安全教育学研究
Online ISSN : 2186-5442
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19 巻, 1-2 号
合併号
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  • 藤澤 健幸, 渡邉 正樹
    2020 年 19 巻 1-2 号 p. 3-18
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2025/07/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は中学校の柔道授業における武道必修化後の負傷事故に数量的分析を加え、事故発生時の状況について、計量テキスト分析によって、その事故要因を明らかにすることであった。 研究方法は負傷事故発生件数を学年別、性別に分け、カイ二乗検定、残差分析を行った。また、事故発生時の状況に対し、KH Coderを用いて、計量テキスト分析を実施した。なお、データ資料については、(独)日本スポーツ振興センターより情報提供を受けた。 主な分析結果を以下に示す。 まず、武道必修化後の負傷事故件数(割合)は、学年別では1年生で有意に高く、3年生で有意に低くなっていた(p<.01)。また、性別では女子で有意に多く、男子で有意に少なくなっていた(p<.001)。 次に、KH Coderによる、コード分析では事故発生場面コードにおいて、受け身練習、固め技練習、投げ技練習の出現と学年・性別に有意な関連がみられた(p<.01)。さらに、残差分析の結果、1年生・男子は固め技練習、3年生・男子は投げ技練習、全学年・女子は受け身練習において有意に高かった(p<.05)。一方、1年生・男子は投げ技練習、2年生・男子は受け身練習、3年生・男子は受け身練習と固め技練習、1年生・女子は投げ技練習、2年生・女子は固め技練習において有意に低かった(p<.05)。また、施設コード(武道館、体育館)では、有意な関連がみられなかった。ただ、武道館よりも体育館で負傷事故は多く発生していた。 以上の分析結果より、男子は各学年の継続性が生まれ、学習内容が段階的・系統系に実施され、また、受け身の習熟がともなっていることが要因と思われた。一方、女子は柔道授業への参加人数の増加を背景として、学習時数の少なさや教員の指導力に不安がある中で、生徒の受け身の習得に課題があるにもかかわらず、受け身中心の授業が展開されていることが要因として考えられた。また、体育館では畳と畳の隙間や段差が生じる可能性や衝撃力の緩和に課題があることが推察された。
  • 新原 俊樹
    2020 年 19 巻 1-2 号 p. 19-28
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2025/07/22
    ジャーナル フリー
    津波避難の幅広い普及啓発のため、教育現場における防災の担い手である教員が利用できる津波避難のための教材として「津波防災ワークショップ」を開発した。開発に当たり、東日本大震災の教訓を踏まえて、津波避難の普及啓発において重視すべき主題を整理し、ワークショップの体験を通じてそれらの主題の理解が進むよう構成を検討した。小学5年生から高校1年生までの児童・生徒を対象とした15事例についてワークショップを実践した。一部の事例では教員自らがファシリテーターを担当した。ワークショップを体験した児童・生徒を対象に質問紙調査を実施し、その学習効果を評価したところ、本教材により児童・生徒の発達段階に応じた学習効果が期待できること、すなわち、小学校の児童においては事前に持っていた知識の再確認を通じて「高所への避難」(=自助)を再認識することができ、中学校の生徒においては自分自身や家族、周囲の住民全員が「高所への避難」を実現するために必要な行動として、津波避難の主題である「避難の事前確認」や「率先避難/呼びかけ」(=共助)の重要性を理解できることが分かった。また、このワークショップを教育現場のどの場面で活用できるか検討するため、小学校及び中学校の教員を対象に質問紙調査を行ったところ、「総合的な学習の時間」、「学級活動」、「避難訓練の前後」を挙げる回答が多かった。引き続き学校現場でワークショップによる普及啓発を進めていくに当たり、これらの活用場面を意識した教材に仕上げていくことにより、教育現場においても受け入れやすい教材になると考えられる。
  • 大木 聖子, 齋藤 文
    2020 年 19 巻 1-2 号 p. 29-45
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2025/07/22
    ジャーナル フリー
    東日本大震災を受けて、防災教育の重要性はこれまで以上に強調されるようになった。筆者らは、的確な思考・判断に基づく適切な意思決定や行動選択を学習するための教材として「4コマ漫画教材」を開発した。中学校等での実践や「クロスロード」との比較から帰納的に、「4コマ漫画教材」の成立条件:1)複数人での合議をする状況を扱うこと、2)説明や説得という形式で結論が表現されるもの、を導いた。この2点から演繹的に、避難所運営時のジレンマを疑似体験する「4コマ漫画教材」を作成し、避難所に関する情報や周辺知識を補うための実例集「事例カード」とともに公開した。
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