東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生から11年が過ぎ、国内においては震災の記憶の風化が懸念され、伝承の重要性が指摘されている。
一方、学校教育では、自然災害に関連した防災教育は、理科や社会科などの教科で教科横断的に学習することになっている。東日本大震災の記憶も、各教科の学習内容と関連付けて、伝承していくことが期待される。
しかしながら、その取組には、地域によって差が生じる。被災地以外でも震災を自分事として捉え、震災の記憶を風化させないためには、カリキュラム・マネジメントを踏まえ、効果的に災害伝承を行う機会を学校教育の中に位置づける必要がある。
また、理科や社会など、各教科での自然災害に関りのある学習を防災と結び付けて捉えていくためにも、防災に対する意識は早い段階で高めるべきである。
これらの背景から本研究では、被災地以外の小学校第3学年の児童を対象に「防災教育と災害伝承の日」として提唱された3月11日に、震災遺構荒浜小学校の模擬見学会を実施し、その教育的効果を検討することを研究の目的とした。研究の成果として、安全教育の目標の内、「主体的に学習に取り組む態度」を育成できる可能性が示唆された。さらに、地震や津波の経験もなく、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から距離的にも時間的にも離れた地域の小学校第3学年段階においても、震災遺構荒浜小学校の模擬見学を行う活動は、自分事のように津波とその対応を考える視点を持たせることが可能であることが示された。
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