抄録
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」は、脂質異常症の管理が中心になっていると同時に脂質異常症以外の危険因子を包括的に管理することを推奨している。LDLコレステロール(LDL-C)値の厳格な管理が必要となる高リスク病態として、二次予防、糖尿病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎疾患を取り上げている。それ以外の一次予防には、NIPPON DATA80リスク評価チャートを用いた個人の絶対リスク(10年間の冠動脈疾患死亡率)に基づくLDL-C管理を推奨している。しかし、LDL-C目標値の設定にはエビデンスは無く、管理目標値は絶対値ではなく目安である。RCTやメタ解析の結果、スタチンによる30%の冠動脈疾患予防効果が確かめられていることからLDL-C低下率20~30%を目標とすることは重要である。わが国の冠動脈疾患発症率・死亡率は欧米に比べ低いにも関わらず、高LDL-C血症の診断基準値・管理基準値は厳しい基準となっている。その理由は、欧米に比べ低い絶対リスクを維持することを目標にしているからである。治療の基本は生活習慣の改善であり、抗動脈硬化作用が認められている伝統的な日本食「The Japan Diet」を推奨している。薬物治療は無作為化比較試験(RCT)で効果と安全性が確認されたスタチンが推奨される。リスクの重みづけや目標値はあくまでも目安であり、個々の患者の治療目標や手段の最終判断は主治医が行うべきである。