安全教育学研究
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22 巻, 2 号
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  • 菊池 哲佳
    2023 年 22 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    近年の地域社会の多文化化の進展と、災害の頻発化・激甚化によって、多文化社会の地域防災においてパラダイムシフトが求められている。従来の「災害時にいかに外国人を救うか」から、「地域社会で外国人と共助の関係を築くか」が新たな課題となっている。そこで本研究では、外国人を交えた共助のネットワーク形成プロセスを明らかにすることを目的とし、地域社会のキーパーソンを対象にインタビューを行った。修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって分析を行った結果、狭義の防災活動に限らず、外国人住民が参加する地域日本語教室や国際交流活動等において防災の視点を取り入れることが有効であることが明らかとなった。また、「居場所」の視点は、主体的な防災活動を考える上で、外国人の防災教育に留まらず、日本人の防災教育においても生かしうると考えられる。
  • ― 災害伝承を踏まえた小学校第3学年における模擬見学を事例として ―
    佐藤 真太郎
    2023 年 22 巻 2 号 p. 13-21
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生から11年が過ぎ、国内においては震災の記憶の風化が懸念され、伝承の重要性が指摘されている。 一方、学校教育では、自然災害に関連した防災教育は、理科や社会科などの教科で教科横断的に学習することになっている。東日本大震災の記憶も、各教科の学習内容と関連付けて、伝承していくことが期待される。 しかしながら、その取組には、地域によって差が生じる。被災地以外でも震災を自分事として捉え、震災の記憶を風化させないためには、カリキュラム・マネジメントを踏まえ、効果的に災害伝承を行う機会を学校教育の中に位置づける必要がある。 また、理科や社会など、各教科での自然災害に関りのある学習を防災と結び付けて捉えていくためにも、防災に対する意識は早い段階で高めるべきである。 これらの背景から本研究では、被災地以外の小学校第3学年の児童を対象に「防災教育と災害伝承の日」として提唱された3月11日に、震災遺構荒浜小学校の模擬見学会を実施し、その教育的効果を検討することを研究の目的とした。研究の成果として、安全教育の目標の内、「主体的に学習に取り組む態度」を育成できる可能性が示唆された。さらに、地震や津波の経験もなく、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から距離的にも時間的にも離れた地域の小学校第3学年段階においても、震災遺構荒浜小学校の模擬見学を行う活動は、自分事のように津波とその対応を考える視点を持たせることが可能であることが示された。
  • ― 大学独自の資格認定制度創設へ向けた実践 ―
    小田 隆史, 梨本 雄太郎, 林田 由那, 村山 良之, 蘆立 泰典
    2023 年 22 巻 2 号 p. 23-35
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    本稿は、大学における防災教育の充実を図るために宮城教育大学において一部導入を開始した学校防災に関する資格認定制度と今後の展開について、その経緯や背景、課題を明らかにする。災害安全を含めた学校安全や教員養成に関する政策的動向を概観し、宮城教育大学の教職課程において、主に学部学生向けに防災教育の授業や課外活動の展開を跡付ける。その上で、大学が独自にそれを段階別に認定する制度の内容や、今後設置が見込まれる級別の資格制度の試案や、運用上の課題に触れて、今後を展望する。
  • ― 石巻市立大谷地小学校における事例 ―
    佐藤 健, 橋本 雅和, 桜井 愛子, 北浦 早苗, 藤坂 雄一, 村山 良之, 熊谷 誠, 小田 隆史, 李 泰榮, 池田 真幸
    2023 年 22 巻 2 号 p. 37-48
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    石巻市立大谷地小学校における実践事例を通して、北上川の氾濫による洪水という地域の災害リスクを踏まえた防災管理と防災教育を一体的に取り組む実践モデルが提示された。 防災教育の実践により、洪水想定の緊急避難場所に対する児童の思考過程の変化、および児童と同じ問いに対する家族の考えを捉えることができた。より実効性の高い学校防災マニュアルへの改善に向けて、学校と家庭や地域等との情報共有や合意形成の重要性が示唆された。 防災管理、防災教育のいずれにおいても、緊急避難を開始する際のタイミングとそのための判断材料が極めて重要であることが示唆された。
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