メタボリックシンドローム(MS)に関する保健指導を支援する新しいソフトウエア・ツールが開発された。本ツール適用の有用性について、著者らは人間ドック・総合健診受診者を対象とする保健指導の場で検証を行なった。
本法は、多変量解析の自己組織化マップ(SOM)を原理とし、メタボリックシンドロームの診断に必要な肥満、糖尿病、脂質異常、高血圧の4つの要素の3次元空間における個人データの座標位置を2次元の平面マップ上に写像し、モニター画面で視覚的に把握できる解析法を有している。本法の「要素マップ」では、上記4要素に対する関係位置が経過的にプロットされ、「スコアマップ」ではメタボリックシンドローム関連状態の程度を0から100までの範囲に点数化されたスコア値の動向が表示される。また本法では、4要素を総合したメタボ関連の個人軌跡の動向から過去のデータを累和し、次回に採り得るスコア値を「予測マップ」上に表示することができる。パソコンのモニター画面に表示されるこれらのマップ機能を保健指導担当者と受診者の双方が共有することによって、個人のQOL(Quality of Life:生活の質)に合わせた無理のない習慣変容の努力目標値を立て、その達成成果を画面上で確認しながら保健指導を実施する利便性が期待される。
本法において、メタボリックシンドローム診断既知サンプルとして抽出された健診受診者38例の各々過去10年間の個人内データ変動をトレースした結果、未病としてのメタボリックシンドローム関連の的確な把握には個人ごとの生理的変動を考慮して行なうことの重要性が示唆された。
本法メタボリックシンドローム関連のスコア判別基準値は、上記MS既知サンプルのスコア値の分布状態から、0~19を正常域、20以上をメタボリックシンドローム該当と設定し、さらに異常度合を数量的に表示した。
本法による特定保健指導実施後の男性57人の支援効果判定の比率は、改善64.9%、不変15.8%、悪化19.3%の成績が示され、当センターの保健指導チームによる従来評価法と比べて改善率で14ポイント低く、悪化率では14ポイント高くなる成績を示した。一方、特定保健指導後の評価検証に関する全国調査成績との比較において、本法の成績は全国平均値と近似することが確認された。
本研究により、人間ドックならびに総合健診・保健支援の実務の場において、メタボリックシンドローム関連の保健指導を効果的に補完・支援する客観的なツールとして、本法は意義あるものと考えられる。
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