安全教育学研究
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中学校の柔道授業における武道必修化後の負傷事故分析
藤澤 健幸渡邉 正樹
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キーワード: 中学校, 柔道授業, 負傷事故
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2020 年 19 巻 1-2 号 p. 3-18

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抄録
本研究の目的は中学校の柔道授業における武道必修化後の負傷事故に数量的分析を加え、事故発生時の状況について、計量テキスト分析によって、その事故要因を明らかにすることであった。 研究方法は負傷事故発生件数を学年別、性別に分け、カイ二乗検定、残差分析を行った。また、事故発生時の状況に対し、KH Coderを用いて、計量テキスト分析を実施した。なお、データ資料については、(独)日本スポーツ振興センターより情報提供を受けた。 主な分析結果を以下に示す。 まず、武道必修化後の負傷事故件数(割合)は、学年別では1年生で有意に高く、3年生で有意に低くなっていた(p<.01)。また、性別では女子で有意に多く、男子で有意に少なくなっていた(p<.001)。 次に、KH Coderによる、コード分析では事故発生場面コードにおいて、受け身練習、固め技練習、投げ技練習の出現と学年・性別に有意な関連がみられた(p<.01)。さらに、残差分析の結果、1年生・男子は固め技練習、3年生・男子は投げ技練習、全学年・女子は受け身練習において有意に高かった(p<.05)。一方、1年生・男子は投げ技練習、2年生・男子は受け身練習、3年生・男子は受け身練習と固め技練習、1年生・女子は投げ技練習、2年生・女子は固め技練習において有意に低かった(p<.05)。また、施設コード(武道館、体育館)では、有意な関連がみられなかった。ただ、武道館よりも体育館で負傷事故は多く発生していた。 以上の分析結果より、男子は各学年の継続性が生まれ、学習内容が段階的・系統系に実施され、また、受け身の習熟がともなっていることが要因と思われた。一方、女子は柔道授業への参加人数の増加を背景として、学習時数の少なさや教員の指導力に不安がある中で、生徒の受け身の習得に課題があるにもかかわらず、受け身中心の授業が展開されていることが要因として考えられた。また、体育館では畳と畳の隙間や段差が生じる可能性や衝撃力の緩和に課題があることが推察された。
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