFR 60-45mL/minをG3aとし、eGFR 45-30mL/minをG3bとCKD3期を細分化している。特定健診結果の取り扱いについては、特定健診結果から、CKD該当と考えられた方のうち脂質代謝異常症、糖尿病、高血圧を治療中の患者は治療継続、3疾患の合併はないものの尿蛋白が1+以上の方は受診勧奨、尿蛋白±もしくは-の方のうちeGFR 50mL/min以下の方は受診勧奨、eGFR 50-60mL/minでは3疾患いずれかの合併が疑われる方は受診勧奨、その他は保健指導としている。他方、特定健診は生活習慣病予防の健診であることから、CKD非該当の方もCKDになりやすい方として保健指導を勧めている。
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